ヨーロッパ旅行記(中編)
更新がかなり遅れてしまった。無事に帰国できた安堵感からか執筆意欲が削がれてしまったようだ。「死」に対する危機感というのはどうやら意欲を掻き立てる側面があるみたいだ。という話は置いといて、ヨーロッパ旅行記の続きを記す。
前回までのあらすじ
初海外となる旅でスペインを訪れたが、﨑原はその凄さに圧倒された。安い上にそこはかとなく陳腐な食材なのに悪魔的魅力を放つ料理たち。そして旅は折り返し地点、美食の街San Sebastianへ。
前回はこちらから。
4日目(2月10日)
スペイン最古の威厳をたっぷり見せてくれたSalamancaを発ち、一路San Sebastianへ向かう。
San Sebastianはスペイン北部、西仏国境付近のバスクと呼ばれる地域に位置していて、この地域は元来スペインに属しておらず独自のシンボルや旗が存在する。詳しくは各々で調べてほしいが、たびたびスペイン政府との争いが起こっている地域で、同じスペイン領域内にあるとはいえMadridとはまた違った雰囲気が味わえそうである。
何時間かは忘れてしまったが、鉄道で長い時間をかけて山を抜けようやく到着。駅を出てすぐのところに河口があり目の前には海が広がっている。駅からホテルまでの道中、店先の看板などを見ているとたしかにスペリングが異質だった。「知ったような口を聞くな」と思われるかもしれないが、さすがに4日目ともなるとスペイン語未修者の﨑原でもなんとなく雰囲気ぐらいはわかる。それを見て「言語はやはり民族のアイデンティティたりえるものなんだな〜」と改めて実感でき、海外に来たことを嬉しく感じたものであった。
ホテルに荷物を置いていざ観光。まずはたまたま発見したbar(バル)にて軽くお食事。海沿いということで魚を使った料理も多いようだった。
写真で挙げた料理では見えにくいが、右側の方には炙った魚(サーモンかな?忘れた)やいくら、海苔が使われている。ヨーロッパに来てからはハムしか見てこなかったので不思議な感覚があった。腹ごしらえも済んだところでビーチへ向かった。しかし個人的には広いことと大量に落ちている犬のうんこ以外に目ぼしいものはなく、それよりも海岸に面した小高い丘の頂上にそびえる巨大な塔のようなものに興味が湧いた(写真を撮り忘れてしまったのが残念)。その正体はやがて明らかになるので今は深くは触れないことにするが、とにかくその「塔」に何かミステリアスな感じを受けたのであった。
再びホテルに戻って休養を済ませたあと、ついに待望のディナータイム。世界でも有数のグルメ街として有名なこのSan Sebastianではどんな料理が待ち受けているのだろうか。もうランチの時点で力の片鱗は見せられているからますます楽しみである。この街は建物に挟まれた石造りの狭い路地が多くそれらの路地に様々な店がひしめいていて、観光客も多いようでどの店も客で賑わっている。日本人も比較的多いようだった。ランチタイムよりもディナータイムが本番のようで現地の人から観光客まで、みんなお酒を片手に楽しそうだ。
¥400程度で食べられた絶品のフォアグラ(1枚目)やホロホロとほどける牛ほほ肉のステーキ(2枚目)は驚きと多幸感を与えてくれたし、初めて食べたムール貝(3枚目と4枚目)も美味しかった。グルメ街と言うからクオリティが高い分少々価格も張るのかと思っていたがそんなことはなく、むしろ異常なぐらいに安い。あまりの安さに財布の口はガバガバである。3、4軒ほどまわってしまった。
5日目(2月11日)
優雅にクレープ屋さんで朝食を済ませ、観光もしなければということでcathedoralへ。もちろん綺麗だったのだが正直食べ物と比べると物足りない。滞在時間は5分。とはいえ綺麗なことには綺麗だったので写真は貼っておく。というわけでランチだランチ。
みんなはスペイン料理をいくつか知っているだろうが、有名どころでまだ登場していない料理があることに気付いただろうか。そう、パエリアである。もっとも現地の発音だと「paella(パエージャ)」なんですけどね。それを食すべく、海沿いのレストランに向かった。スペインに来て初めての割としっかりめの飲食店。何をするということもないが、流石に背筋が伸びる。しかしその伸びきった背筋も、ワインとスターターのスープでユルユルになってしまった。なんでこんな美味いんだ。ここ最近外食と言えばラーメンばかりなので、より一層感動というか驚きで心身共に満たされる。paellaがメインのつもりで来たのに初手で潰されるなんて。大将戦まで持つだろうか。
