『江戸小紋、極小の宇宙』
さて、日本の伝統文様に『行儀文様』と言う図柄がある。
行儀文様は、「鮫」「通し」とならび、江戸小紋三役のうちの一つだ。
主に江戸小紋に使われている図柄だ。
文字通り、行儀よく並んだ点の図柄。
まさに『整列の美』。
行儀の柄は、斜め45度に小さな点々が規則正しく配列されてることから
行儀作法、「礼を尽くす」という意味を持つ文様といわれている。
行儀文様は江戸小紋を代表する柄で極小のものになると3cm四方に900余りの点で埋め尽くす。
まさに極小の宇宙、まるで素粒子の配列のようだ。
遠目には点の集合は面に見える、無地に見える。
故に江戸時代、数々の奢侈禁止令が発令される中でも逆に発展した贅沢な染めだ。
手染めの場合、型紙を使い、コマベラで染めていく。
下手な職人が染めると、ムラになる。
これを、均等にムラなく染めるのは至難の技だ。
点を拡大してみると、一つ一つの点に個性がある。
隙間も、数学的に均等ではない。
言うなれば、『相対的に表現された均等の世界』。
パソコンでは、絶対作れない世界だ。
以前、一流の江戸小紋の職人がこんなことを言っていた。
「人間がやる事に完璧な均等やムラのないものはありえない。
それをいかにムラなく均等に見せるか? その誤魔化しの技は経験と勘がものを言う。」
「均等にするんじゃない、均等に見せるんだ」という言葉こそ、
誤魔化しの美学、それこそが一流のプロの技
一流の職人が作った江戸小紋は、遠目には無地と見間違うほど美しい。
伝統デザイン研究家 成願 義夫
和装研究家
着物デザイナー・日本画家
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