『パワハラ、そして体罰にどう対応していくか?スポーツ庁への取材から』
日体大パワハラ問題そして大阪産業大学体罰負傷の件を取材していて不思議に思ったことがある。
スポーツ庁は何をしているのか?
しかしそこには今の法整備の限界があった。
スポーツ庁はスポーツ界の一連の体罰、パワハラ問題を受けて各競技団体、そして大学に対してスポーツ長官メッセージを6月15日付けで出していた。
今スポーツ庁では『スポーツインテグリティ』を推進している。誠実、真摯、高潔という意味だ。
長官メッセージの内容は
1.アスリートや指導者に対する研修
2.アスリートの相談体制の充実、利活用の促進
3.問題事案に係る公正、迅速な調査と説明責任の履行
4.運動部の安全確保に向けた大学の取組の充実
以上が内容の柱だ。
今回スポーツ庁の大学担当者に約1時間の取材を行った。
非常に真摯に丁寧に取材に応じてくれた。
筆者がパワハラ、体罰取材で感じたことも全てぶつけた。
そこで見えたものをこれから紹介していく。
まず今のスポーツ庁に何か処分を下す権限が無い。
スポーツ庁が出来てまだ3年。
体罰やパワハラが起きた時、それに対する処分を下すための根拠となる法律が無いのだ。
指導を行うことすら出来ずに競技団体が自主的に報告してくることに対してこういう方法もあるのでは?
とアドバイスを送ることしか出来ない。
報告すら義務ではなく大学の自主判断。
スポーツ庁側からすると今回の大阪産業大学の報告は
スポーツ庁長官メッセージの成果と理解している。
ただ大阪産業大学は最初報告先が分からずに文部科学省に問い合わせを入れている。文部科学省からスポーツ庁を紹介された。
この事実からもお互いの認識に少しズレがある。
今回起きた体罰の学生側のケガの程度も大きかったのいち早い報告は適切だったと思う。
何度も言うが報告するかは現状大学の自主判断だ。
全大学の運動部選手にスポーツ庁主導で無記名アンケート調査を実施してみてはどうか?
と提案を行ってみた。
しかし現状だとアンケートを実施させる権限もなく
そのアンケートを回収出来る権限もない。
アンケートの全てがスポーツ庁に提出されない可能性も考えられると担当者。
筆者がパワハラ、体罰問題が起きてから他の大学に取材を行っているが自分のところには火の粉がふり掛かって来ないように必死。
積極的にオープンにしようという姿勢は微塵も感じられない。
担当者の言うことはとても理解出来る。
そしてスポーツ庁はグッドコーチに求められる資質能力についても具体的に触れている。
プレーヤーやスポーツの未来に責任を負う上で幹となる思考、判断を中心に実際のコーチングを適切な方法で表現し良好な関係を築くための態度、行動。
これがグッドコーチに求められる資質能力。
筆者は福島大学陸上部監督川本教授の指導者講習に1年間通ったことがある。
月に日曜日中心に1回つづ。
月に2回の講習がある時もあり計20回程度の講習だった。
午前中は川本教授のコーチング理論に関する講義。
午後は陸上の実技指導。
実技指導には県内で活躍する長距離、跳躍、やり投げといった各種目の第一人者的な高校指導者が日替わりで指導を行っていた。
福島県は陸上王国。
当時田村高校陸上部監督の下重氏もこの講習会の講師を務めていたが目から鱗が落ちる理論を余すところなく披露してくれた。
講習参加者は高校指導者、中学指導者、そしてこの時には福島大学OGで当時日本女子のトップハードラーだった久保倉氏が受講者として参加していた。
実技の時はデモンストレーターてして素晴らしい技術を余すことなく披露してくれた。
福島県が陸上競技のスターを続々と生み出してくるのは指導者を養成するシステムが川本教授を中心に確立されているからだ。
こういった講習会に参加すると暴力など必要ないと実感するし暴力はむしろマイナスにしかならないということを体感する。
指導者を養成する一貫したシステムが今の日本には必要だと思う。
その試みがスポーツ庁主体で始まろうとしている。
日本版NCAA設立だ。
NCAAとは全米大学運動協会のこと。
NCAAは大学のスポーツクラブ間の連絡調整、管理などさまざまな運営支援を行っている。
協会が運営する競技種目はアメフト、バスケ、野球、アイスホッケー、テニス、ゴルフ、陸上競技、アマレスなど。
日本版NCAAの柱は安全なスポーツ競技運営。
コンタクトスポーツ団体には特に積極的に参加を呼び掛けている。
運動部を持つ大学と例えば全日本学生柔道連盟や日本学生陸上競技連合といった競技団体自体も加盟することになる。
現在大学の数は約800。
そのうち運動部を持っている大学はその7割程度。
目標加盟大学数は200程度。
現在までに手を上げているのは120校ほど。
早稲田、明治、法政、東洋、日体大、順天堂、神奈川
城西、国士舘、拓殖など。
日大は残念ながらまだ手を挙げていない。
担当者はこの件に関してはノーコメントだか筆者は日大こそ自主的に参加すべき大学だと思う。
もちろんこの組織は強制的に加盟を強要する団体ではない。
スポーツ庁とは別途の法人格を持たせスポーツ庁関係者は中に入らずあくまで自主的に運営させる予定。
今年中に実施の案をまとめて来春に発足予定。
10月中旬頃に何らかの発表をしたいと担当者。
この設立趣旨を充分理解の上で参加しているということになるので研修などを積極的に実施し将来的には体罰などが起きた時には内部規定で処分出来るような組織にしていければと担当者。
日本版NCAAには期待が持てる。
それと共に国会議員による議員立法で全ての競技団体に適用出来る法整備も必要だと思う。
2020年東京オリンピックが間近に迫って来た。
体罰、パワハラは絶滅させるべき課題。
最後に担当者の心に残ったことばをそのまま紹介する。
『今は選手が声をあげやすい時代になっています。』
指導者一人ひとりが自分自身を振り返ろう。
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