ダンス・ダンス・ダンス!
アラームが鳴る。
「あと10分だけ……」と布団の中でぐずぐずしていると、リビングから”We are the wolrd”が聞こえてきた。
Jがカチャカチャと料理をする音がする。
ふわふわとハミングをする声が重なる。
寝ているより起きた方が楽しそう。
降参して布団から出る。
陽気な朝にまんまと誘い出されてしまった。
Jは昨日半額で買った黒ごまベーグルをトーストし、フライパンで目玉焼きとベーコンを焼きながら、変なステップを踏んでいる。
「おはよ」
「おはよ」
朝からノリノリだ。
結婚してからわかったことだけど、Jはほんとうによく踊る。
そしてもう一つ結婚してからわかったことだけど、こういうときは一緒に踊るのが一番だ。
身体を左右に揺らしたり、ビヨンセみたいにお尻を振ったり、盆踊りみたいな腕の振りをつけたり、社交ダンスみたいに回ったり。お互いの踊りがヘンで、楽しくなって、ひいひい笑う。絶対に外では披露できない出来なのに、Jはキメ顔をしながら踊る。それがまたおかしくて、息を切らしながら大笑いする。
サンバの国ブラジルやフラメンコの国スペインの家庭ってこんな感じなんだろうか。
ベーグルにクリームチーズを塗り、その上に目玉焼き、目玉焼きの上に残り物のタマゴサラダを乗せる。そしてカリカリにしたベーコン。
「タマゴの上にタマゴサラダ?合うの?」と聞くと、
「まぁ任せてよ。俺ベーグルサンドの魔術師だから」とJが言う。
また笑う。
そのタマゴサラダ作ったのはわたしなんですけど。
食卓に並べたベーグルサンドはとってもおいしそうだった。
「ちょっと待ってね!」と写真を撮ってる間も、Jはテーブルの横で踊っていた。