転職エージェントの、功罪。
転職活動をすべてサポートしますよ。
こんな謳い文句で登録を誘う、転職エージェント。かくいう僕も、かつては転職エージェントで「コンサルタント」を務めていた一人。”すべてサポート”、は言い過ぎだとしても、企業の紹介から面接の調整、年収交渉まで、結構なサポートをしてくれるのは、事実だ。
こうしたサポートは、「功罪」でいうところの「功」。一方で転職エージェントの「罪」はというと、紹介される会社はあくまでスキルマッチング、ということ。
たとえば「連結会計を3年やっているなら、この仕事」「法人営業をしているならこの求人」といった形で、僕もそうだったけど、転職エージェントのコンサルタントはまるで機械的作業のようにマッチングをおこなっていく。(実際、専用のシステムで仕事を探していく)
そもそも中途採用はスキルマッチングが基本だろ、という声はその通りだし、第二新卒と呼ばれる”ポテンシャル採用“でもない限り、自分のスキルと相手が求めるスキルが一致して、はじめて相思相愛、つまり内定が出るのは確かだ。
でもここで注意したいのは、マインドマッチングの視点が抜けてる、ということ。「カルチャーマッチング」とも呼ばれるけど、応募を考えてる会社と自分の相性、そして任せられる仕事との相性を考えるのは、ホント大切。でも、マジで忘れがち。転職界隈では「会社との相性もチェックしましょう!」と声高に叫ばれているけど、いざ転職活動という名の荒波に揉まれると、遠くでかすかに鳴り響いている警告のひとつ、になってしまうようだ。
と言いつつ、僕もそうした警告を忘れていた一人。1回目の転職で入った会社は、内向的な僕とは正反対ともいうべき、いわゆるイケイケな会社だったけど、そんな雰囲気なんて気にせず入社した、20代後半の冬 ―― 。結局は1年絶たずにストレスで倒れ、その場を後にしたわけだけど、当時はマインドマッチングなんて考えてもみなかった。いや、「雰囲気との相性って大事だよな」と薄々感じてたかもしれないけど、当時使っていた転職エージェントの人から「坂本さんならこの会社も挑戦できますよ!」といった言葉に乗せられ、いい気になっていたのかもしれない。うん、なっていた。
僕自身、転職エージェントにお世話になったし、実際に転職者をサポートしていた立場から言っても、(手前味噌?かもしれないが)転職エージェントは優良なサービスだ。市場価値とか、その業界の動向なども分かったりするので、無料ってことを考えても、使うメリットは十分ある。
一方で、スキルマッチングの精度がいかに高かったとしても、そもそもその職場・環境に自分が向いてなかったら、にんげん、いとも簡単に倒れる。だからこそ、転職エージェントのコンサルタントがあまり伝えてくれないマインドマッチング(カルチャーマッチング)を、自分で確かめていくことは大切だ。
転職エージェントに多少なりとも務めていた者の“老婆心”として、この警告が多くの人に届くことを、願うーー。