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「いざという時」、「もしもという時」

私は、以前スイスから帰ってきた友人のお土産としてアーミーナイフをいただきました。

この多機能は一見便利そうですが、とても使いにくいのです。

だから普段は、わざわざこんな物は使わず、それぞれ独立した道具を使います。これは私に限ったことではないはずです。
つまり、日常の生活ではこのナイフは、「無用の長物」です。

これは戦地や災害時の避難先などでは重宝するかもしれません。
避難の際に物を持ち出せなかった時などの、代替え道具として非常事態にのみ機能する物です。

ところで、最近、フェーズ・フリー運動が起こっているのをご存じでしょうか?

『備えないで、もしもの時に対処する』


フェーズフリーは、
コストも削減でき、保管場所などの省スペースにもなり、安心を高める『備えない防災』がこれからの暮らしには大切であると、さまざまな災害を経験した上で導き出した結論だというのです。
これこそが本来の『いざ対策』だという思想です。

幸いなことに私の場合、「いざ」や「もしも」という大きな非常事態は、いまだに一度も経験せずに、友人にもらったアーミーナイフは一度も使うことなく、結局無くしてしまいました。(笑)

世界でも有数の自然災害大国である日本。
皆様もご存知の通り、近年ますます防災意識は高まっています。
そこで改めて考え出されたことがフェーズフリーです。

私たちが学ぶべきは
普段使いやすく慣れ親しんだ物の「いざという時」の使い方なのです。

つまり
いざと言う時の為だけに備えたものはいざという時に実は取り出せなかったり、使えなかったりして、結局役に立たないことが多く、日常使う身のまわりにあるモノやサービスを、非常時にも役立てることができるようした方が、いざという時に命を守ることにつながるという考え方。

それが『フェーズフリー』です。


ところで、私の専門分野の和装業界にもフェーズフリーが求められています。
呉服店の「いざ」トークは、個人的に「アーミーナイフ商法」と、名付けています。(笑)

いざトークとは、
「これを今から準備されておられたら、いざという時、困りませんよ」
「お嬢様の結婚のお支度は早めにされたほうがいいですよ。いざという時の為に・・・」等々のいざトークです。

いざ商品

現在、昭和50年代までの呉服店の主力商品だった、「お道具」の需要が激減し、それがそのまま着物業界の市場規模縮小に直結しました。

現代、お客様に勧めるべき商品は日常に着られる普段着や街着なのです。
つまり、ファッションとしての着物です。
そのようにして、普段から着物に慣れ親しんでこそ、いざという時にも着物を着たいと思うのです。
ところが、時代の風潮は「いざという時はレンタル」が当たり前になっています。
これは、販売を目的とする呉服店にとって大きな痛手のはずです。

いざという時の為の道具としての着物を求めている人はほとんどいないのです。
着物を特別扱いすることのデメリットの大きさにいい加減気づくべきです。
つまり、着物こそフェーズフリー商品であると、自覚すべきなのです。

和文化デザイン思考講師
呉服繁盛店の作り方講師

株式会社京都デザインファクトリー
成願 義夫

フェーズフリー協会

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成願 義夫(ジョウガン ヨシオ)
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