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もう時効でしょう

カップルを見るのが好きではない。
ラーメン屋に来ているカップルは余計に。
ほとんど僻みなのだけど。
「どうせ別れるんだからせいぜい楽しみなさいな」
と斜に構えた目線で見てしまう。

ただそんな僕にも忘れられない恋愛があるわけで。
そう言うと大袈裟なのだけど、酒に酔った勢いで書くことにする。

その子の名前を仮にれなちゃんとしよう。
※僕が能年玲奈のファンだから。

れなちゃんとの出会いは22歳の時。
大学時代の友人からの紹介で会うことになった。
第一印象は「人見知りなのかな」だった。
その友人とれなちゃんと僕の3人で池袋で飲んだ。
僕にしては珍しく女性と話が盛り上がりその日でLINEを交換した。

鉄は熱いうちに打てというか、こっちの気持ちが盛り上がっていたというのもあって、会って2日ぐらいで食事に誘った。
ラーメンの話で盛り上がったからラーメンに誘った。
場所は下北沢。
待ち合わせたときに思った。
「こんな顔してたんだ、かわいいな」

僕は他人の顔を覚えるのが得意ではない。
そんな始まりだった。
下北沢でうどんみたいに太いラーメンを食べて、シーシャに行き、居酒屋で飲み、カラオケに行った。
とても楽しかった。
「気が合うな」とちょっと思った。

2回目のデートの約束をした。
品川の水族館に行こうということになった。
普段水族館なんて行かないのだけど、
「男女のデートなら1度ぐらい水族館に行くだろ」
という謎の先入観があったからそう提案した。

ただ僕が水族館まで待ちきれず、仕事終わりに飲まないかと誘った。
正直「焦ってるな、好きになってしまったかも」と思いながらLINEしていた。
れなちゃんの返事はOKだった。
心の底から安堵した。

2回目のデートは秋葉原。
仕事終わりに美味しいビールを飲んだ。
お互いの仕事の話をした。
その後秋葉原の街をぶらぶらした。

たしかれなちゃんの誕生日が近かったのもあって、水族館でロマンティックな雰囲気を演出しそこで告白するつもりでいた。
ぶらぶらしながら、どう告白しようか、そのことばかり考えていた。

そして気付いたら秋葉原で告白していた。
自分でも意味が分からなかったし、たぶん振られると思った。
やってしまった。

「うん」

彼女が言った(たぶん)。

「え?」

彼女は僕の彼女になった(たぶん)。



付き合った翌日は正直実感がわかなかった。
でもたしかにLINEのやり取りをしているし、水族館に行く予定もある。

水族館で僕らは初めて手を繋いだ。
ようやくカップルになったことを確信した。
水族館のあとは五反田で美味しいハンバーグを食べた。

そこからは薔薇色の日々だった。
初めて家に泊まりに来た。
映画を見た。
動物園に行った。
仕事終わりにラーメンを食べた。
彼女のお陰で辛い物が好きになった。

彼女と過ごせることが楽しくて、彼女のことをどんどん好きになった。

中でも思い出に残っているのは映画。
菅田将暉が出るから、という理由で彼女と「花束みたいな恋をした」を見に行った。
※以下ネタバレ注意

物語の終盤、菅田将暉演じる麦くんが有村架純演じる絹ちゃんを泣きながら説得するシーン。麦くんは絹ちゃんとの別れを予期しながらもいざその時が来ると必死に引き留めてしまうのだ。
別れることがほぼ確定している2人。
僕はそのシーンで泣いた。
隣を見ると彼女も泣いていた。
見終わった後、僕らも別れたような気持ちになって、その日はご飯だけ食べて解散した。カップルで見に来るべき映画ではなかった。
馬鹿なカップルなら「素敵な映画だったね」などと言うんだろうけど。


でも楽しい日々はそんな長くは続かない。
最近家に泊まりに来ないな、遊びに誘っても付いて来ないな。
付き合って1年近く経つ頃になると、そんな日が多くなった。
1週間に1回会っていたのが2週間に1回、1ヶ月に1回、1ヶ月に1度も会わない、となっていった。
そしてついにその時が来た。

「好きなのかわからなくなった」

絶句した。
来るとは思っていたけどいざ言われると胸のあたりがキュッとした。
れなちゃんは泣いていた。

でも僕らはまだ旅行もしてないし喧嘩だってしてない。
まだまだやりたいことがたくさんある。
好きなのかわからなくなったって、それは一時の迷いかもしれないよ?

あらゆる言葉で相手を説得した。
正直かっこ悪いなと思いながら、泣きながら。
そんな僕な必死な姿を見てかわいそうになったのか、その場では別れずに済んだ。

後日、次はLINEで別れを切り出された。
ただ、LINEのメッセージで関係を終わらせたくなかった。
電話で話したことなんてなかったけど、最後ぐらい声を聴かせてくれ。
そう思って電話で話すことを提案した。
OKしてくれた。

感謝の言葉を伝えた。
れなちゃんは泣いていた(気がする)。
でも僕は最後ぐらい笑っていたかったから、この恋を悲しい思い出にしたくなかったから、泣かなかった。


男は上書き保存、女はファイル削除。
きっとれなちゃんは僕のことなんて忘れて新しく彼氏でも作っているんだろうな。
どうか幸せでありますように。

#日記  #恋 #時効


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