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帯状疱疹になった

 顔面がボコボコに腫れ、痛くてたまらない。殴られたのではない。帯状疱疹である。顔の左半分が赤く腫れ、お岩さんほどではないがお岩さんが夫の計略で毒を盛られたばかりのときくらいの腫れ具合だ。これからもう少しひどくなるらしい。とても困る。

 とにかく文学フリマ福岡のときに出なくてよかったと思う。翌々日さっそく発疹が出ていたから、とてもラッキーだ。帯状疱疹になってラッキーって、何を言ってるんだと思われそうだが、実はそんなに気にしていないのである。ここ二ヶ月ほど、もっと言えば一年ほど本が読めなくてモヤモヤする期間を過ごしたが、それが爆発するときが来たというだけだ。何なら帯状疱疹になってからモヤモヤも減り、本もモリモリ読んでいる。

 職場では、酒田さん顔に帯状疱疹ができたって……可哀想に気にするだろうね……と噂されているようで、どうやら私は見た目を気にする人間だと思われているらしい。確かに化粧は好きだし鏡を見るのも好きだが、帯状疱疹はそこまでひどく気にならない。隠れてもいないが眼鏡で隠せていると思っている程度なので、近々お出かけの日があったら気にすると思うが、案外大丈夫だ。処方された塗り薬のアズノールを塗った頭を、お湯だけで洗ったら頭を洗ってない人みたいになったので、それはやはり気になるかもしれないが。

 ただ痛くて痒くてたまらないのが気になる。皮膚科に通うことになりそうで、更に左目も帯状疱疹の餌食になっているので眼科にも行かなければならなかった。これ以上視力が落ちたら困るし、実際目のあたりに新しく発疹のようなものができているのか、時々メリメリと小さく引き裂かれるような感触がある。それは顔や頭も同様で、前日まではなかった場所にメリメリと発疹が生まれているのを感じる。陣地を増やしていっている発疹は、しかし広がる範囲は決まっているようである。左頭部の目から上くらいの範囲。皮膚科の医師の説明ではそういうことだった。

 これから帯状疱疹としばらく闘うことになる。心配なので周りの人に聞いてみた。母はかなり発疹が広がってから行ったので、長くかかったと言っていた。ひと月くらいかな、と言われたときはゾッとした。職場の五十代ほどの女性は、ああなったなった、点滴打ちましたよ、手から胴体の左半分に発疹が広がって……、二日ほど眠れませんでした、とあっけらかんと言うのでやはり恐ろしかった。若い女性は、大丈夫ですか?、ストレスですよね、あの人も帯状疱疹になってましたよ、と私が苦手だった辞めた人の名前を出してきて、急にその人にシンパシーを感じたりした。帯状疱疹が繋ぐシンパシーの輪。美しい心の連帯だ。
 また、帯状疱疹だと気づいてくれた母には感謝だ。帯状疱疹じゃない?病院行かなくていい?と何度も聞かれるのでしつこいような気がしてヘラヘラとかわしたのはよくなかった。職場の六十代男性に、うちのカミさんも顔に出てたから帯状疱疹だと思う、今から中抜けでいいから皮膚科行ったら?と言われてようやく行ったら、本当に帯状疱疹だったからだ。ちなみにその男性も帯状疱疹経験者だ。帯状疱疹が作る人々の連帯……。みんな経験してるんだなと思った。

 これからしばらく治療が続く。顔の発疹は治ると信じているが(だから見た目は気にしていないのである)、痛みが残らないかが心配だ。
 世の中の帯状疱疹の人々、頑張りましょう。

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