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三越呉服店の珍しいポスターの意味は?
1673(延宝元)年に三井高利が創業した越後屋。
屋号は高利の祖父の時代まで「越後守」を名乗る武士であったことから「越後屋」とし、人々からは「越後さんの店」と呼ばれていたそうです。
その後、三井家の姓を取った「三井呉服店」となり、1904年、「三」と「越」を取って「三越呉服店」となり、その後の「三越百貨店」に至ります。
現在は『三越伊勢丹』ですね。
時の移り変わりには抗えません。
さて、以下のポスターをご覧ください。
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普通とは違うことに気がつく方は少ないと思います。
ここで、目に止めていただきたいのはポスターに描かれた二人の左胸に付けた黒いリボンです。
これは喪章で、明治天皇の崩御の後、喪中であることを表しています。
商用ポスターであってもこのような配慮が必要だったんですね。
ちなみに、私の想像ですが、既に完成(あるいは制作途中)していたポスターの原画があり、天皇崩御の知らせを受け、急いで喪中のリボンを描き足したのではないでしょうか?
いや、もしかしたら、天皇の崩御を予見して何ヶ月も前から準備していた可能性すらありますね。
日本中が喪に服し、大多数の商人が自粛する中、喪中であっても宣伝は怠りない三越。
全ての事象を好機に変える。 これぞ、商魂。
これが、江戸時代から現代まで続く老舗の商人道です。
#和文化デザイン思考 講師
成願義夫
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