伊藤若冲はなぜ病葉(わくらば)を描いたのか?
伊藤若冲は自分の作品の中に植物を描く際には、必ずと言ってよいほど『病葉(わくらば)』を描いています。
そもそも病葉(わくらば)とは?
病葉は文字通り、病気や虫の為に変色したり穴が空いた葉のことです。
伊藤若冲の絵は空想画あり「奇想の絵師」とも言われていますが、自然の摂理(自然の本質)は見事に描いています。
彼の作品は「自然賛美」であり、自然への畏敬の念の表れです。
自然界の生きとし生けるもの全てを愛しく思っている彼の目に映る世界は、美しく驚きと感動に満ちていたのだと、彼の絵を見ればわかります。
本阿弥光悦の下の言葉が、若冲の心情を物語っています。
「心が凝り固まっていては見えないものも、力を抜いて素直に見ると、いろんな顔が現れてくるだろう。心を開いて受け止めるなら、この世のすべては美しくてもともと」
一部の人間やAIがいう「完璧な美」は自然界における「完璧な美」とは対極にあるのです。
自然界における完璧な美とは、
「不規則、不揃い、奇形、破調、ゆらぎ、うつろい」これらが見事なまでのバランスを保つ美しさを言うのです。
先の記事にも挙げた「へちもん」も偶然の産物のことです。
歪み、傷、濁り、掠れ、ムラ、などの不完全で規格外こそが全てのものの魅力であり、利休が言うところの「景色」です。
この領域に日本人は再現性を求めません。
なぜならば、偶然の景色は神の領域なのですから・・・・・
AIが唯一干渉できない領域(数値化できない領域)がまさにこの領域です。
偶然の世界は「気づき」と「発見」の世界です。
そこには感動しかないのです。
#和文化デザイン思考 講師
成願義夫
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