鼻詰まり解消研究中間報告

こちらは鼻詰まり歴27年なのだ。

舐めてもらっては困る。

慢性的な鼻炎に加え、春と秋の花粉、ハウスダスト、風邪。鼻が詰まる要因は数知れず。

幼少期から現在に至るまで、鼻詰まり解消のためにありとあらゆる手法を試みた。

寝る前に鼻が詰まっていると眠れない。5歳の頃、母親にそのことを相談すると、「詰まっている方の鼻の穴を上にして寝ると鼻が通るよ。」と教えてくれた。
早速試してみると、3分もしないうちに詰まっていたはずの右鼻の穴がスースーと通りだした。

イメージは右鼻の穴からビー玉サイズの気泡がゆっくり入ってきてそのまま鼻が通っていく感じ。

感動。

しかし、しばらくするとさっきまで詰まっていなかったはずの左鼻の穴が詰まり始めた。すぐさま寝返りを打って左鼻を上に寝ると左鼻が通り出す。またしばらくするとその分右鼻が詰まり出す。

「(クソっ…砂時計システムか…！）」

今度は右鼻の穴を上にして右穴が通りだした直後、左穴が詰まり始める前に仰向けになり、両鼻が通っている状態をステイしようと試みる。

成功かと思われたがしばらくすると両穴が平等にうっすら詰まりだした。

「(クソっ…！要するに"詰まりの総量"は変えられないというのか…。)」

5歳の僕は頭を抱えた。

2年後、詰まっている穴と反対側の脇で椅子の背もたれを挟んで圧迫すると鼻詰まりが解消法されるという裏ワザを土曜の朝『知っとこ！』でやっていた。

これは寝転ぶ方法より原理が謎でなんだか期待できる。ただこれも寝転ぶ方法と同じで、結局は詰まってない方の穴に詰まりを追いやるだけだった。

そこで7歳の僕が思い付いたのは、椅子2脚の背もたれを両脇で挟んで両穴から攻める作戦だ。早速試みる。

「(なるほど、右穴からも左穴からもビー玉サイズの気泡エネルギーが入っていく感じがする。成功か…！？)」

そしてそのまま両穴が交じり合う頂点の部分で、左右の気泡エネルギーを一気に衝突させ、相殺させるのだ。
右穴からガッシュのバオウを、左穴からゼオンのジガディラスを撃ち込むイメージ…！

いいアイデアに思えたが、この方法でも"詰まりの総量"自体を変えることはできず、仰向けで寝ている状態と全く同じ状況を作り出すだけだった。

7歳の僕は文字通り行き詰まった。

5年後、陸上部に入った僕は、どんなに鼻が詰まっている状態でも走りだした途端に両穴が通り出すことに気がついた。調べてみると、運動中の人間は、より多くの酸素を取り込もうとするため、本能的に鼻腔を広げるらしい。

これは使える…！

といっても四六時中走っているわけにもいかない。どうしたもんかと研究を重ねていると、走る練習メニュー以外の体幹トレーニング、補強運動(筋トレ)中でも、ハードに行えば鼻が通ることを発見した。

その発見以来、就寝時に鼻が詰まっていると、僕はものすごい勢いで腹筋を繰り返す。50回、60回と数えると両鼻の穴が通り出す。まだ止めてはならない。負荷を与えれば与えるほど通気性が長時間持続するのだ。腹筋が疲れてきたら背筋、背筋が疲れたら腕立てといった具合にローテーションし限界を突破する。
そうすると、両鼻の穴が通っている間に運動の疲れでいい具合に就寝できるのだ。

画期的な就寝システムを確立した僕は、今でも鼻詰まりの激しい夜に腹筋を繰り返す。そういうわけで体調を崩した後の僕は腹筋が割れている。

20歳を超えると、処置よりも予防のが大事だと気付き出した。

花粉の季節、花粉はまず初めに目に入り込み、目が痒くなる。掻いてしまい、それに触発されて鼻水が止まらなくなる仕組みになっていたのだ。
つまりこれまで厳重にマスクを着用していたのだがそれでは意味がない。僕は変なゴーグルを付ける。メガネ以上シュノーケル未満の見た目の、花粉用の変なゴーグルに3000円も支払って付ける。そして6000円のアレジオンを買う。『こんなに高かったんだから効くに決まっている』という自信が僕を後押しする。結果的にかなり解消した。

それでも詰まる時は詰まる。どうしようもない。

正解はあるのだろうか。

たまに自分の鼻詰まり研究人生を振り返って考える。そもそも解決策などこの世に存在しないのではないか。だとしたら僕がやってきたことは全て無駄なのではないか。

もしくは死んだ後、あの世で人生の攻略本を読みながら答え合わせをする時、裏技コマンド入力法的なのが載っていて、「わー、こうすれば良かっただけか！」ってなるくらい簡単なことなのではないか。

僕はもう既にある程度の人生の時間を鼻詰まり解消法研究に捧げてしまった。その時間を何か別の学習に捧げは、その分野の何者かにはなれそうな勢いで。

今更後戻りはできない。

僕はこれからも鼻詰まり解消法研究者として研究を続ける。諸君たちも何かいい鼻詰まり解消法があればすぐに教えてくれ。