広報、何から手をつけたら良い? のヒント
「兼務で時間がない」、「出せるサービスが少ない」、「社内の理解がない」
そんな状態でも結果は出せる。人事・広報担当として1年が経った今、広報初心者の方がすぐに使える、実績に基づいたノウハウを共有いたします。
1年間の実績( 2018年11月頃~2019年11月 )
- 年間掲載件数:54件
- 新規で関係構築した記者さん:110名
- 掲載媒体:テレビ、ラジオ、漫画、web、雑誌、新聞
この数字がすごいか、ピンとこないですよね。私も分かりませんw
ベンチマークしている企業の露出に比べて2倍ほどなので、そこそこです。
もちろん、掲載量が多いから良し。とは微塵も思っていません。
しかし、広報力で事業を伸ばすことを目指す無名企業は、露出しないと何も始まらないのも事実です。「見え方が違う」など、こだわりすぎるのもいかがなものか。
スタートアップにおける広報担当者にとって、行動しない理由を正当化するのはかなり簡単です。
大切なのはコアメッセージを抑えること。その原則を抑えたら、まずは出していただけることにフォーカスしてもいいと思うのです。
行動目標はどのように作るか
とはいえ、闇雲にアプローチをするのはリソース不足の中ではできません。そこで、行動目標の設定は計画と行動管理の2項目に分けて進めることをおすすめします。
<計画>
対クライアント、求職者、投資家などメッセージを伝えたい方々それぞれに向けて、4つのステップで戦略を立てます。※1
↑スプレットシートなどで項目を作るとわかりやすいです。
ステップ1:大目標を決める
大目標・・・世の中の人からこう思われたいという自社の目指すイメージ
弊社であれば、「建設業界から不透明な情報をなくして、事業者が適切に評価される世界を作る会社」といった大目標を設定します。
大目標は全てのターゲットに共通して伝えたいメッセージになります。
ステップ2:小目標を決める
小目標・・・これを訴求し、世の中に浸透させれば大目標の達成が可能となる認知の形
これは各ターゲット毎に設定します。例えばターゲットをクライアント(建設事業者)とした場合、弊社の小目標は下記の通り。
「旧態依然とした建設業界を大きく変革する革新的なサービス。利用することで自身の事業環境が大きく改善し、成長することができる。」
このような認知が進むことで大目標が達成されると考えます。
ステップ3:PRネタ洗い出し
小目標を達成するために自社のリソースを考慮して打ち出せるPR施策を洗い出します。
例)
1. 新サービスのローンチ
2. 利用者の成功事例
3. 社会問題への訴求
ステップ4:PR活動の内容整理
ステップ3の、PRネタをうけて、何ができるか更に分解する
例)
1. 新サービス提供
a) キャッシュレス決済セミナー
b) 建設業界の与信管理を公認会計士が解説
c) 業界別キャッシュレス決済浸透度調査
2. 利用者の成功事例
a) 商品利用デモンストレーション
b) 利用者インタビュー
c) 導入店舗インタビュー
3. 社会問題への訴求
a) 決済における詐欺被害調査
b) 有識者によるキャッシュレストラブル解説
c) キャッシュレス提供企業代表による対談
ここまで決まれば、あとはどの媒体に情報提供をするのがよいのかリストアップができます。経営陣と話ながら戦略を作っていくことがとても大切です。口頭でいきなり「メッセージは?」と言っても伝わらないため、ある程度表を埋めてから話し合いをするとスムーズでしたよ。
<行動管理>
広報活動は、売上に直結しないケースが多いので、正直やらなくても何もおこらないですよね。そうすると、兼務をしている人は特に採用や営業など、他の業務を優先させがちです。広報就任当初はまさに広報とは名ばかりで、採用ばかりやっていました。。たまにブログ書くくらい。
ではどのようにやりきるのか、私達ローカルワークスではOKRを用いて行動管理をしていました。
OKR・・・「Objectives and Key Results」の略称で、組織が掲げる目標(ゴール)を目指すために、達成目標(Objectives)と主要な成果(Key Results)をリンクさせ、組織・個人の方向性とタスクを明確にする目標管理方法の一つ。※2
↑真ん中に映る、白き光りし者が坂下です。WIn-sessionにて囲まれております。
広報OKRの例
O:建設×フィンテックで想起してもらう
KR:Fintechネタでの掲載 ○件
大切なことは全社員の前で目標をコミットし、毎週進捗を確認する”Win-session” にて成果報告をすること。言い訳がきかない環境を作ってこそ、後回しにせず目標を追えます。OKRの導入が難しければ、Slackなどで勝手にコミットするとかどうでしょう笑
私の場合は、そこからアプローチ必要件数、面談数などKPIに落として走っていました。
※1:『現場の担当者2500人からナマで聞いた広報のお悩み相談室』
※2:https://bizhint.jp/keyword/39402
企画作りにおいて最も大切なこと
計画を立てたら記者さんにアプローチをします。そして、その上で一番大切なのは・・・
媒体の読み手を意識することだと考えます。自社を露出させたいという考えだけでアプローチをすることは、押し売り営業をするダメな営業マンと一緒です。媒体研究、記者さんの研究をして(長くなるので詳細は割愛します)、媒体の読み手にあった企画を提案します。営業経験者の方はお分かりだと思いますが、話すよりも聞く。聞くためには下調べをして仮説を持って質問することが大切ですよね。
