
ハーモニー
蟬が鳴く。
ジリジリと照らす陽の下で、ジージーとバスが歌い始めると、ミンミンとテノールが声を合わせる。
自然が作り出すハーモニー。
しかし僕は、蟬が嫌いだ。
1週間か2週間そこら、全力で鳴いて、無力に死ぬなんて…。
美しすぎやしないだろうか。
彼らは僕らにどんな印象を残そうと、あれほど鳴き続けるのだろうか。歌い続けるのだろうか。
僕らは思う。
蟬の命は儚いものだな。
あるいは、こう思うかもしれない。
蟬のように全力に生きれたら、気付いた時には無力に死ぬことが出来ていたなら。
それは幸せだろうか。不幸せだろうか。
だから、蟬が嫌いなのだ。
彼らは生命の意味と使命を僕らに、このまばゆい季節に突きつけてくる。
ほとんど一方的に、しかし確固たる意志を込めて。