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【ライブレポ】びじゅなびPRESENTS 20周年記念主催「Mixed Candies」2022.9.9

渋谷WOMBで開催された、びじゅなびの20周年イベントに行ってきた。
残念ながら戮さんがコロナウイルス感染の影響により出演キャンセルとなったものの、それでも7バンドが登場。
休みなしでの長丁場、体力的にはしんどいのだが、こういう疲れも久しぶり。
ようやくライブが日常の中に帰ってきつつあるのかな、という感慨深さもあったかな。

普段はバンドでのライブイベントをやっていないハコだからか、導線だったり転換の遅さだったりに難はあり、オープンが突然30分遅延。
最終的には1時間以上進行が押す状況になったが、幕間にMCが入ることで、見る側のストレス軽減にはなっていたのでは。


MC:庄村聡泰(ex-[Alexandros])


[Alexandros]を勇退以降、その多趣味さを武器にマルチな活躍を見せている彼であるが、まさかびじゅなび主催のMCまでこなしてしまうとは。
この日は、転換中、次のバンドのセッティングが終わるまで台本なしで喋り続けるという無茶振りに近い役回り。
スタート時は完全にアウェイの空気で、どうやって客を掴むのかに試行錯誤していた印象だったけれど、演奏後のメンバーを呼んでのクロストーク形式に活路を見出し、面白いエピソードを引き出しては、イベントが押している中で十分な告知が出来なかった演者側の救済措置にもなっていたのかと。
ミュージシャンであり、生粋のギャ男でもあるという立ち位置からのコメントは、純粋に興味深かったな。
トークの内容的には、この日の客層よりも、同世代のギャ男に受けそうな話題が多かった気はするので、その辺のチューニングが出来てくれば、団長からこのポジションを奪う日も近いかも。(「それは俺の仕事だろ」と団長に言われたとのこと。)


DazzlingBAD(OA)


オープニングアクト枠ではあったけれど、出演キャンセルが出た関係もあってか、演奏時間は相応に与えられていたような。
重低音をバキバキに効かせた楽曲を多めに、攻めの姿勢を貫いた印象。
Vo.-iT-の中性的な歌声を活かす楽曲も聴きたかった気もするが、初見にインパクトを残す観点では、呪術的な世界観を、激しいアグレッションとともに叩きつけたこの日のステージは正解だったのだろう。
真っ黒でおぞましい狂気が、一方的な暴力性をもってぶつけられる勢い。
クリーントーンの歌声が演奏に埋もれ気味だったのがもったいないものの、爆発を予感させるポテンシャルは十分に感じさせていた。


ビバラッシュ


とにかくVo.るいまるのコミュ強っぷりが際立ったライブとなったが、あれだけ派手なパフォーマンスを展開しながら、まったくブレない歌声があってこそ、ビバラッシュがバンドとして成立しているのだろう。
見ているだけでも、キレのあるトークと、安定した歌声が楽しめる。
そこに、棘のある言葉を使わずにオーディエンスを巻き込む求心力まで備わっていて、イベントに出てきたら強すぎるバンドだな、と。
それでも、全員が参加せざるを得ないしゃがみこんでのフリを(MUCCの「蘭鋳」を思い出していただければ)、短時間に3回も詰め込んできたときには殴ってやろうかとも思ったが、その心理を読み取って笑いに変える瞬間のセンスも含めて、彼らの圧勝。
足の限界が来る前の、はやめの出順で良かったというのはあるのかも。


LIPHLICH


新体制になってからは、はじめて見たLIPHLICH。
現在敢行している連続リリース作品からの楽曲中心のセットリストだったこともあり、だいぶ様変わりしたようにも見えるのだが、シアトリカルなVo.久我新悟のステージングであったり、ギターヒーローとしてのスタンスを崩さないGt.新井崇之の躍動感であったりと、これまでに慣れ親しんできたLIPHLICHだ、と実家に帰ってきたようにも感じてしまうから不思議である。
特に良かったのが「サキュベイダー」。
劇中劇とも言える芝居じみた演出がいちいちハマっていて、彼らにしか出せないシネマチックな味わいを存分に発揮していた。
定番「MANIC PIXIE」でのカタルシスも最高で、ついでに言うと、その後のMCでの庄村聡泰&小林孝聡でのドラム談義も見ごたえ、聞きごたえ抜群であった。


