【Session7】 対話型アート鑑賞と花瓶生けをつくるワークショップ
開催日時:2024年4月
場所:SNAP(奥浅草)
参加者:5名
北欧の絵画の世界に飛び込もう!
奥浅草の交流起点SNAPさんで2回目となるワークショップを開催し、今回もお花屋さんReeFlowのリエさんとご一緒させていただきました。
春らしい陽気(暑いくらい)で、浅草の町も大賑わいだった当日は、5名のお客様にご参加いただきました!
前回(2024年1月)の開催に続き2回目のご参加の方、そして今回初めてご参加くださった方も。
今回は、新宿のSOMPO美術館さんで2024年6月9日まで開催中の「北欧の神秘」展に繋がるように「北欧」の画家による作品を取り上げることにしました。
私も探求するうちに北欧の世界にどっぷりとハマってしまって、いますぐ飛行機を予約し飛び立ちたい、この目で北欧の景色を見てみたいと言う衝動がむくむくと膨らんできました!そんな北欧の世界へ皆さんを誘います!
◎アイスブレイク
今回は2つのアイスブレイクを行いました。
①「北欧」と聞いて、思い浮かぶものを描いてください。(文字でもOK)
② アートカードの中から「自分が友達になるならこの人!」という人を選んで教えてください。
① ではやはり、IKEAやムーミン、マリメッコなどが挙がり、日常生活へ浸透しつつある北欧ブランドの存在感の大きさを感じました。そのほかにも、国名や、国旗からイメージした色、雰囲気などで答えてくださる方もいらっしゃいました。
ちなみに、私は前もって白紙にアナと雪の女王の「エルサ」の絵を描いて用意していましたが、「文字でもいいですよ」と言ったら皆さん、文字になってしまいました…笑
② では、「この人といると金運が上がりそう」「この世の人でない気がするので、この世の人でない人と友達になってみたい」「食べ物の好みが合いそうだから」などなど、想像以上に面白いチョイスが続出し、一気に場が和みました。
今回のアイスブレイクの目的は、
① は、ご自身の持っている知識を引き出す練習をして、その後の対話型鑑賞にも反映してもらえるための準備運動。(北欧と聞いてもピンとこない方もいらっしゃるかと思い、まずはイメージを広げるとことからという感じ)
②は、逆にご自身の内面に意識を向けていただけるような内容にして、他の方に対してオープンなマインドをつくっていただく意図がありました。
◎対話型アート鑑賞
1作品目はアーギュスト・マルムストルム「パイエーケス人の王アルキノオスの前のオデッセウス」を鑑賞
2作品目はエドヴァルト・ムンク「二人、孤独な人たち」を鑑賞。
絵画の中に漂う緊張感を感じ取る
今回のWSでは、「北欧の神秘」展で作品が展示されている画家の作品の中から選定しました。(展覧会で展示されているものとは全く関係のない作品)
「パイエーケス人の王アルキノオスの前のオデュッセウス」は一目見た時からやりたい!という気持ちが抑えられなかった作品です。
なぜかと言うと、描かれている人物ひとりひとりが取り上げられるべき怪しさがあり、この絵について私も一緒に考えたり、みなさんの意見が聞きたかったからです。
鑑賞を進めていく中で、「とても緊張感を感じる場面」と言う発言から、だんだんと絵画の世界に満ちている緊張感が会場にも漂ってくるような雰囲気がありました。
色や形で表現されていない「緊張感」を皆さん、感じ取ることができていました!