よく分からない場合は、やはり、「媒体の読み手を意識すること」にフォーカスするで十分だと思います。
本題に戻ります。企画を作る上で参考にするフレームワークは沢山ありますが、私は下記5つを意識しています。
- 時流:イベント、季節、記念日など(オリンピックイヤーに●●)
- 独自性:業界初、差別化できるもの(日本初の●●)
- 公共・社会性:社会や地域に貢献できる内容(副業でボランディア)
- 意外性:逆説や矛盾(●●なのに●●)
- 数字:データや統計(創業●年、会員●人など)
つまり、
「なぜ今なの」、「なぜあなたなの」、「だれが知りたがっているの」、「なんで知りたいの」
をおさえることによって相手本位の企画が立てやすくなります。
<企画事例>
ローカルワークスペイメントという、後払い決済サービスを例に説明いたします。中小企業庁が出したニュースをきっかけに、リリースを出しました。
- タイトル
GW10連休中の資金繰り悪化の緩和にも寄与
「ローカルワークス後払い」サービス開始から1ヶ月で500社に導入
〜建設業界の中小企業、連休中の急な資材調達も後払いで決済可能に〜
- サービス概要
「与信が足らず、法人クレジットカードが作れなくても掛け払いで資材購入が可能」
独自の審査でローカルワークスが与信を付与、支払い実績を元に最大1000万円の与信を提供、建設資材を掛け払いで購入できる。
これを先程のフレームワークに当てはめると・・・
時流:連休時は資金繰り悪化の傾向にあるため各省庁が窓口を設置
独自性:後払いで資材調達が可能な唯一無二のサービス
公共・社会性:建設業界の8割以上を支える中小零細企業に向けた支援サービスの利用が進んでいる
意外性:10連休なのに資金繰りがスムーズ
数字:1ヶ月足らずで利用者が500社突破
このような形で、サービスをニュースとして企画することが可能になりました。新サービスがない場合でも既存サービスを時流に合わせてどのように出せるか、考えながらニュースを見ていると案外企画が浮かんでくることがあります。
取材を受ける際のポイント~シニア人材が大バズり~
↑週刊漫画TIMES 『解体屋(こわしや)ゲン』第846話 巻頭カラーより
平均年齢30歳の組織に60歳の元大工が入社し活躍中という話がビジネス・インサイダーさんの記事で話題になり、ヤフトピ1位を獲得。多くの反響をいただきました。翌日は電話が鳴り止まず、コーポレートサイトのアクセスは10倍以上、アメーバTVで紹介、TBSラジオ、東京FM、千葉テレビ出演と大フィーバーすることになりました。
間違いなく、記者さんのおかげなのですが、本件も例にもれず記者さんの情報を調べあげ、こちらからアプローチをしたわけです。ちなみに漫画化もこちらからの声がけ。費用は一切お支払いしていないコラボ企画になります。(12月6日にコラボ会最終話が発売予定!!)
さてw、ここでは取材を受ける際のポイントを共有します。
1. どのような記事を書く方なのか書き方の特徴など調べ、コンテンツをある程度予測する
2. 可能なら、想定質問をいただく
3. 同席者は記事さんが欲しい情報を提供できるのは誰だという観点で選定(記者さんと話し合えるとベター)
4. インタビューに同席できなかった人の意見も参考になる場合は頼まれずともヒアリング、資料として別途提出
5. 撮影がある場合でも、使えそうな素材を社内データから探し、まとめてお送りする
6. 原稿を見せていただいた場合は修正をしない(絶対)
あくまで読み手が喜ぶ記事を書いてもらいやすいように何ができるかを考えて情報提供をしていきます。
↑シニア人材が若者と戯れている写真があればいいなと思い、探し出した写真がこちら。
実は社内調整が一番大変?
広報歴1年でよく頑張っていますね、とお声がけいただくこともありますが、何が一番たいへんだったかというと、社内の期待値調整だったと思います。
「それにでる意味、あるんですか」
「はやく○○に掲載されないんですか」
「くそーまじで・・・◎△$♪×¥●&!!」。と何度下唇を噛んだことか笑
まぁ、そういった気持ちを持つのは当然だろうなという冷静な理解もできたので、社内において、広報の位置づけや役割の確認、改めて目的を共有することをしていました。ローカルワークスの場合は前述の通りWin-session にて成果発表や説明機会があったこともあり、最終的にはあたたかく見守ってもらったわけですが、一番はやいのは、結果を出すことに尽きるんですよね。それによって社員みんなで広報企画を考えるなど、巻き込むことが可能になっていくと思います。
広報は手段、やることは山程ある
いろいろと書き連ねましたが、広報担当者としてやっとスタートラインに立てたかどうかという状況だと思っています。激しめのアップをした状態かなw。。とにかく、今後も学びつつ進んでいきたいと思います。
最後に、坂下の考える理想の広報担当者とは・・・(トゥーン)
↑広報を手段として事業成長に寄与する
そのためにはサービス理解はもちろん、競合やマーケット、業界についての知識を深め、広報という手段にこだわらず、その時に事業に必要なことを意識し、行動することが求められると思います。
今まで広報担当として様々な方から指導をいただきました。特にベンチャー広報の野澤代表、広報コミュニティーイフラボ代表の長沼さんにはかなり面倒をみていただいています。誠にありがとうございます。
お教えいただいた内容を忘れず、今後も企業と社会をつなぐ役割を担っていきます。皆さん一緒にがんばりましょー♥
ありがとうございます!!