ショート×2(その14)ゆりかごのうた
「ゆりかごのうたをカナリアが歌うよ。ねんねこ~ねんねこ。ねんねこよ」
警備員として働くミケの休憩時間だ。6時間働くと45分は休憩をさせないと労働関係の法律に違反してしまう。労働基準監督署から指摘を受けないようミケ勤務時間を管理しなくては。
ミケはその日、のんびりしていた。何もすることがないような感じだった。ミケを膝の上にのせるとミケのお尻をポンポンしながら子守唄を歌うような感じだ。
少し風のある寒い日。それでも冬の太陽が差し込む小春日和。少しだけ暖かい玄関の前でミケと一緒にたたずむ。ミケの肉球が冷たい。掌で包んで温める。こうなるとどっちがヒーターの役割を果たしているのだかよくわからない。
それでもお互い寄り添うことで温め合っていたに違いない。しばらくするとミケが暖かくなってきた。ミケの動きが活発になってきた。そうなってくると今度はどうやら抜け出したいらしい。「もう行く!」と言わんばかりだ。
せっかく温めてやったのにとは思うが言葉に出してもミケには判るまい。風が強くなってきた。ヌシも家屋に入ることにした。小春日和の穏やかな一日の出来事だった。
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