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日本酒と中華料理をお見合いさせることにしました。(sake×中華研究会発足の理由)

こんにちは!中国向けの日本酒文化普及活動を行っている、山本敬(Taka Yamamoto)と申します。2000年から北京を中心に日本酒を販売しながら、現地で日本酒の美味しさを伝えてきました。その際の活動フィールドは、主に現地の日本料理店でした。
 
しかし、数年前に帰国して思うのが、近年日本酒はどんどん進化して、日本酒の味がカバーする範囲は和食以外にも広がっている、ということ。実際に、日本酒とイタリアンとか、日本酒とカレー(!)なんていう組み合わせを楽しんでいる人もいます。それなら中華にもいけるんじゃない?もしそれが実現したらすごいんじゃない?
 
そういう想いから、この『sake×中華研究会』を立ち上げました。
ここでは、本会を立ち上げた理由と、研究方法を詳しくお伝えします。共感してくださる方からのフィードバックを期待しています!


世界で日本酒は本当に人気なのか

日本ではよく「世界で日本酒が人気!」と報道されますが、私の知見では、日本酒単体だけですごく人気が出ている、というわけではありません。もちろん、日本酒ファンは海外にもたくさんいますが、まだ少数派です。
 
海外における日本酒の消費は、基本的に日本料理店に限られています。寿司や刺身に代表される日本料理が健康的であるなどの理由で人気があり、日本酒は「日本料理に合わせるのは当然日本酒だから」という理由で消費されているケースが多いのです。
 
一方で、日本国内の日本酒消費は減少の一途をたどっていて、毎年30蔵以上の蔵元が廃業したり、酒造りを一時的に停止したりしています。毎年それだけの味と伝統が失われているのです。日本の伝統文化を愛するものとして(そして酒好きとして!)こんな悲しいことはありません。しかし、人口減少やアルコール離れの進む日本において、この状況を打破するには、国内より国外に期待するよりほかありません。
 
そこで私は、「日本酒を世界の酒に」をミッション(目的)に掲げて活動しています。少しでも日本酒文化のお役に立てれば、という気持ちです。

世界の美食家たちが気付き始めた日本酒の魅力


上品な中華にはワインでも日本酒でもよく合う

現状では日本料理に合わせる酒として認識されている日本酒を、本当の意味で世界に広めるためには、日本料理以外のフィールドを開拓する必要があると思います。
 
ワインは、フレンチやイタリアンに合わせるお酒ですが、日本においては寿司に合わせたり焼鳥に合わせたりする店もあります。そしてそれが「面白い」と評価されています。これと同じようなことを日本酒で行っていけば、日本酒は世界に羽ばたく酒になる可能性を十分に秘めていると思います。
 
実は今まさに、各国でそのチャレンジが行われています。
 
フランスの星付き高級店では、料理一皿ずつに異なるワインを合わせるペアリングディナーの中に、ワインに混じって日本酒が出されることがあります。高級フランス料理には和食の技術も取り入れられていますので、当然それに合わせるお酒が日本酒でも良いはずです。しかし、実際に日本酒がペアリングに取り入れられるまでには時間がかかりました。実はその裏には、日本人ソムリエたちの努力があるのです。
 
一方、中国ではどうでしょうか。中国の高級レストランでも、今やフレンチや和食のようなプレゼンテーションで料理が提供されており、もちろんワインを合わせたりしますが、最近では日本酒を合わせるケースも出てきました。これは、日本酒のポテンシャルの高さを証明するもの。「美食家たちは、日本酒と各国料理の組み合わせの面白さに気付いている」と言えるのではないでしょうか。
 
もし、日本酒の消費が日本料理店に限らず、各国のローカルフードと一緒に飲まれるようになれば、たとえそういう飲み方をする人が総人口の1%だけだったとしても、日本酒の市場は飛躍的に拡大します。中国総人口約14億人のうち1%が飲んだだけで約1400万人です。日本総人口の10%を超えます。そうなれば、日本の蔵元は息を吹き返します。

日本酒を世界に広めるための研究と発信


生牡蠣には白ワインより日本酒では?

