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なまはげを 書 にして贈る👹🖌(7)

🖌 最終の書、書きあがる

7月11日暑中お見舞い申し上げます の言葉と共に2枚の写真が届いた。
私が見たいと返信の中に書いたので、慌ただしい中送ってくださった。

最終の書として
他の2作

「作品1枚の写真の方にしようと思います
これで二分割赤多めで にしますね」

夜、また追ってのメール。

最終の書、着物地と合わせて
着物地 赤青拡大

「いま、表具屋さんに作品出しました  一ヶ月くらいで仕上がります」
青い着物地は別の布に代わったのですか、という私の問いに、更にメール。

「いえいえ同じなのです  銀糸は裏です
裏に横縞ですが
表には幾何学模様で、裏の銀がチラチラ見えます
少し控えめで品がいいように思いましたので、変えました」

7月12日、表具屋さんに書が行った後、私の興味も表具に向いた。表具、表装、額、とは何を指すのだろう。
表装とは「書や絵画を紙や布で裏打ちをして補強し、それらにふさわしい装飾を施して掛軸や額に仕立てる伝統技術を表具あるいは表装といいます。」
ネットで見た 協同組合 京都表装協会 のサイトを引用させていただいた。


🖌 太田さんは書作品を着物地に合わせる

この時点で、表具と表具屋さんについての太田さんの考え方を聞いてみた。

「表具屋さんは、
広くは掛け軸から障子の張り替え襖の張替えも仕事です
ただ床の間が消える日本では掛け軸の仕事は仏関係でとかしか
ないでしょうし、床の間が消えていきますからね
書道も連れていく文化ですからなかなか表具屋さんも難しいと思います

着物の布に限らず、もめんでも どんな布でもやってもらえます
布の裏にそれ用の紙を貼り付け布を紙状にするわけです
それを掛け軸や額縁に仕上げます

それはどこの表具屋さんでもやってくれます
技術の良し悪しはあると思いますが
書道はその作品を書いてから着物地も含めて、
表具布を探すのが一般的です  作品に合う布を探すのです

ところが、私は逆なのです
布を見て、作品を書くのです
布からイメージを頂いて作品を書く、 なのです
ですから布と作品がほぼ同時進行です

ほとんどの方は作品を書いて、表具屋さんにある布の中から選んで、
人によっては表具屋さんにお任せの方がほとんどです
わからないからという理由で

字は書くだけで、あとは何をどう着せようが、人任せさんが多いですかね
またそれが表具屋のセンス、仕事でもあります

作品にしてしまえば同じですが 作品を書いて布を選ぶと、
思うような色やデザインがないことも少なくありません
赤い洋服が欲しくてもこの赤ではないのよね、とかありますね

私はそれなら、この赤に合う作品を書こう、と思うわけです。
布の組み合わせを人任せにしない、です
布を見るとイメージか浮かぶのです」

表具師は書かれた書を作業場で裏打ちをする。裏打ちとは机の上で作品に霧吹きで水を吹き付けながら皺を伸ばし、紙と机の間の空気を全て抜いたら作品の裏に糊を塗り、その上に紙を貼って作品を補強する技術であり、その後、裏打ちした作品を掛け軸や襖などに張り付け、更に乾かして皺をなくすことによって表装が完了する。表装と表具は同意。
太田さんは着物地を後に表具師さんに任せるのではなく、着物地を合わせた作品を先に思い浮かべてから文字を書いている。そこが一般の布を扱う書作品と違うところなのだと思う。額の模様や色合いも選ぶと聞いている。
今回の書がどんな風に額に収まり、秋田に届けられ、にこりさんのお菓子たちと共にお店に置かれるのか、作品の完成度もクライマックスに近づいてきた。

参考資料
福岡県福岡市の昔ながらの表具師さんをネットで見つけたのでご紹介させていただく。こういった技術が後世にきちんと受け継がれていきますように。

Japan Eight より引用ご紹介
Find out about Kyushu, Japan. Traditional crafts, culture, lifestyle, amusement and more!

https://japaneight.com/ja/
手仕事を繋ぐ表具屋「美術表装 萬年堂」

「美術表装 萬年堂」
web:
https://mannendo-sinse1956.qwc.jp/
email: mannendou1956@gmail.com

太田さんが暮らす三重県伊勢市にも多くの表具師が存在する。この作品を作り上げてくれる表具師さんがどんな人かはまだ聞いてない。


🖌 書風に対する疑問

7月13日、私の中で一つの疑問が湧いていて、どうしてもそれを解決しないとならないような気持ちになっていた。太田さんには一旦筆を置いた後私が句の作者の名の事で書き直しをお願いした経緯がある。その時の太田さんの日常が普段以上に忙しかった時期でもあり書き上げた作品に太田さんの気持ちが乗っているのか知りたかった。
私が観た日本橋での作品展、送ってくださった作品集、ネットで探した作品、どれとも違う作風の書が現れた気がしたから。
そこで早朝不安な気持ちのままメールを書き、送信した。

