なまはげを 書 にして贈る👹🖌(1)
はじめに 2022年9月
この記事は昨年自宅に届き手に取った1冊の本から構想が浮かび形となった書作品について、いきさつとその経過を日付と共に書き留めた記録です。
1枚の書を壁に飾る為に1年を費やすのは珍しいかもしれませんが、初めてのことなので沢山の方々の協力を得てゆっくりと進めることになりました。
記事のキーワード「書道」「着物地」「なまはげのおくりもの」「赤と青」「三重」「俳句」「渋ラジ」「秋田」「にこり」「開店10周年」「高橋優」「ACMF」「書作品」「表装」etc。出てくる順通りになっているかどうかわかりませんが一見繋がらなさそうなこれらのワードが見えない糸で繋がって最後にお店に飾られる1枚の作品になる。
その経過をご興味のある方にご覧になっていただければ幸いです。(杉本)
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🖌 2021年、7月に太田穂摂先生から1冊の本が届いた。
私が観覧した東京展 日本橋三重テラス(2021年1月19~25日)
ふるさと三重 伊勢展 外宮参道ギャラリー(2021年7月16~19日)
両展で展示された書作品の内 23点とその解説が掲載されている。
この作品展と作品集の詳細は次の関連noteを読んでほしい。
☛ 新たな書のかたち (着物布と)|すぎもとかよこ|note
🖌 2021年、8月に入りこの書作品は次の展開に。
日本橋で初めて会った時に私はこの作品を作る過程に大きな興味を持った。作品展では完成されたものしか見ることができない。太田穂摂さんは今までに無い新しい書作品の形に挑んでいる。ならば何故このような作品を作ろうとしたのか、どのようにして作品を完成させていくのか、その手順や苦労する箇所の話なども教えてもらいたいと思った。
日本橋では太田さん自らが1対1でこちらが立ち止まる興味深い作品の前で解説や疑問に応えてくれていた。が、せっかくなら新たな作品の構想から出来上がるまでの経過を同時進行で見て聞いて書き留めて行きたいと思った。その気持ちを率直に太田さんとのメールのやり取りの中で伝えた。
普通なら「それは無理です」と突き返されそうな提案がすんなりと通った。太田さんとは日本橋で一度お会いしただけでその後はメールでしか話したことが無い。私は書を習ったことがないし特別の知識があるわけでもない。それでも私の次の言葉は太田さんの心に留まってくれたようだ。
太田さんが作る書の作品は掛け軸の布や額ぶちの布に着物地を使う。平たく言うと書作品の周りが着物なのである。私達は書の作品は「わからない」とか「読めない」とか思い込みがちであるが太田さんの作品は着物地が語りかけてくれて書の世界にすうーっと誘ってくれるのだ。絵を見ているような感覚になり見入ってしまう。更に書と着物地を囲い装う表具すべてを太田さん自身が選んでいて、作品全体を少し離れた位置で見るとまるで絵画のような表情を持つ。その話をした時に太田さんと私の距離がありがたくもぐっと近づいたような気がする。本来なら先生と呼ぶべき方だけどこの作品を作る間は太田さんと呼ばせていただいている。
太田穂摂 略歴 三重県HP、三重の文化より
伊勢市在住の書道家。古典・古筆をベースに伝統を踏まえながら、現代に即した調和体で表した自身の作品の書を着物地の裂を用いて表装・額装し、発表しています。
1995年 第27回日展初入選(以降20回連続入選)
2005年 日展会友に承認
2015年 国指定重要文化財賓日館にて個展(2017・2018)
2018年 伊勢神宮奉納米を使った特別酒「納蘇(なそ)利(り)」
ヒカリ酒販のラベル揮毫
新書派協会に所属し、近藤摂南氏・土井汲泉氏に師事
日展に入選21回他、読売書法展等各展で入賞・入選多数、
大阪NHK文化センター講師。
新書派協会常務理事、読売書法会理事・審査員、穂(すい)の会(かい)主宰