次々と様々な料理が登場した。そのたびに﨑原は骨抜きにされてしまう。なんてチョロいんだ。そしていよいよ大将戦。paella兄貴の登場である。「キィ〜(想定より半音高く)」という声が思わず漏れてしまった。エビや貝などおそらく付近の海で取れたであろう海の幸たちが一同に会しスペインに現れた3人の日本人をこれでもかとオモテナシする。
ここでこぼれ話を1つ。会計時に、店員さんからスペイン語らしき言語で何か言われたがわからなかったので「good!」と答えておいた。
腹ごしらえを済ませたところで再び観光となった。どうやらSan Sebastianには城があるらしいということでそこに向かうことにした。「城」と言ってもいわゆるヨーロッパ風の、シンデレラ城のような城ではなくて「城塞」と言うべき海沿いの小高い丘に沿って築かれたもので、そこを散策することにした。石造りで傾斜が急な道を10分ほど進み5階建てアパートぐらいの高さまで来ると、風にはためくバスクの旗。どうやらこの城はスペイン王室絡みのものではないようだ。その日は風が強かったのでより一層旗が映えて見えた。強風に荒れる海も一望でき、今にも波しぶきがここまで飛んできそうなほどでスリル満載であった。しかしまだここは丘の裾。先は長い。しかもここからさらに傾斜が急になっており良い運動になりそうだ。3人でおしゃべりしながらピクニック感覚で進んでいると、丘の中腹に来た頃だろうか、物騒なものに遭遇した。
"TOURIST GO HOME", "FUCK NAZIS" とかなり攻撃的な落書きが看板に施されているではないか。非常に恐ろしい。丘とはいえ城は森に覆われているため薄暗いし、ましてや我々はアジア人。襲われてしまっては大変である。と不安がっては見たものの好奇心の方が大きくさらに進行することになった。うっそうとした森に覆われた石造りの道を進んでいく我々。思わずヨーロッパ旅行であることを忘れてしまった。それほどまでにこの城は異質な空間だったのだ。そしてついに頂上。頂上は砲台になっていて、この城の役割がなんとなくイメージできる。そして頂上には...
丘の上からSan Sebastianを見守る女神の姿がそこにはあった。そして﨑原が前日に発見した「塔」の正体はこれであった。点と点がつながったような爽快感とここまで高い丘の上にこれを築いたことへの畏敬が湧いた。
ほんの少し城を覗くだけのつもりがかなりの大散策となってしまい、我々はお腹が空いてしまった。時間も時間だったので本日のディナーとしゃれこもう。
前日食べたフォアグラを口が覚えていて耐えられなかったので同じ店を訪れた。さらに別の店ではナントカ貝(名前を忘れてしまった)とタコを頂いたが、いずれの料理も日本ではあまり見られないような調理が施されていて味はさることながら文化の違いも際立っていた。そして写真は撮り忘れてしまったが、かの有名なバスクチーズケーキも頂いた。一般的なチーズケーキよりもしっとりしていて食後に食べても重くなく病みつきになる味であった。日本にも本場の味を再現したお店があるそうで今度探して是非訪問したい。
6日目(2月12日)
この日はスペイン最終日。次はフランスへ向かう。その際にBarcelonaを経由するため、この日はBarcelona観光が少しとほとんど移動尽くしだったので書くことがあまりない。とはいえ、Barcelonaではかの有名なガウディ氏が100年以上前に設計し今なお工事の最中である超建造物、Sagrada Família を視察したのでその感想を書く。
まず端的に言うと、大きくて細かい。天に触れるとも錯覚してしまうほど高い建物に、驚くほど細かな宗教彫刻が外壁一面に彫られている。写真では見たことがあったものの、想像をはるかに超える荘厳さに息をのんだ。そして内装も外装に負けるとも劣らない細やかさ。また、まだ完成前だったのかレプリカが展示されているのみであったが、世界中の言葉で神へ感謝する言葉が一面に細かく刻印された門も配置されていた。ガウディがこの建物を設計するに至ったプロセスを展示している施設も併設されていたが、こればかりはセンスの違いというべきか、見てもさっぱりであった。天才はすごいなぁ。このSagrada Família は2026年完成予定とのことなので完成したらまた来たい。
(中編終わり)
おわび
当初は2部構成にするつもりが思いのほか量が多いので3部構成に変更する。
後編はフランス。花の都Parisを2日間かけて観光した模様をレポートする。お楽しみに。
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