雲の軍勢
筆者は今、屋久島にいる。とある宿で雲の軍勢を待ち受ける。
遡ること約半月前、夏期休暇にどこかキャンプに行こうと計画し始めたのがきっかけであった。地図アプリを眺めながら何処へ行こうかと思い巡らせていると約30年前、中学校の教科書で見た憧れの縄文杉をふと思い出し、杉の大木の近くで眠るイメージがパッと閃いた。
心は動き出す。朧げな構想から計画は速やかに行動に移り、キャンプ場、飛行機と船が決まり、現地での行動予定が立ち始めると道具のパッキングをアレやこれや前日までこね回したのである。まだ見ぬ屋久島、縄文杉を想像し胸を踊らせた。
そんな矢先、予想だにせず雲の軍勢が遥か遠くマリアナ諸島に立ち現れた。この軍勢は勢力を次第に増して一度西へ向かい、進路を東に進むという。屋久島は直撃する。しかしながら、筆者は諦めない、いやこういう時こそ何故か心が燃える。
そうして今、屋久島にいる。キャンプ場は閉鎖となり全ての登山口も閉鎖。あらゆる交通機関は運行を取り止めた。
この軍勢をは日本に上陸する過去最強クラスであるという。歩みは遅く勢力は拡大するばかりである。
その名はサンサン。
もう少ししたら暴風域に入る。
筆者はただ宿にて眠るのみである。