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「ルイーズ・ブルジョワ展」森美術館

2024.11.16

「六本木ヒルズのでっかい蜘蛛」と聞けば、誰もが思い浮かべられるあの彫刻。
どこか物々しい存在感を放つそれの作者が女性であり、副題の「地獄」という言葉が示すようなバックグラウンドを持つ人物であると、今回の展示で初めて知りました。

支配的だった父親への憎悪を起点とした作品群はパワフルで、「芸術は正気を保証する」との言葉を残していた彼女が自分の人生そのものをアートとして昇華しようとする試みからは、カタルシス的な感情を呼び起こされました。
多かれ少なかれ、誰もが親への愛憎を胸に抱いています。そういった意味では、大衆的かつ普遍的なテーマとも感じられました(性的なニュアンスを含む作品が多かったのには驚きましたが)。

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「ウジェニー・グランデ」
表題はバルザックの小説に因んでいるそう。
満たされなかった幼少期の思いを表現したもので、
物悲しさとグロテスクさが入り混じる中に
静かな美しさがあります。

第1章 私を見捨てないで

「かまえる蜘蛛」
「自然研究」
ブルジョワの自画像らしい。
豊かさと攻撃性という
2面的な母性を表しているのだとか。
「カップル」
「ヒステリーのアーチ」
長年ヒステリーは女性の病とされていたそう。
その固定観念を覆す作品。

第2章 地獄から帰ってきたところ

支配的だった父に嫌悪感を抱きながらも、愛し愛されたいと求めてしまう、そんなアンビバレントな感情の苦悩を訴える作品群でした。

「父の破壊」
「シュレッダー」
「無題(地獄から帰ってきたところ)」
鬱でも作品を作れる人は
生きる力が常人より強い気がする。

第3章 青空の修復

ブルジョワにとって青色は「自由と開放」を意味していたそう。そんな青がさまざまな形で出てきます。

「青空の修復」
「ビエーヴル川頌歌」
身につけていた衣服をコラージュした作品だそう。
「無題」
下部に青字で
le jour de la reconciliation(和解の日)とある。
「意識と無意識」
無意識へアクセスできる芸術家特有の能力は、
贈り物であると同時に呪いでもあったという。
「トピアリーⅣ」

「ママン」

ブルジョワにとって蜘蛛は実母のことを指しているらしく、この作品名の意味がようやくわかりました。

父母の愛について思いを馳せた一日となりました。

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