新しい鑑賞の手法に挑戦
2作品目のムンクの作品はかなり中上級の作品でしたが、思い切って取り入れてみることにしました。
想像した通りの戸惑いが感じられましたが、みなさん、一生懸命に絵画の中から様々な感情や人物の距離感などを感じ取られていて、平面の絵画の中の奥行きを見出していました。
この作品では私自身、一つの挑戦をしました。
これまでは受講時の教えの通り「作品名や作者の名前は明かさない」というやり方に則ってきたのですが、様々な書籍や勉強会を通して、成人に向けた場合、鑑賞の手助けになる美術史的な知識の提示はあってもよく、より鑑賞が奥深いものになるという意見にも出会いました。
(あいり出版/平野智紀著「鑑賞のファシリテーション」などを参考)
知識の出しどころや何をどのタイミングで提示するかなどはまさに、講師の力量、といったところかと思いますが、鑑賞が一周したろころで、今回は、
・ムンクの作品であること
・タイトルは「二人、孤独な人たち」であること
を伝えました。
すると、ひと段落したように見えた対話がもう一度、その芽を伸ばし始めました。
それは作者やタイトルに引きずられるというものではなく、描かれている人物の関係性をもっと深く掘り下げたり、絵画全体の温度感が「冷」から「温」にゆっくりと変わっていくような対話でした。さらには、絵画に描かれていない第三者(=作者)の視点などにも想像が及ぶ結果となりました。
最少限の情報だけで、さらに対話が深めることができたのかなと思い、今後の鑑賞時にも適切な運用ができるよう勉強していきたいと思いました。
◎実践としてのイメージワーク・「花瓶生け」の制作
今回は、絵画に描かれている花瓶生けをつくるというワークで、リエさんに花瓶生けのレクチャーをお願いいたしました。
まず、題材に取り上げたのはスウェーデン人の女性画家・ファンニ・ブラーテの「命名日のお祝い(ごちそう)」です。テーブルの上に描かれている花瓶の部分を予め付箋で隠しておき、まずは軽めの対話型鑑賞。
「この絵の中の花瓶生けを今日はみなさんにイメージしてつくっていただきます」と言って、この絵お見せした瞬間のみんなさんの「まぁ!」と言うような華やいだ声が忘れられません笑
「やっと明るく美しい絵画を見ることができた!」と思われたかもしれませんね…。前半は重かったので…ふふふ。
作業に入る前に絵画の簡単な解説をしたのですが、ここでは主に日本には馴染みのない「名前の日」と言う習慣についてと、描かれている家具についてのお話をしました。
私自身、このWSに向けて北欧のデザインの勉強を進め、初めて知ることばかりでしたが、今日の北欧家具のデザインに繋がる源流のようなエピソードを知ることができて、とても楽しく、今後もっと勉強してみようと思いました。
さて、ここからはリエさんにバトンタッチ。
リエさんがご用意くださったお花たちはこの日も愛らしく、「この中から6本好きなもを選んで組み合わせる」という、なんとも甘美な苦悩の時間を楽しんでいただきました。
ここでのポイントはやはり、
・自分の好きな花ではなく、絵画の中に描かれている花をイメージして選ぶ
こと。
みなさん今回も、めちゃめちゃ悩まれていました。
いよいよ花瓶に生けていく作業に。
リエさんが花瓶に生けるポイントやテクニック、お花が長持ちする秘訣などを丁寧に教えてくださいました。
みなさんも黙々と花瓶に生けていきます。
リエさんが「お花は愛のかたまり」と仰っていて、本当にそうだなあと思わず並んだ花々に目を向けてしまいました。
りん、だったり、ちょこんだったり、どのお花もそこにあるだけでとにかく可愛い。そう感じている瞬間に、すでにもう、心に愛が宿っているということでしょうか…。(照)
そして、完成した作品をみんなで鑑賞し、開催主のはじめさんの発案で今回はフォトスポットで絵画と並べて写真撮影も行いました。
「絵の中の少女が庭から摘んできた花をイメージしました」
「椅子の上に描かれている花から想像しました」
など、思い思いのストーリーとともにご自身の作品をご紹介くださった皆さん。
見事に北欧の美しい絵画の一部を描き出してくださいました。(拍手)
ここで注目したいのが、絵画には紫のお花が生けてありますが、みなさんが生けた作品は黄色が多いこと。絵画の中の花瓶生けとは全く異なりますが、それでいいんです。
絵画の見方も、お花の生け方も、それぞれが持つイメージもここでは正解も間違いもないから、いいんです。
こうかな?こんな感じかな?と考えること、推測すること、そして、それを実際に創造してみること、最後に自分の推測を言葉にして伝えられることがイメージワークの目的なのです。
(もちろん、対話型鑑賞で養った感覚を生かして、と言う大前提がありすが)
これってPDCAサイクルにも似たところがありますよね。
Plan,Do,Check,Actionという仮説を立てる、実行する、検証する、改善するという循環のことで、物事のマネジメント品質を高めるための概念ですが、ビジネスシーンでも頻繁に活用される力。そしてこれこそが、このWSが企業研修にも生かせる理由の一つだと思っています。
制作後は自分の作品、他の方の作品を撮影して、
「うわぁ、素敵!」「かわいい〜!」「楽しい〜!」
と鑑賞と撮影会の間に拍手もおきたりして、今回もLob(=讃える)というコンセプトを達成できたように思います。
ご記入いただいたアンケートの中には
「人から褒められるのって楽しい。みなさんのセンスに触れられるのも素敵」
という声もありました。褒められるってやっぱり素直に嬉しいですよね。
WSの冒頭に「今日はいいね!と思ったら言葉にして伝えてくださいね」とお伝えしていたので、みんなさんそれぞれに声を掛け合ってくださっていたように思います。ありがとうございます!