そこで私は、フランスを始めとする日本人ソムリエの方々を見習い、日本酒とローカルフードの組み合わせチャレンジに自分も加わろうと決心しました。もちろん自分のフィールドは中華圏(中華料理)です。なぜなら、私は20年前から中国で日本酒を紹介してきましたし、同時に20年近く現地で中華料理も食べてきました。それなら、日本酒と中華料理をお見合いさせる仲人になれそうだと思ったからです。

では、どうやったら中国の中華料理店で日本酒が飲まれるようになるか? それを実現させるには、情報発信が不可欠です。「中華に日本酒はいける」と中国人にどうやって伝えるか。それにはまず、カキ料理にはシャブリ!などのように、どの中華料理とどの日本酒が合う、という具体例を研究しなければなりません。
 
そして、その情報を発信する場所は中国だけに限りません。案外、日本の方が効果的である可能性があります。なぜなら、中国をはじめアジアの若者は「日本で何が流行っているのか?」に非常に興味があり、日本で人気があることはアジア各国にも自然に伝播するからです。
 
長くなりましたがこのような背景や理由から、私は日本で『sake×中華研究会』を立ち上げました。そして、日本酒と中華料理のペアリングは「美味しい!」「面白い!」ということを自分の意見だけでなく多くの方々と一緒に研究しながら、発表していくことにしました。
 
さらに、その流れを日本だけでなく、本場中国やその他の国まで広げることで、世界中の中華料理店で日本酒が飲まれるようになることを最終目標とします。

sakeと中華料理を柔軟に合わせていく試み


肉まんに辛口純米酒とか


『sake×中華研究会』では、まずはテーマを決めて、何人かで集まって中華料理と日本酒を実際にテイスティングしてみるという方法で研究を進めます。そして、どの料理とどの酒が合うのかを点数で評価し、なぜ合うのか、どうすればもっと良くなるか、などを話し合ってまとめます。
 
アプローチとしては、単に中華料理と日本酒のマッチングテストをするだけでなく、中華料理をどうアレンジしたら日本酒に合うか、日本酒をどうアレンジしたら中華料理に合うか、ということも研究していきます。例えば、中華料理に柚子を入れてみるとか、日本酒にハーブを入れてみるとか、そんな自由な発想でやってみようと思います(そのため、日本酒と書かずに敢えてsakeと書いています)。
 
ペアリング研究結果は、noteを始め、ネット上で発表していきます。しかし、写真と文章だけではそのペアリングの面白さを完全に伝えることができません。実際にそのペアリングを鼻と舌で感じてこそ、真の意味で伝えることができます。したがって実践が必要です。
 
まだ計画中ではありますが、研究会で良い結果が出た組み合わせを実際に中華料理店で提供する、ペアリングディナーの実施も考えています。
 
この食文化の大変革に一緒にチャレンジしてくれる『sake×中華研究会』のメンバーは、日本酒文化を海外に広めた第一人者で日本酒ジャーナリストの松崎晴雄さんを始め、蔵元さんや日本酒関係の方、食文化に関わるお仕事をされている方、日本人だけではなく中国人、欧米人も含め、多くの方に参加していただくことを考えています。
 
発起人の山本(筆者)が毎回メンバーを集めて、いつも同じ固定メンバーではなく、異なったメンバーに集まってもらい、より多様なアプローチで日本酒と中華料理の可能性を探っていくつもりです。
 
研究結果については随時発表していきます。日本酒文化を世界に広めていくための新たな挑戦を応援していただけると嬉しいです!

発起人・書き手


山本 敬(Taka Yamamoto)
2000年から蔵元の駐在員として北京に移住、日本酒を販売。2007年北京で起業し、多数の蔵元様に助けられながら、日本酒の輸出から現地販売までを自社で行う。同時に北京初の日本酒ダイニングバーをオープン、自身も店に立って中国人消費者に直接日本酒の美味しさを伝え、多くの中国人日本酒ファンを生み出した。2012年、日本政府により「世界で活躍し『日本』を発信する日本人」に選出。
その後事業を売却して帰国。現在は東京在住。
WEST sake level 3, Sake diploma, 日本酒学講師

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