"白系"の名盤を思いつくまま紹介してみる
現代ヴィジュアル系シーンには、もはやあって当然のものになっているサブジャンル。
年代ごとの切り口で名盤を紹介する記事は最近見かけるが、サブジャンルごとの切り口ではあまり見かけないな、と思ってやってみようかと。
第一弾は、"白系"。
サブジャンルの中でも、"黒系"とともに最古のものになるのではなかろうか。
黒系と白系が、コテコテ系とソフビ系に再編成されていく過程で、ソフビ系=白系といった解釈論が強まった時期もあるが、個人的にはコテコテ系の白系バンドも存在する、むしろ多いと考える派。
ここでは、①幻想的な世界観、②透明感あるいは神秘性のあるサウンド、③メロディアスな歌モノが中心の作品と定義づけるが、このバンドは白系ではない、このバンドも白系に入れるべきだという個々の解釈を否定する意図はないのでご理解を。
Tierra / L'Arc~en~Ciel
白系の名盤と言って、これを出さないわけにはいかないので、真っ先に出しておこう。
言わずと知れた、L'Arc~en~Cielのメジャー1stアルバム。
インディーズ時代の「DUNE」も同様に白系の名盤なのだが、それをメジャーのクオリティで更にブラッシュアップ。
あまり長々と解説しても無粋なので、まずは聴いてほしい。
これ1枚で、白系バンドっていうのはこんな感じ、という肌触りは伝わるのだと思う。
SINCE / Blüe
白系とソフビ系の境界が曖昧になっていったのは、誤解を恐れずに言えば、Kreisレーベルのバンドたちがシーンの中で躍動したからであろう。
D≒SIRE、Ray、Izeと、音楽性としては白系的な世界観を踏襲しながら、関西を中心としたソフト・ヴィジュアル系ブームの立役者になるバンドたち。
そのひとつであったBlüeも、後期は骨太なハードロックを志向し、名実ともにソフト・ヴィジュアル系へシフトしていくのだが、メジャー1stアルバムである「SINCE」は、紛うことなき白系の系譜。
鍵盤を多用して透明度を高めたサウンドと、キャッチーなメロディとの相性が良く、白系を大衆性まで押し上げた名盤であると断言したい。
philosophy / AURORA
今回紹介する作品群の中で、唯一のシングル作品となるのは、AURORAの1stシングル。
彼らは、残した作品が少なく、言ってしまえばマイナーバンドの領域なのだが、アートワーク、楽曲、世界観、すべてに白さを感じさせる徹底っぷりにより、今もなおコアなリスナーの中で高い評価を得ている。
多くの白系バンドがL'Arc ~en ~Cielからの影響を強く受けている中で、彼らの場合は、LUNA SEAの直系サウンドにより、これほどの白さを表現しているというのも興味深いポイント。
たらればにはなってしまうが、アルバムを残してほしかった。
Sphire-Croid / Rentrer en Soi
2005年にリリースされたRentrer en Soiの1stフルアルバム。
結成当初はプロデューサーであった紫さんの影響か、BAISERのフォロワー的なスタイルだったのだが、この作品の前後で、どっぷりと神秘的な世界観に浸り込ませるサウンドワークを身に着けた印象。
アート性も高まっており、白系の話題になると必ずといっていいほど語られるマストアイテムである。
後期はハードなサウンドに傾向していくので、"白系バンドのRentrer en Soi"だった期間はそこまで長くないだけに、この作品が語り継がれることが、その衝撃の大きさを物語っているのかと。
pomander / amber gris
楽曲単体で白系っぽさを出してくるバンドはいても、それに特化したバンドとなれば絶滅寸前となっていたイチゼロ年代において、突如として登場したamber grisの1stフルアルバム。
牧歌的で異国情緒漂う世界観と、それをバンドサウンドのみで表現するテクニカルな演奏は、聴く者をファンタジーの世界に誘ってしまう。
La'cryma Christiを彷彿とさせるアレンジセンスも、彼らが支持を得たひとつの要因なのだが、ここにきてオリジナリティを高めてきた感もあり。
彼らがこの作品をリリースしたことで、"白系"というサブジャンルの価値は再認識されたと言えるのでは。
幻想世界地図 / #ロストワールド
2015年にリリースされた、#ロストワールドの0thミニアルバム。
キラキラ系が主流であったシーンにおいて、ある程度の流行は踏襲しながらも、メロディに重点を置いて白系サウンドのヴァージョンアップを図っていたのが彼ら。
幻想的な世界観を様々なアプローチで表現していく中で、必ずしもセオリー通りではない部分もあるのだけれど、逆に言えば、彼らがブレイクスルーになった可能性は十分にあったのかと。
その意味では、白を基調にしたアートワークをアイコンとすることで、音楽性の幅が多少あっても、迷わずに白系バンドであると断言出来たのは良かった点。
PUER ET PUELLA / BAROQUE
令和における白系の名盤。
お洒落系の祖とも呼ばれたBAROQUEが、まさかここまで浮かび上がるほどに幻想的なサウンドワークに行き着くなんて。
当然ながらモダンなアレンジもあって、古き良き白系サウンドとは一致しない部分もあるのだけれど、スタンスとしては確実に白系の系譜の上に乗っかってくる1枚。
純粋無垢な好奇心が、どこまでも壮大に広がっていく。
この作品を聴いて思うのは、白系サウンドの果てにあるのは、永遠の少年性だったりするのかな、と。
解釈が分かれる作品も含めて、もっと紹介したい名盤はあるのだけれど、7枚ぐらいがちょうどよいかと思うので、とりあえずはこの辺で。
爆発的に流行したジャンルではない分、定期的に良作が生まれているのが、このサブジャンルの特徴なのかな。
歴史を押さえる意味で、ベタなところをなぞっていくのか、知る人ぞ知る、隠れた名盤を発掘するのか、という点については、どちらかと言えば前者寄りにさせていただいた。
マニアックな名盤紹介は、またどこか別の機会で。