ZOMBIE


この日のベストアクトを決めなくてはいけないとしたら、個人的にはZOMBIEを推したい。
同期が流れないというトラブルが発生するも、オーディエンスを不安にさせない対応力を見せつけたうえ、1曲削らなくてはいけなくなった分を、その後のパフォーマンスにすべてぶつける圧巻のステージであった。
ただでさえ、十字架に見立てたマイクスタンドに、ゾンビを模したフリなど、見た目でのインパクトは大きいバンド。
それに、スイッチがぶっ壊れたのかと思うほどの鬼気迫る熱量を上乗せしているのだから、ちょっとやそっとでひっくり返せない強固なダイナミズムを生んでいた。
このテンションで、やむなくカットされたもう1曲も聴きたかった、という想いはあるが、トラブルなかりせば、この反骨精神は生まれなかったかもしれないと思うことにする。


DuelJewel


Vo.隼人がコロナウイルス感染により出演できないという事態に、楽器隊のみで登場したDuelJewel。
しかし、そこは百戦錬磨と言うべきキャリアを見せつけた形で、Ba.Natsukiをフロントに据えて攻撃的なセットリストを構成。
メインヴォーカルは同期となったが、当然、楽器隊によるシャウトでの掛け合いは生声になるわけで、むしろこちらがメインでは、と思えるほどの迫力でオーディエンスを惹きつけていた。
途中、Gt.祐弥のシールドに不調があり、付け替えを行うことになったものの、祐弥本人も含めて演奏を止めず、スタッフが修復している間も何事もなかったかのように弾き続ける姿に感じるプロ意識。
曲が終わっても修復が完了していなかったので、さすがに一息つくだろうなと思ったら、そのまま次の曲に突き進んでいくのだもの。
フルメンバーでなかったのは素直に残念ではあるものの、これはこれで凄いものを見たな、というステージだった。


Ashmaze.


時間が押して、本番に集中のピークを持ってこれなかったといったところか、序盤はフラストレーションをライブで発散させたいという気持ちが先走っていたものの、歌モノである「他人事」で演奏に向き合ったことで、良い具合に仕上がった感が。
魅せるアプローチに入れば、Gt.詩結、Ba.Яyuの"ファイナルファンタジー"コンビの華やかさはやはり群を抜いているし、攻撃性を重視する際は、Dr.S1TKとGt.諒のキレのあるアクションが武器になっている。
そして、Vo.双真の等身大(ラバーソウルは履いているけれど)のステージングは、一度ゾーンに入れば手が付けられないほどの表現力を生んでいて、この"当たれば大きい"感覚こそ、ロックスターの資質と言えるのかもしれないな。
メンタルがコントロールできるようになるまで場数を踏めば、とまとめたいところだけれど、この危うさも魅力。
確変が起こったときの破壊力は物凄いだろうな、と才能爆発の片鱗はうかがうことができた。


グラビティ


そのコンセプトや打ち出す企画から、わちゃわちゃわいわい、"全員で盛り上がろうぜ"的なスタンスで攻めるのかと想像していたのだが、予想に反して、ステージとフロアの間に明確な線引きをした立ち振る舞いをしていて、なんだよ、格好良いじゃないか、と。
Vo.六は、笑顔はあまり作らず、飄々と煽動。
もちろん、歌詞やフリにはコミカルな部分もあるし、会場全体で盛り上がろうというアプローチもあるのだけれど、あくまで楽曲における表現の手法と割り切っているようにも見えるほど。
表現者タイプのヴォーカリストが、お洒落系の系譜とも言えるフィールドを主戦場にしていると考えると、なかなか斬新で面白い試みなのでは。
ラストに1曲追加したのは、時間が押していたことを踏まえれば、本来はアンコールで演奏するはずだったものだろう。
ここからアンコールということで、と正直に伝えるバンドも多い中、「あまりに楽しかったからもう1曲だけ」と言い換えてサプライズ感を演出していたのも、さりげないけれど気が利いていた。


タイムテーブルを公表している以上、その前提で予定を組んできているファンもいるはずで、オープンの時点で当初の進行計画から大幅に遅延となり、それが原因で出演者のパフォーマンスにも影響を与えていたとなれば、運営面での反省点は多々あったイベントだろう。
とはいえ、シーンのプラットフォーム的な役割で20年間、重要なインフラとして機能してきたびじゅなびの功績は言うまでもなく、その看板の元で大きなイベントが開催できたというのは、ヴィジュアル系にとって明るい話題になっていたのも事実。
続かなければせっかくのノウハウも失われてしまうわけで、出演バンドの質の良さや、MCを置いて幕間で退屈させない工夫など、踏襲すべきところは踏襲し、反省すべきところは反省して、30年、40年と、これからもヴィジュアル系愛を繋ぐイベントを開催していってほしいな、と切に願うのである。


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