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HATSUKOI 1981 第12話

 第12話 初デート計画

 土曜日は朝からそわそわと落ち着かず、授業にまったく身が入らない洋平であった。デートプランはもうできている。メモに書いてポケットに入れてある。それを何度も何度も取り出して確認するので、ボロボロになっている。

 第一項
待ち合わせ。岩徳パルコ、1時。楽器屋の前でもいいが、店員に見られると恥ずかしいので、ちょっと離れた朔日町の岩徳パルコ前。彼女の乗ったバスがそこを通るから、降りてくる彼女を待つ。

 第二項
食事、パーラー・シーガル。お昼なので食事。義人に教えてもらったちょっと小じゃれたパーラー。ナポリタンがお薦めらしいが、口がソースまみれになるのはどうか… まあ、それだけじゃないだろうから、行ってから決めりゃいいか。校則で、喫茶店はだめだがパーラーはOKというのが、よく分からない。そもそも喫茶店とパーラーの違いって何だ?

 第三項
メイン。やっぱり映画だよなあ… でも、これまで、漫画祭りや、ゴジラとかガメラとかの怪獣映画か、ブルースリー、ジャッキ-チェンのカンフー映画しか見たことない。恋愛映画とかぜんぜん興味ないし、知らないし… 一応調べては見たが内容がよく分からない。彼女が観たい映画があったらそれを見よう。もし彼女も映画興味なければ、とりあえず街中をぶらぶらして、その後公園のそばに新しくできた市の公会堂でも見に行こう。ここが一番肝心なんだろうけど、ほかに何も思いつかない。義人に聞いたが、

 「一緒にいりゃそれでデートだろ!何でもいいんじゃない?」

と、そっけなくいわれた。まったく、こっちとらお前らみたいにマンネリカップルのデートじゃなくて『初デート』なんだよ。ちょっとくらいまじめにアドヴァイスしてくれたっていいじゃないか!

 第四項
お茶。映画の後、もしくは散歩に疲れたら、どっかでお茶休憩だな。グランドホテル直営のケーキ屋に行こう。小さいころ生まれて初めてプリン・ア・ラ・モード食べて、もどしてしまい、それ以来プリンが食べられなくなってしまった曰く付きの店だが、コーヒーはおいしいし、チーズケーキは絶品だから。

 第五項
帰宅。ここまで来るとおそらく8時ぐらいになるだろう。後はいつものように一緒にバスで帰る。が、今日は『ゆでだこオヤジ』のバス停で一緒に降りて、家まで送ろう。そう決めていた。


 古文の授業中、もちろん授業内容なんか上の空で、メモを見ながら、難しい顔したり、にやけたりしていると、

 「何見てるんですか?!」

若い女教師がそのメモを取り上げた。慌てふためく洋平をよそに、内容を確認した先生は、

 「こういうものは、ちゃんと頭に入れておきなさい!」

と、メモを洋平に返しながら、拳骨でコツンと頭を小突いた。                                                                                          

                      
                           続く・・・                                                               

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