「杜氏」って何?
「〇〇酒造の杜氏は、越後杜氏です」
「△△酒造は杜氏制度廃止してます」
「◇◇酒造の杜氏は、工場長です」
「※※酒造はオーナー杜氏(蔵元杜氏)です」
「〇△酒造の課長さんは、杜氏の資格を持っている」
「杜氏」という言葉の意味の変化を理解していないと、上に記した文の意味を理解することはできない気がします。
酒造りの出稼ぎ集団のリーダーである「杜氏」
江戸時代になると、幕府は通年の酒造りを禁止し、冬季にのみ集中して酒造りを行うようにお触れを度々だしました。その結果、日本酒は冬に大量に造るものになりました。
冬期に集中して酒を造るとなると、一時的に蔵人不足が起こってしまいます。そこで利害が一致したのが、冬の農閑期に手が空く農村の働き手たちでした。春から秋は農作業をし、冬には集団で蔵に出稼ぎに出て酒を造る仕組みが出来上がりました。
その集団のリーダーが「杜氏」です。
杜氏の仕事は、蔵元が仕入れた米を使って、蔵元が希望する品質の商品を希望する量、希望するタイミングで作って管理するのが仕事になります。また、杜氏集団のリーダーであるため、集団をまとめる管理職という立場でもありました。
今、このような形態で働いている杜氏は、非常に少なくなっております。
「杜氏制度を廃止しています」の場合、「出稼ぎ杜氏制度は、廃止しています」という意味で使われていることが多いです。後述しますが、製造責任者は、どこの酒造メーカーにもいるはずです。
酒造りのリーダーである「杜氏」
元来は、農家の出稼ぎ集団であった杜氏集団のリーダーを「杜氏」と呼んでおりました。しかし、出稼ぎという雇用形態の杜氏集団は、非常に少なくなり、杜氏の意味も変化してきました。
最近は、出稼ぎ集団かどうかは問わず酒造りのリーダーを「杜氏」と呼ぶことが多くなってきています。
製造のリーダー(部長だったり課長だったり)を「当社の杜氏です」といって紹介している場合は、この意味に該当します。
また、小規模な酒造場においては、オーナー(蔵元)と製造責任者が兼任している場合もあります。その場合、「うちはオーナー杜氏(蔵元杜氏)です」と紹介されることがあります。
「杜氏」に資格や国の認定制度は存在しない
現在、「杜氏」という言葉の多くが、製造責任者という意味で使われています。
しかし、近年、各県やその酒造組合などが独自の「杜氏認定制度」を創設したりしているようです。
南部杜氏資格試験:岩手県
ひたち杜氏(仮称)の認定制度:茨城県
資格・認定された人が「杜氏」を名乗れるようになると、酒造メーカーにに複数名の杜氏が存在することになるかもしれません。そしたら「杜氏」の意味もまた変化していくのでしょう。
個人的には、「杜氏」に資格は不要だと思っております。いい酒を造って評価され、鑑評会などに入賞して評価され、そして、杜氏の格が上がっていくものではないでしょうか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?