「すばらしき世界」
予告を何度か観て気になっていた作品。公開と観に行けるタイミングを待って、やっと観に行けた!
元ヤクザで、刑務所から出所してから、更生して生活していくなかでの社会での生きづらさ、絶望と希望をいったりきたりして、一喜一憂してしまって忙しかった。
先日観た、「ヤクザと家族」とリンクする部分がたくさんあったので、比較したり、共通点を探したりしてしまう。少ししか出てこないけど、ヤクザの義理人情の世界。まっすぐで不器用な主人公。何かを守るために暴力を奮ってしまう。
「ヤクザと家族」は絶望感がすごかったけど、「すばらしき世界」では、向き合って支えてくれる人達がいて、希望があった。
生きづらい社会でも、人の温かみに触れて、色々我慢して、なんとか生きていけるのかな、大丈夫そうかなって思ったところでの悲しい最後だった。あそこは、死んでしまわないといけなかったのかな。
太賀の、お風呂のシーンが印象的だった。
信じて支える立場なら偽善じゃない気持ちで、繋がりを断たずに、声をかけ続けること。失敗から更生しようとする立場なら、踏みとどまって我慢すること、素直に行動して信頼を積み重ねること。どちらにしても、諦めずに自分と相手を信じてきちんと向き合うことが大事なんだろうなぁと思った。
役所広司は、ベテランすぎて、演技が上手くて当たり前という目線で観てしまうが、やっぱりすごい。凄みと温かみと無邪気さと、いろんな表情に何とも言えない気持ちになる。
仲野太賀。「南瓜とマヨネーズ」あたりから、すごく好きな役者さん。醸し出す雰囲気や表情が好き。お風呂のところと、最後のところ、泣けました。
長澤まさみ。色んな役ができて、安定感すごいなと思う。もっと出てきて欲しかったー。中途半端な太賀に、撮るか止めるかしろよ!みたいなとこは気持ち良かった。けど、あの場面に直面したら、きっと怖くて逃げてしまう。
北村有起哉。なんか見たことあるなーって思いながら最後まで気付かず、あぁ!ってエンドロールでなった。「ヤクザと家族」の兄貴!リンクする作品のどちらにも出ていて、演じながら何を思っただろう。がっつりヤクザも、がっつり役所の人でもハマっていてすごいな。
他にも素敵な役者さん、たくさんでした。
お母さんの消息が分からないままで、ずっと気になるなー、とか。太賀の生い立ちにも実はどこか重なるところがあったからほっとけないのかな、とか。最後まで分からない気になる部分は色々あった気がする。考えすぎ?
アベくんのシーンはすごく気になった。アベくんが悪いというか、入居者さんの生命に関わる仕事を、アベくんに任せた上司の責任じゃないのか。障害のある人を、あんな風にマネしてバカにしたりするような職場を実際見たことも無いし、もし居合わせても同調せずに冷静に指摘すると思う。あの場面の、手を上げない我慢は必要だけど、同調してまで馴染むことが必要なのか、分かりやすく変化を見せるためかな、そのあたりの加減が出来ないから、我慢を徹底したということなのかな。
障害のある方と一緒に働いて思うことや難しさもあるだろうから、なんとも言えないけど。色々と複雑な心境になりました。
他にも、社会の矛盾、何が正解で何が間違ってるのか、立場にも状況によっても変わるから、決まった正解なんてどこにも無いような気がするし、納得したり、モヤモヤしたり、感情が忙しくて、色々考えてるうちに、え?って突然ラストを迎えて。でも、こんなものなのかもなぁ、と思ったり。色々考えさせられる良い映画でした。
「ヤクザと家族」と「すばらしき世界」。
ぜひ、どちらも観てほしい。