先の書
最終の書

 私から太田穂摂さんへのメール 。
「作品の書の完成大変お疲れさまでした。ありがとうございます。
もしかしたらお叱りを受けるかも、気分を害されるかもと思いつつ確認させていただきたいことがあります。2枚の書を毎日何度も眺めていましたが、書かれている時の気持ちが違うような気がします。別の人が書いたような風にも見えてきます。おうちの事や作品展の事、慌ただしい中で余分な時間を割いていただいていたことも 改めて申し訳なく思っています。

太田さんご自身はどちらを気に入っていらっしゃるでしょうか。
どちらも太田穂摂さんの元々の書の形なら良いのですが私が無理に書き続けるような形にしてしまったのでそれが書にも影響しているならと考えます。
表具屋さんに書が行ってしまってからこんなことを聞くのは無粋ですが、
後者の大胆な書も太田穂摂さんの持ち味だということなら私は安心して完成を待つことができます。
が、以前に送っていただいた「着物地が語る書の世界」を眺めていてやはり先に書きあがった書が太田さんの書なのではないか、そう感じています。
太田さんとの関係が壊れてしまうかもという不安を抱きつつ、このまま完成を待つこともできず、

太田さんのお気持ちを聞かせていただきたいです。
本当に、朝から失礼な質問で申し訳ありません。
それくらい、この2枚の書を私の眼は行ったり来たりしています。 杉本」

これでは私が気に入ってないという誤解を生むかなと慌てて追記を送った。書き足りなかったことがあり追記させてほしい。素人なので書の出来具合いの話は判らないが太田さんらしい書なのかどうかをお伺いしたい。
どちらも着物地と額が合わさった姿と実物大の迫力を考えたら素晴らしいものになると思う。眼鏡をかけて、パソコンの画面を最大にして、極近くで実物を観ているつもりで眺めてみたりしている。という文の最後に、
二日ほど、ずっと眺めて、見比べて、考え悩んでいることを伝えた。

太田さんの書をよく知る方なら理解してくれると思うが太田さんの書は「やさしくしなやか」に見える。最近観始めた私はすごく女性的な文字だと思っていた。だから返ってきたメールにドキッとした。確かに着物を着て筆を持つ姿の写真と洋服を着て会っている時の太田さんは違う人であり、良い意味で男性的というか返答が早く確かにサバサバしている。
2枚の書を比べた時に先のは私のイメージ通りの文字、後に出来上がった書はすごく力強い男性的な文字に変わっていた。乱雑でもあった。このイメージの違和感を私は数日感じていたわけだがそのもやもやを受け取ったメールがスパッと払い除けてくれた。

「私は断然あとからのほうが、好きですし いいと思っています
なぜなら なまはげの厳しさがやっと表現できたと思うからです
一回目でできたと思いましたが、まだ、不足でした  比べてわかりました

私の作品集はどちらかといえば花鳥風月素材が多かったです
なまハゲの荒々しさは、あの作品集の中にある文学ではないからです
ですから当然といえば当然ですが 柔らくなめらかな作品が多いです
大きい英虞湾の作品のタッチに近いかもしれません

私は題材によって表現を変えます
それがわたしの、多彩な表現力  パターンが無いのです
どれが私らしいかわかりません

書は生き物ですし、
人間が書くものですから全く同じ気持ちで、書くという風にはなりません
あのときの気持ちになれなんて、できるはずもありません
書は一瞬の切り取り作業です
ですから、前のように書いてくださいというのは、不可能です
同じ時間は返ってきません  同じものをたくさん作れる方は職人です

追い詰められて、花が開くようにパッと、
作品ができるようなことがほとんどです
どれだけ忙しくしていても筆を持って作品を書く時間は集中して静かです
お茶碗を洗いながら家事をしながら書いたとしても
その瞬間はとても静かなものです
いわゆるゾーンに入るのです
それはどんな作家さんでもそうだと思います

それにもう一つのは、「古和田の句」とあるので、それは使えませんよ
だから書き直したのです、前のは捨てました」

私の中のもやもやが晴れた。私が見ていたのは太田さんの一部分であり、この書で新たな一面を知った。日帰りで知人の作品展に早朝伊勢から東京にやってきて、突然私に今夜会えるか? と電話が来る行動力。確かに太田さんの内側には強い作風の源が存在していた。
それにしても先の書をパソコンの中でではあるが私は何度も日を跨ぎ眺めている。あれを捨てたとは。・・・惜しいと返信。私の方が女々しいのかも。


なまはげを 書 にして贈る👹🖌(8)に続く
なまはげを 書 にして贈る👹🖌(8)|すぎもとかよこ|note

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