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私のスター、ナヤへ。
ナヤ・リヴェラが死んでしまった。
7月の事だった。
その日は大事な大事なオーディションがあって
そこでこの何年かの頑張りを見せるんだ、と力を入れて練習に練習を重ねて挑んで
いざ本番は緊張とプレッシャーで何ひとつ力を発揮できなかった、そんな日だった。
このニュースを知ったのは
がっくりしながら家に帰る途中のことだった。
✳︎
少し前まで彼女のことを
『ドラマgleeの「サンタナ」という役の人』だとしか思っていなかった。
ベッドに潜り込んでさめざめ泣きながら
自分でもなんでここまで
まるで親友を亡くしたみたいに悲しいのかわからなかった
私、ちょっと前まで「ナヤ・リヴェラ」という名前すら知らなかったくせに。
私はその日、ナヤのパフォーマンスを何度も何度もみて
もう二度と会えないナヤの一番素敵な姿を目に焼きつけて、一番素敵な歌を耳に焼き付けて
一緒にさっきの自分のパフォーマンスの情けなさまで思い出してしまって
悲しみと悔しさで感情がごちゃごちゃになりながら泣いた。
✳︎
いなくなってしまって初めて気付いたんです。
私ナヤのこと大好きだったんだなぁって。
きっかけは「サンタナ」という役からだったけど
スパイシーでパワフルな歌声
エネルギーに溢れたパフォーマンス
苦難を跳ね除け
自分の心に正直に生きるために闘い
目標に向かって突き進む強くて美しい女性は
間違いなく「ナヤ」そのものだった。
特別な個性は隠すものじゃない、前面に押し出すもの!
それはサンタナを生きたナヤからのメッセージでもありました。
私の心はナヤのパフォーマンスで動かされて震えて
もっと歌いたい、もっともっと自由に歌いたい!
と心が叫んでるのを感じました。
私の心を震わせた人がいなくなってしまった。
それはやっぱりとてつもない喪失感でした。
✳︎
例えば、もう会えなくなってしまったスターに会いたくなったとき。
どんな場面を思い出しますか?
私だったら思い出すのは
舞台やドラマや映画で輝く姿。
ドラマだったらその時は冬だったとか、その時は毎日こんな事してたとか
家族で見たとか、ひとりで見たとかそんな事を思い出して
舞台だったら
劇場のにおいとか、暑い日だったとか
音楽の振動とか、風を感じた感覚とか
誰とみてその日どんな服だったとか。
歌だったら
こんなところで聞いて、どんな時期で
その時どんな気持ちになったとか
そんな事まで一緒に思い出します。
エンターテイメントって人生の一部に溶け込んでいて
その感動と一緒にいろんな事を思い出させてくれる
ドラマでも、映画でも、舞台でも
エンターテイナーはその瞬間瞬間を生み出す為に命がけで役を生きて
その瞬間は誰かの心に永遠に再生され続ける。
私は記憶の中ならいつだってフルカラーであの人にもう一度会えるし
元気をもらいたくてサンタナの歌を聞けば
その歌をどんな気持ちで聞いたかをありありと思い出す
月並みだけど、「心の中ではあなたは永遠に生きてる」んですよね。
だから私は、出来る限りたくさんの瞬間を切り取りたくて劇場に足を運ぶし
映像なら何度も見て頭に焼き付ける。
たくさんの音楽に出会って心を動かして
自分の中にたくさんの永遠を作ろうと思ってるんです。
それから時々、その永遠の中に自分自身がいて
永遠の内側から見えるその瞬間も外側からみるのよりもっともっと素敵だな、なんて考える。
大好きなあの人が歌った歌を歌えたり、その音楽の中で生きるチャンスを持っているならそこに飛び込んでいける。
たくさんの人達の永遠の瞬間を繋げて行って
それがどこかで巡りめぐって、いつか自分が見たスターたちの永遠の瞬間の内側に行くことができたら
私はまた別の誰かの瞬間に関われるんじゃないかってワクワクするんです。
✳︎
私のスター、ナヤへ。
あなたがいなくなってしまって、あなたにもう会えないと知った時
あなたを失った悲しみだけじゃなくて
私の心を作っていた何かも失ってしまったような気持ちになりました。
日常が非日常になってしまった時、あなたの歌で私の日常は彩られて
あなたの歌が私の支えになりました。
まだまだ日本も世界もまだいつも通りじゃないけど
最近少しずつ、舞台や、ドラマやそんな「誰かの支え」が動き始めた気がします。
どんなに世の中が変わって行っても
何度挫折しても、エンターテイメント界は立ち上がろうと闘っている。
ナヤが教えてくれた
たくさんの素晴らしい歌や、作品に心を動かされ人たちが
子供や孫や、そのまた孫や、その先の子供たちの代までその感動を伝えられるように静かに闘っています。
挫けそうな時は、星になったナヤを探して
夜空を見上げてがんばります。
だから思いっきり深呼吸して、手を取り合って歌える日まで
どうか私たちの進む道を照らしていてください。
p.s あなたのこと、忘れません。永遠に。