【マリアージュの裏話】フグのあん肝ポン酢和えに合わせた日本酒@賛否両論 名古屋
マリアージュの基本のどれにあたるか
前回は、フグとからすみの柑橘系サラダ仕立てに、同じような味わいのものを合わせるという考え方で、すっきりとした山和星を合わせました。
今回は前回とは真逆の組み合わせをご紹介します。
それは「4つのマリアージュの基本の考え方」の二つ目、
『2. 同じような味わいを持つものを合わせるときと、それぞれが持っていない味わいの要素を合わせるときとでは難易度と満足度が変わる。』の中の、「それぞれが持っていない味わいの要素を合わせる」という難易度の高い組み合わせです。
なぜ「それぞれが持っていない味わいの要素を合わせる」のが難しいのか
たとえば、休みの日は家で本を読んだりゲームをして過ごすことが好きな人と、登山やサイクリングなどのアウトドアが好きな人が一緒に休みを満喫するのは難しいですよね。お互いが尊重し合って、今まで経験したことのない新しい分野に興味を持ってやってみると、意外と楽しかったりすることもあります。キャンプ場に行って、本を読む、という両方を組み合わせた楽しみも生み出せるかもしれません。
日本酒とお料理の組み合わせも同じように、一見すると正反対のような味わいのものでも、組み合わせてみるとしっくりくる、というものが存在します。ただ、少しでも凸凹がずれてしまうとはまらないし、気持ち悪い。絶妙なバランスが必要になってくるので難しいんです。
お料理とは違う味わいの要素を持った日本酒を合わせる
それでは今回は、どんなお料理にどんな日本酒を合わせたのか見ていきましょう。
お料理は、フグと、湯引きをしたフグの皮をあん肝ポン酢と和えて、ネギと穂紫蘇(ほじそ)をまぶした「造り」。
王道なら、結構濃厚で旨味があって、どっしり系の柔らかな味わいの純米酒(同じような味わいを持つものを合わせるやり方)を選びます。
当たり前の組み合わせだと面白くないなぁと思って、悩みました。
そこで、あえて今回は、そこまで濃厚ではなく、透明感のあるすっきりとした味わいの日本酒を選ぼうとまず決めました。
マリアージュのポイントは?
選んだのは、宮城県栗原市の『日輪田 生酛純米大吟醸 山田錦』。
中心部分には生酛造りからくる芯の通った旨味があるけどすっきりしています。後味のキレの良さを感じさせる、それでいて複雑味を感じさせるようなタイプ。
5℃程度に冷やしたものを、大ぶりのブルゴーニュグラスに注いで、合わせました。
穂紫蘇と同じ香りがあって、適度な旨味がありながらもキレのある、それでいて透明感のあるテクスチャー(質感)が、全体を包み込んだのち、後味は切れ上がらせる。
あん肝ポン酢の旨味もしっかりと受け止めて、両方が主張しながらも、お互いを引き立たせ合うようなマリアージュになりました。
複雑味を楽しむ、という感じでお客様には「もっと飲みたい!」というお声をたくさんいただいた組み合わせとなりました。
次回の予告
2回にわたって、マリアージュの基本の考え方の2「同じような味わいを持つものを合わせるときと、それぞれが持っていない味わいの要素を合わせるときとでは難易度と満足度が変わる。」についてお伝えしてきました。
例えば、フグではなくても、鯛や平目といった白身魚のお刺身などをスーパーで買ってきて、同じような味わいのすっきりとしたキレのいい日本酒と合わせたり、甘みのあるまろやかな味わいの日本酒と合わせたりして、その違いをぜひ試してみてくださいね。
次回は、マリアージュの基本の考え方の3番目、「料理と日本酒の温度を合わせる」ことで生み出されたマリアージュの実例をお話します。
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