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最近、河合隼雄先生の本を立て続けに読んでいます。 もう、おもしろくて、おもしろくて! 食事中も入浴中も就寝前と、一日中手放せないくらいです。

河合隼雄先生は、ユング心理学をはじめて日本に伝えた方で、様々な問題を抱えて悩んでいる方のカウンセリングを長年続けて来られた、臨床心理学の専門家でいらっしゃいます。また、箱庭療法というセラピーを日本に伝え、実践したことでも有名です。そのかたわらで、昔話や神話、物語の研究を重ね、そこから日本人の心性と、心の病について深い考察を重ねてこられました。

とある本の中で、とても心に残った言葉があります。一部、引用しますね。 

「納得がいく」という表現があるが、このことは人間の人生にとって極めて大切なことだ。心理療法家である私のもとに訪れる人は、「納得がいかない」経験をもてあましている人が多いと言ってもいいのかも知れない。なぜ自分だけが不幸になるのか、なぜ自分の母親は早く死んだのか、なぜ医学的にも何も問題はないと言われるのに、これほど頭痛がするのか。それぞれの事実も大変だが、「納得がいかない」ために、よけいに苦痛が増大するのだ。【物語を生きる 今は昔、昔は今】河合隼雄著 岩波現代文庫より


この本を読んで、わたしは、インナーチャイルドが傷ついているひとも、「納得できないこと」を経験をされたひとが多いのではないかと感じました。 

なぜ、お母さんはわたしよりも、妹を大事にするんだろう。なぜ、わたしを殴ったり蹴ったりするんだろう。なぜ、お父さんはわたしを無視するんだろう。私の何がいけなくて、お母さんとお父さんは毎日けんかするんだろう。どうしてわたしは、愛されなかったんだろう。 こんな苦しい思いをしなければならない訳は、なんなのか。この苦しみにはどんな意味や理由やがあるのか…。 

それを納得できないからこそ、心に傷を負い、インナーチャイルドが傷ついてしまうのではないでしょうか。

インナーチャイルドの傷は、主に、親子関係でできます。子供は純粋で、無邪気な存在です。ですから、大人の言動や考えを納得できずに戸惑うことのは、ごくごく、当たり前のことですよね。


河合隼雄先生は、「納得できない」ものを「納得する」ためには、物語の力が必要なのだと語ります。 

人間にはひとりひとりに個性があり、全く同じ人間は存在しません。心の傷もそうで、ひとりずつ全く違い、個性があります。 ですから、その傷を癒す物語も、ごく個人的なものになります。

他のひとから見れば支離滅裂で意味不明な物語でも、本人にとって筋が通っていて、納得できる物語であれば、そのひとの心の傷を癒す助けとなるのです。


インナーチャイルドセラピーは、自分の物語をつむぐことで、自分の人生を理解し、納得するという点で、河合隼雄先生のお考えにぴったりだと感じます。

例えば、私はわたしには「わたしのことなんか誰も好きにならない」という強い思い込みがありました。深い絶望と寂しさを心の底にいつも抱えていました。 昔は、どうしてそんなことを思ってしまうのか、理由がちっとも分からなかったのです。ただ、どこから生まれたのかも分からない思い込みで自分を縛って、苦しい、辛い、寂しいと嘆いていました。 

インナーチャイルドセラピーと出会ったことで、この思い込みは、子供時代の悲しい経験が原因で作られた心の傷が元になっているのだと分かりました。苦しみの原因が分かったことで、私の人生を筋の通った物語として理解することができたのです。

インナーチャイルドセラピーをとおして、私の物語をつむぐことで、わたしの心は少しずつ癒されていったのです。

心の傷が癒えていくと、親の事情を察することができるようになるのです。 お母さん、ひとりで子供3人の面倒を見るの、本当に大変だったよね。お父さん、仕事でいつも家にいなかったけれど、できる限り子供たちを楽しませようとしてくれていたんだよね。 

親の背景に想像が及ぶようになると、物語にも広がりが生まれ、ますます癒しの力が大きくなっていくように感じます。

インナーチャイルドセラピーは、子供時代の苦しい思い出に光を当て、自分の物語をつむいでいくこと。

物語の癒しの力は、想像以上のパワーを持っているのだと思います。


河合隼雄先生の本、とっても読みやすくおもしろいので、興味を持たれた方はぜひ手に取ってみてくださいね。 

物語とたましい 

物語を生きる 今は昔、昔は今

生きるとは自分の物語をつむぐこと 作家・小川洋子さんとの対談

村上春樹、河合隼雄に会いにいく 作家・村上春樹さんとの対談


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