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四旬節、受難節、レントの違い

2024年は、2月14日の今日からレント(四旬節)が始まりました。

レント、四旬節、受難節などの言葉を見聞きしますが、これらに意味の違いはあるのでしょうか。

結論は、
「レント(Lent)」=「四旬節」です。

一方「受難節」は、文脈によって意味が変わります。日本のプロテスタントでは「受難節=四旬節=レント」で、同じものを指します。

一方カトリックでは旧来、四旬節の後半にあたる、復活祭前の2週間を指すPassiontide(英語)という期間があり、日本のカトリックでは「御受難節」と訳されます。このカトリックの文脈で、「御」を除き「受難節」と呼ばれることも稀にあります。


四旬節(レント)とは?


四旬節(レント)とは、主イエスの復活を記念する復活祭(英語でイースター)の46日前から1日前までの、46日間の期間のことです。

旬とは日本語で10日を指します。1ヶ月は約30日ですが、月の上旬・中旬•下旬と言うのもこのためです。

そのため「四旬」とは40日のことを指すのですが、レントの場合、日曜日を除いてカウントして40日となっているため、日曜日を含めると46日となります。(下記表の右端列の日曜日には、赤字の数字が振られていない)

日曜日以外の赤字が40日間。日曜を足して46日

「レント(Lent)」という言葉を、日本のカトリック教会やプロテスタント教会では「四旬節」と和訳しています。

なおレント(Lent)は英語であって、英米に強く影響を受けた日本のプロテスタントでは「レント」とも呼びますが、日本のカトリックでは「レント」とはあまり呼ばず、基本的に「四旬節」と呼びます。

ちなみにラテン語でレントは「Quadragesima」(クアドラゲシマ)と呼びます。

日本のカトリックでは「四旬節」とだけ呼ぶ


日本のプロテスタントでは「レント」=「四旬節」=「受難節」

一方日本のプロテスタント教会(日本基督教団等)では、「レント(Lent)」の和訳として「四旬節」の他に「受難節」とも訳しています。したがって、日本のプロテスタント教会では「レント」=「四旬節」=「受難節」です。

日本のプロテスタントでは、四旬節=受難節であり、レント(英語)とも呼ぶ

カトリックの「Passiontide」=「御受難節」

先に述べた通り日本のカトリック教会では、英語で言う「Lent」は「四旬節」と訳すものであって「受難節」という訳語は使用しません。カトリックには旧来、「受難節」と訳される別の概念があるからです。

カトリックでは「レント」とは別にPassiontide(英語)という概念があります。四旬節の第五主日から、復活祭の前日の聖土曜日までの2週間を指します。Passiontideは直訳すると「受難節」となります。

ピンクの枠線の14日間がPassiontide(御受難節)

このPassiontideの和訳として「御受難節」という語が当てられます。

『キリスト教百科事典』(小林珍雄編, 1960)※編者は上智理事

この期間中は教会堂内の(磔刑像のついた)十字架や聖像を紫の布で覆います。これにより、復活祭への期待、切望を高めます。

紫の布で覆われた十字架


またカトリック外の一般的な記述では、このカトリックにおける「御受難節」の御を取り「受難節」とも呼ばれます。

姿を消した「御受難節」

ただし、この復活祭前の2週間を指す「御受難節」(英 Passiontide)という語は、カトリックにおいても第二次バチカン公会議後の1969年の典礼暦改定以後、典礼暦からは消え、公式には用いられるなくなりました。

一方で聖公会やルター派など一部、その他カトリックにおいても伝統志向の教会では今も用いられています。

日本のカトリック教会内でも、第二バチカン公会議以前の形式の「伝統ミサ」(トリエントミサ)を立てているUna Voce Japan(ウナ ヴォーチェ ジャパン)で若干「御受難節」という言葉に触れているようです。( http://uvj.jp/wp-content/uploads/ee37901352681465f4a67ad32361862c.pdf )

またカトリック教会と微妙な関係にある聖ピオ十世会も伝統ミサ(聖伝のミサと呼ぶ)を固守しているため、「御受難節」を守っているようです。同団体についてはカトリック東京大司教区の公示を参照。
( https://tokyo.catholic.jp/info/diocese/40194/ )

ではなんと呼ぶか?「受難節」はプロテスタント用語。エキュメニカルな文脈では「四旬節」

レントのことを、なんと呼ぶのが相応しいのでしょうか。
英語のLentは、古英語に由来し、「春の季節」と言った意味です。

一方ラテン語ではQuadragesima(クアンドラゲシマ)と言い、これは「40番目」を意味します。「復活祭から40番目の週日(日曜を除く)から始まる期間」としてレントを示しています。ラテン語の他、ギリシャ語、フランス語、スペイン語などでも40、40番目と言った意味の言葉が用いられています。

この40日という数字は、直接に受難と関係があるわけではなく、主イエスが人々に教えを説き始める前、荒野において悪魔に40日間試みられたことに由来しています。

さて、イエスは聖霊に満ちて、ヨルダン川からお帰りになった。そして、荒れ野の中を“霊”によって引き回され、 四十日間、悪魔から誘惑を受けられた。その間、何も食べず、その期間が終わると空腹を覚えられた。

ルカによる福音書‬ ‭4‬:‭1‬-‭2‬ 新共同訳‬

その意味では、十日を意味する旬を用いた「四旬節」という語は、ラテン語を正しく反映しており直訳に近いと言えます。

一方、「受難節」という翻訳は、主イエスの受難・復活というレントの趣旨汲み取った用語だと言えるでしょう。翻訳とは言えないかもしれませんが。

おそらく日本のプロテスタント社会でレントを「受難節」と訳した際に、カトリックにおけるPassiontide=(御)受難節についてあまり知られておらず、両者の意味が干渉してしまうことについて自覚的ではなかったのではないか思います。

「受難節」という訳も、主の受難をイメージしやすく日本社会での伝統ある訳語として定着しており良い言葉だと思いますが、やはりプロテスタント用語法と言えると思います。

カトリックも含めたエキュメニカルな文脈の中では、「四旬節」という訳語がより適切かもしれません。

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