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洗礼者ヨハネ誕生の予告はどこで起こった?【新約聖書を旅する】

【記事の概要】
・本連載では新約聖書の出来事が起こったとされる、具体的な場所を紹介していきます。

・今回は洗礼者ヨハネの誕生を予告した、ザカリアへの天使の出現です。(ルカ1:5-20)

・ザカリアへの天使の出現は、エルサレム神殿の中で起こりました。神殿はその後破壊され、現在そこには岩のドームが建っています。

①イントロ

新約聖書には、主イエスの誕生や復活など、様々な出来事が記されています。それらは、どこで起こったのでしょうか?

もちろん、聖書には具体的な場所が記されていないことがほとんどですが、カトリックや正教会などの伝統では、「ここがその場所だ!」という場所が存在します。

それらが歴史的に正確な場所なのかは分かりませんが、一体どんな場所だったのか、ある程度のイメージが掴めることは間違いないでしょう。

そこでこのシリーズでは、新約聖書の出来事が起こったとされる地を、時系列で紹介していきたいと思います。

②ザカリアへの天使の出現(洗礼者ヨハネ誕生の予告)

新約聖書の物語は、マタイ福音書ではイエスの系図に始まり、イエスの誕生へと続きますが、他の3福音書(マルコ、ルカ、ヨハネ)では、洗礼者ヨハネの話から始まります。

今回は、イエスに先立って現れた洗礼者ヨハネの誕生の予告について話します。

洗礼名ヨハネの父はザカリア、母はエリザベトといいます。母エリザベトは聖母マリアのいとこで、父ザカリアは、エルサレムの神殿で仕えるユダヤの祭司です。

ある日、ザカリアが神殿の聖所に入り、香を焚いている時に、天使ガブリエルが現れます。天使はザカリアに、妻エリザベトが男の子を産むことを告げ、その子にヨハネと名付けるよう命じます。

参考までに、本記事の末尾に聖書の該当箇所を引用しています。(ルカ1:5-20)

「ザカリアへの天使の出現」
(ドメニコ・ギルランダイオ画)
*真ん中右がザカリア、真ん中左が天使ガブリエルです。

③エルサレム神殿/岩のドーム

この出来事が起こったエルサレム神殿は、現在、東エルサレムの岩のドームがある場所です。
なお今回は単なる「伝承の地」ではなく、天使による予告が行われたのは確実にこの場所です。

かつて神殿が立ち、今は岩のドームが立つその丘は、「神殿の丘」とよばれています。

以下が岩のドームのGoogleマップです。
左下の正方形の写真部分をタップすると、空撮写真に切り替えることができます。また、右下の➕➖をタップすると、倍率を変えることができます。


ストリートビューで体感してみましょう。

かつて神殿があったエルサレムという街は、縦に長いイスラエルのちょうど真ん中くらいにあり、内陸に位置しています。

上のGoogleマップの倍率を下げていくと、イスラエル全体が見えると思います。

黄土色が現在のイスラエル国(緑はパレスチナ自治区)


エルサレムの神殿は、二度建設され、二度破壊されています。

まずソロモン王第一神殿を建設しましたが(列王記上5:15-6:38)、バビロン捕囚の際にバビロニアにより破壊されてしまいました。(列王記下25:8-17)

捕囚が終わり、イスラエルの民がイスラエルに戻ったのち、ダビデ王家直系の血を引くゼルバベルという人物の指導により、第二神殿の建設が行われました。(エズラ記3-6章)

さらに、ヘロデ王により数十年にわたる第二神殿の大改築が行われました。ヘロデ王による改築後の第二神殿は、ヘロデ神殿とも呼ばれます。

イエスが生きた時代は、この第二神殿をヘロデ王が大改築している時期にあたります。そのため、ザカリアが祭司を務めていたのは、改築中のヘロデ神殿です。

第二神殿の模型(イスラエル博物館)

そしてイエスが昇天してから40年弱が経った西暦70年、ユダヤの民がローマ帝国と戦ったユダヤ戦争において、ヘロデに改築された第二神殿(ヘロデ神殿)は、破壊されます。

その後、神殿は再建はなされていません。7世紀になるとムスリムによってエルサレム神殿があった場所(神殿の丘)に、岩のドームが建立されました。これが、現在まで残っています。

神殿の丘に立つ岩のドーム


エルサレム神殿については、改めて記事を書きたいと思います。

最後に、参考聖書箇所を引用して終わります。

次回は、聖母マリアへの受胎告知を扱いたいと思います。


④参考聖書箇所

ルカ福音書1:5-20

ユダヤの王ヘロデの時代、アビヤ組の祭司にザカリアという人がいた。

その妻はアロン家の娘の一人で、名をエリサベトといった。

二人とも神の前に正しい人で、主の掟と定めをすべて守り、非のうちどころがなかった。 しかし、エリサベトは不妊の女だったので、彼らには、子供がなく、二人とも既に年をとっていた。

さて、ザカリアは自分の組が当番で、神の御前で祭司の務めをしていたとき、 祭司職のしきたりによってくじを引いたところ、主の聖所に入って香をたくことになった。 香をたいている間、大勢の民衆が皆外で祈っていた。

すると、主の天使が現れ、香壇の右に立った。 ザカリアはそれを見て不安になり、恐怖の念に襲われた。

天使は言った。
「恐れることはない。ザカリア、あなたの願いは聞き入れられた。あなたの妻エリサベトは男の子を産む。その子をヨハネと名付けなさい。 その子はあなたにとって喜びとなり、楽しみとなる。多くの人もその誕生を喜ぶ。 彼は主の御前に偉大な人になり、ぶどう酒や強い酒を飲まず、既に母の胎にいるときから聖霊に満たされていて、 イスラエルの多くの子らをその神である主のもとに立ち帰らせる。 彼はエリヤの霊と力で主に先立って行き、父の心を子に向けさせ、逆らう者に正しい人の分別を持たせて、準備のできた民を主のために用意する。」

そこで、ザカリアは天使に言った。
「何によって、わたしはそれを知ることができるのでしょうか。わたしは老人ですし、妻も年をとっています。」

天使は答えた。
わたしはガブリエル、神の前に立つ者。あなたに話しかけて、この喜ばしい知らせを伝えるために遣わされたのである。 あなたは口が利けなくなり、この事の起こる日まで話すことができなくなる。時が来れば実現するわたしの言葉を信じなかったからである。」

ルカ福音書1:5-20

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