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雲の軍勢-その後

屋久島旅行から一昨日帰り着いた。夏休みが終わる最後の日の夜に帰宅。ギリギリ出社日に間に合った。社内では筆者の噂が広まっており、早々に上司から小言を二つ頂戴したのだった。
今回の旅は最初から最後まで台風と共に行動したと言っても過言ではない。
行きも帰りもあらゆる交通機関が非常事態に混乱したので予定通り目的地に辿り着くかはわからなかった。
そして旅行前にあれだけ胸躍らせた計画、やりたかったサイクリングとキャンプは断念、白谷雲水峡へのトレッキングや屋久杉を見ることは叶わなかった。
そのかわりゲストハウスでひたすら待機し、少ない食糧の心配と停電に耐えるサバイバルが待っていた。
ゲストハウスには筆者以外に二人の青年が宿泊していた。北海道から写真取材の旅に出たデザイナーのTと、中国から日本を旅する謎のC。三人で力を合わせて困難に立ち向かうのだった。奇しくも筆者はキャンプが目的だったので、その道具が役に立った。ガスバーナーである。食糧は台風前日に調達したものや筆者のキャンプ飯を皆んなで分け合ってなんとか凌いだ。断水を免れたのは幸運だったが、雨の量に耐えきらないベランダから雨水が部屋の中に溢れ出す。三人で床掃除を行い、気持ちを奮い立たせる為に歌いお互いの境遇や趣味を語り合った。
北海道から来たTは世界情勢を熱心に語り、中国から来たCは推しの日本人アーティストをカタコトの日本語と英語でこれまた熱心に語り歌う。筆者は自慢気にキャンプ道具でカレーを作る。それぞれの思いやりを持ち寄って楽しい時間を過ごすことができた。台風が過ぎて風もおさまった頃、タイミングを見計らって徒歩で往復5時間のトローキの滝を見に行ったのが唯一の観光だった。台風後の風景、その凄まじさは倒木や雨の轍が物語っていた。そんな屋久島が眩く美しかった。
そうして訪れたトローキの滝、雄大な山から森そして海へと流れる川は増水し激流と化す。轟音で流れる滝の様相にはただただ圧倒された。
台風は過ぎ去り、停電は復旧。交通機関がようやく動き出す。皆帰りに着く。寂しくもあるがお別れの時は来たり、鹿児島市の繁華街でそれぞれの旅路につく。再会を誓い合いながら。

今、日常生活に戻った筆者は思い出に浸る。人生の旅というものは思い通りにいくアテなどどこにもない。ただ、思いを描き行動するのみである。その結果がどうなるかなど考える必要はない。そうして味わった経験と出会い。思い出は代え難い宝物になる。

屋久島また絶対行く。リベンジを誓う。

今回の旅はとても良い旅だった。

追伸:今回の台風で三千年の弥生杉が倒木したと後から知った。いつかまた弥生杉も見に行こうと思う。

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