制作に使用したお花とIKEAの花瓶はお持ち帰りいただきました。
ご参加された方の感想をご紹介します
【対話型鑑賞のご感想】
「いろいろな見方や想像を聞いて、自分の視野が広がった気分になり楽しかったです」
「参加して頭が活性化されたし、満たされた気持ちになりました。絵画をこんなにじっくり見て思ったっこと、考えたことを口に出して他の人の話にも耳を傾けるのは初めての経験で何より楽しかったです」
「前回と比較して、席が絵から離れていたこともあり、筆のタッチとかではなく、絵としてしっかりと捉えることが出来ました。人の話を聞くのはイメージも変わって楽しいです」
「とにかく、とっても良かったです。自分の感じていること、ものをそのまま口に出すことは日常では抑えられているように振り返ってしまいました。みなさんとともに対話を通して深めていくことはワクワクする思いもあり心のストレスチェックにもなったように思います」
「とても楽しい時間でした」
【イメージワークのご感想】
「同じ絵でもみんな違う花が生けてあり、心の中でみんな違うことがいいんだと深く思いました」
「6本の花で限られているから、その中で絵の中のイメージとバランスも考えながら、いつもなら選ばない花を選んで成立させるのってそれはそれで新しい感覚でした」
「没頭できる時間でした。間違いや正解のない自分で選ぶワクワク感がありました。お花屋さんでパッケージの花束では感じられない豊かな時間でした」
「すごく素敵な絵でイメージするのが幸せな気持ちになりました」
「ずーっと見ていたい絵画作品ということもあったので、生けていく過程もマインドフルにとても心が満たされている時間でした」
【今回のWSはあなたにとってどのような時間でしたか】
「自由な発想で心と頭あをマッサージされたような時間でした。日々は仕事などを含めて正解、合っているかに満ちて絵いるように改めて思い、そこから離れる時間にはぴったりだと思いました」
「自己表現を心地よくできる時間。絵を見て言葉にすることは集中力がとても必要で濃い時間でした」
「現状から離れて自分を知る時間でもありました」
「自分のこり固まった概念を柔軟にしてくれる時間でした」
「お花が大好きなので楽しい時間でした」
今回のSNAPさんでの開催は、2回目ということもあり、私自身んもリラックスして行うことができました。
リエさんとご一緒させてただくことで、アートと花という組み合わせのWSの開催も叶い、お客様にも高い満足度を得ていただけていることに改めて感謝したいと思います。
私がなぜ、アートと花を組み合わせたWSをしているかというのは、HPをご参照いただければと思います。(https://www.newsign1989.com/)
ものすごく余談なのですが、通勤で北千住駅を利用していたとき、日比谷線の下りホームから改札階にエスカレーターで降りてくると、ちょうど、目の前に駅ナカの花屋さんがありまりた。いつも季節の花たちが仕事帰りの私を出迎えてくれているような、そんな気がして、そこにあるだけ、そこにいるだけでこんなにも心を満たしてくれるお花って素晴らしい存在だなあと感じていました。きっと、私以外にも、エスカレーターの足元から徐々に姿を現す花屋さんに癒されていた人も多いのではないでしょうか。
リエさんが「お花は愛のかたまりです」と仰っていたのを聞き、私の脳裏にはあの北千住のエスカレーターから徐々に見えてくる花屋さんが映し出され、あぁ、あの頃は確かに毎日、花たちから労いの愛をもらっていた気がするなぁと(クタクタだった体の感覚と共に)回顧してしまいました。
また別の話になりますが、今年の2月、3月、4月は充電期間を過ごさせてもらいました。その期間、規模に関わらず、展覧会や書籍などを通して、たくさんのアートに触れたのですが、抽象的なものに癒される日もあれば、具象的なものに心惹かれる日もありました。
その時に、「心のままに生きるということはこういうことか」とスッと腑に落ちる瞬間に出会ったのです。
一貫性を持って好きなスタイルを貫くのも素敵ですが、その日、その時々に感じた感覚を大切にすると好みの幅もぐんと広がるんですね。
もしかすると、もうすでに、「心のままに生きる」感覚を会得済みの方も多いかもしれませんが、私にとってはまた一つWSに向かう自分自身の生き方の軸のようなものが補強されたような気がしました。
長くなりましたが、今回のWSでは自分が充電期間に得たパワーを皆さんに贈ることができた気がしていますが、やっぱり、ご参加くださった方からもらうパワーの方が大きくて頭が上がりません。
開催主のはじめさんからも「話の内容も話し方も前回からまたすごく良くなったよ」と言っていただきましたし、参加された方からも「このWS本当に楽しいですね!」と声をかけていただけて、平たく言いますと、生きる喜びのようなものを感じることができた一日でした。
次回もまた、華やかな歓声が上がるような企画を実現できるよう、精進して参ります。
*SNAPさんの詳細はこちらから
https://q-b.co.jp/blog/2022/12/1544.html
*ReeFlowさんの詳細はこちらから
https://www.instagram.com/reeflow33/?hl=ja
Vol,8に続く