では何を作ってみようか。最初は私の家に飾れる作品、ということを考えていた。でも今回制作過程を記録し他の人にも noteで読んでいただくなら実際に作品を見に行ける場所がいい。私の家では来客は限りなく少ないし、どこが良いだろう。私の知っている「人/場所」の中で作品にふさわしいのは何処だろう。考えて思いついたのが秋田市にある「お菓子のにこり」さんだった。
にこりさんとの繋がりは私が当時渋ラジでディレクターを担当していた「渋ラジっこあつまれ」という番組、2019年12月の高橋優特集がきっかけだ。
秋田生まれの高橋優さんが秋田で賞を取った菓子「なまはげのおくりもの」をテレビやラジオ、ライブのMCでも紹介するようになり、私も一度食べてみたくなった。そこでせっかくだから高橋優特集の中でリスナーさんにも紹介したくて秋田のお店に発注の電話をした。するとお店の人は番組で使うならお送りします、と快くこちらのお願いを聞いてくれたのだった。
その時の番組の note がこちら。
元々は2012年にどら焼きのお店として開店、その後なまはげのおくりものが「あきた食のチャンピオンシップ2015」で銀賞を受賞、お菓子自体の個性的な美味しさと高橋優効果もあり現在は秋田の名物土産として定着している。
なまはげのおくりものは秋田のお店の他、秋田駅、秋田空港、東京(有楽町と品川)でしか買えない。簡単に入手できない貴重なお菓子で今ではこの店の名物菓子になっている。
☛ お店のHP お菓子のにこり (nikori-a.com)
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🖌 太田さんにメールを送るところから始まる
2021年
8月8日、末広がりな日。太田さんに送るメールに具体的な提案を書いた。にこりさんのお話、なまはげのおくりものと言う菓子のことを伝え、この菓子が今多くの人の興味を惹いていること、このお店と私が親しくさせていただいていること、2022年11月に開店十周年を迎えること、など列記した。
太田さんにせっかく作ってもらえるなら沢山の人の目に触れるにこりさんの店頭に飾ってもらえるような作品を作ってほしい。その作品のテーマは「なまはげのおくりもの」としたい。出来上がったら十周年のお祝いとして贈りたい。太田さんにそう正直に書いた。
PS:もしお考えいただけるならこのお菓子を三重に送ります、とも。
キーワード「なまはげ」「泣ぐ子はいねが」の2点。
着物地はお菓子の色と同じく赤色と青色の2色で、とお願いした。
太田さんから翌朝さっそく返信をいただいた。
「・・・・・(私文略)さて秋田のお菓子食べてみたいですね
嬉しいお話です 是非挑戦させていただきたいです
どなたかが俳句を作っていただくわけでしょうか
それを私が書かせてもらうという形ですね
赤と青の布選びも今から考えられます
2022年の秋ということですよね 1年もありますので大丈夫です
俳句はもし可能であれば 何種類か作ってもらうと嬉しいです」
ありがたいことに快諾のメールだった。
これから他にもこの作品に協力していただく人を集めなければいけない。
にこりさんにもまだ話をしていないし、俳句を考えてもらう人も頭の中では決まっているがまだお願いをしていない。でも止まっているタイヤが回り出していることに私はわくわくし始めた。現在:すぎもと→太田さん、2人。
8月12日、にこりさんに連絡して暑中見舞いという形で三重になまはげのおくりものを送ってもらった。作品と言うのはその人の気持ちに左右される。このお菓子を好きと思うかどうかで出来栄えは絶対違うし、もしピンとこなければキャンセルもありうる。それを見極めてから次に進みたいと思った。すると想像通り、太田さんから高評価のメールが届いた。この菓子を気に入ってくれた様子。またひとつ、動いた。
なまはげを 書 にして贈る👹🖌(2)に続く
なまはげを 書 にして贈る👹🖌(2)|すぎもとかよこ|note
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