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日本酒学レポ③ラボで日本酒づくり体験【7月の授業あれこれⅠ】

7月のあいだ、大学院の授業を受けるためにひと月ほど新潟に滞在していました。

これまで、noteにて新潟大学 博士課程 日本酒学コースの内容をちょこちょこ紹介しておりますが、前回の記事でも書いたように、博士前期課程1年生(M1=修士1年生)の必修科目は7月に集中しておこなわれます。

その中にはオンラインでは受講できない「実習」の授業も多いため、「もう、住んじゃうか、新潟」という気分で一カ月、行ってまいりました(もちろん、東京の家賃と新潟の宿泊費を2軒分払いましたよ!)

しかし、わたくしのようにパソコンさえあればどこでも仕事ができる職業ならさておき、一般的な社会人学生の方はやはり両立は大変ですよね。同級生の社会人学生でも、東京と行ったり来たりしている方がいらっしゃいました。

これからいくつかの記事に分けて、7月におこなわれた授業についてレポートしていきたいと思います。今回メインでお話するのは、「基礎日本酒学実習」という、酒造りの基礎を学ぶ授業です。

なお、毎度のことながら、関係者の方で修正の必要などを見つけた場合はメッセージいただければ幸いです。


前提:7月に受ける授業一覧

7月におこなわれた授業は以下のとおりです。

【短期集中型】
・基礎日本酒学実習
・日本酒学概論I
・日本酒学概論II
・発展日本酒学実習(の一部)
・課題発掘・解決セミナーI

【レギュラー】 ※詳しくは前回の記事にて
・月7限「研究入門」
・月6限「日本酒と経済分析」
・水2限「マーケティング論特論」
・水6限「日本酒学概論III」
・土1限「課題研究」

カリキュラムを知らされたときは「なんのこっちゃ?」と思ったのですが、簡単に言い換えると、

【短期集中型】
・基礎日本酒学実習:大学ラボ内での酒造り
・日本酒学概論I:2日間で、8コマの理系授業を受ける
・日本酒学概論II:3日間で、酒類総研の先生方の理系授業を受ける
・発展日本酒学実習(の一部):ビジネス寄りの講義(1日)と酒蔵見学(1日)
・課題発掘・解決セミナーI:研究の進捗発表

【レギュラー】:春夏に受けてきたやつ(ほぼ7月中に終わる)

となります。

その中から、今回の記事では、「基礎日本酒学実習:大学ラボ内での酒造り」にフィーチャーしてお伝えします。

マヨネーズ瓶で酒造りを体験

基礎日本酒学実習は、ひと言でまとめると、マヨネーズ瓶一本分の日本酒を造って、酒造りのメカニズムを学ぶというものです。

スケジュールはこんな感じ↓

1日目:ガイダンス&酵母培養・米準備
2日目:仕込み
2〜8日目・10日目・15日目・20日目:毎日昼休みに重量測定
7〜8日目:米分析・麹分析
20日目:上槽・澱引
21日目:酵母生存率測定・成分分析
25日目:官能評価・データ整理

お酒の醸造プロセスをご存知の方からすると、ところどころ省略されているのがわかるかと思います。
冬には醸造試験場でより本格的な酒造りをおこなうとはいえ、今回は精米や洗米・蒸きょうなどのプロセスはカットされており、あくまでメカニズムを学ぶのが目的。というわけで、原料にはα化米と乾燥麹を使用しています

α化米と乾燥麹を測定中

なんとなくわかっていたつもりの酒造りを数字で理解

日本酒学コースのうち、2023年度のM1の学生は8名で、その半数である4名は文系の学生です(わたくしもここに含まれます)。

そのため、専門性の高い作業は初体験の人がほとんどなのですが、大学院の実習とあって、もちろん「みんなでお酒を造ってみよう! おいしくできたね、よかったね」みたいな感じではなく、それぞれの工程で「どうやったらちゃんとお酒が造れていると言えるのか?」を確認・学習していきます。

まず、重量測定では、毎日お昼にラボへ向かい、自分のマヨネーズ瓶の重さを測ります。アルコール発酵が起こると、そのぶん二酸化炭素が発生し、空気中に逃げていきます。「重さがどれだけ減っているか?」を確かめるのが「ちゃんと発酵しているか?」をチェックするポイントなんですね。

重量を測定

7〜8日目におこなう麹分析では、自分が使っている麹の酵素であるαアミラーゼがきちんとお米のでんぷんを分解しているか? を調べるために、αアミラーゼが活性な場合に発生するCNPという発色性のある物質がきちんと生成されているか、分光光度計を用いて確かめる実験などもおこないました。

恒温装置で分光光度計にかけるためのサンプルを作ります

最終日の官能評価では、その前におこなった成分分析の数値をもとに、アルコール度数、日本酒度、酸度、アミノ酸度、さまざまな香気成分の違いによって、風味にどれだけ影響するのかを測定。

その時の様子は、新潟テレビさんのこちらのニュースでも放送されています(なぜかわたくしがサムネに😂)

日本酒造りの実習をおこなった感想

来年から受講する人がつまらなくなってしまうとよくないので、細かいところは割愛しますが、25日間にわたる実習を経て、まず思うのは「お酒造りができてうれしい!」ということ。

取材をする中で、杜氏さんや蔵人さんからよく「同じように造ってもまったく出来上がりが違う!」というようなお話は聞いていて、「へー、不思議だな〜」とは思っていたのですが、まさか授業の中で、同じ環境の中、超指示通りの造り方をして、ここまでの差が生まれるとは思っていませんでした。

今回は遠心分離での上層でした

というのも、わたしがクラス8名の中でいちばん数値がズレていたのです(苦笑)。日本酒度はクラスの最高値から3ほども離れているし、香気成分はいずれも爆高。保冷機の中で、出席番号順的に常に真ん中に瓶が置かれていたから、しっかり冷やされた……みたいな事情なんでしょうか。

また、クラスメイトが理系4名、文系4名だったため、担当の先生に限らず、理系の学生さんが文系の学生さんのお手本になってくれるという流れができていたのもよかったです。理系は現役学生さんのみですが、文系のほうには社会人学生もいるので、知識の交換などもしあえて、文理融合の学問分野ならではのメリットなのかな、と感じることがたくさんありました。

+ + +

というわけで、簡潔にはなりますが、今回は「基礎日本酒学実習」について解説しました。引き続き、その他の授業をレポートしていきます!

※日本酒学レポをまとめるマガジンを作りました!


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Saki Kimura / Sake Journalist
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