輪郭

モノに、輪郭は存在するか?

と問うてみます。どうだろう。例えば自分の腕を見て。皮膚やうぶ毛に輪郭は存在するだろうか。無い。皮膚と空気のその境には輪郭という線、そんなものはない。例えば目の前に机とコップがあるとしよう、コップはどこまでもコップではなく、コップは机ではない。しかしその表面に輪郭線を認めることは出来るだろうか。そう、輪郭というものは概念上のものであって、現実には存在しないものなのです。だけどもモノを描く際には輪郭を描きたくなります。それもしっかり説得力のある輪郭を。でもそれは本当は輪郭を見て描いているのではなく、あるモノと他のモノの表面をはしる境界をあえて表現するために輪郭という表現を選んでいるということです。

輪郭は現実には存在しないし、この世界には国境も地平せんもありません。

言葉遊びみたいになってしまいましたが、そう意識することは描く上で大切なことです。紋切型の輪郭線ではなく、表面を、その微細な端々の変化を観察する眼を持つと、そうすると、その小さな狭い狭い面のさらに端っこにも、影と光が織りなす繊細なる美が存在することに気づくことでしょう。これは絵描きの喜び、楽しみの醍醐味でもあるのです。

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