見出し画像

発狂前夜

発狂前夜みたいな夜を、
もう何年も過ごしている。

我孫子行きの最終電車を待ちながら、
何年か前の今日に死んだミュージシャンのことを考えていた。
ようやく悲しみが薄れてきたよ。
薄れてきてしまったんだよ。

満員電車には、
誰かが帰りを待っている人が乗っている。
今日が誕生日の人が乗っている。
エンドロールの途中で席を立った人が乗っている。
人を殺したことのある人が乗っている。
明日死ぬ人が乗っている。

多分、多分ね。

いつかわたしと幸せになる人はこの中にいない。

多分。

わたしが知りたいのはたったふたつのこと。

一番大切な人と、その消えない傷の癒やし方
一番大切な人と、その震える背中の押し方
一番大切な人と、その愛し方

もうわたしに優しくしないでください。
優しい人に、わたしのことを知られたくないので。
何にも拒まれたくない気持ちと何にも拒まれたくない気持ちの板挟みにあっておかしくなりそう。向けられた善意が無邪気なのか打算なのか分からなくて死にたい。
どうすればいいですか?
しらねーよ。ばーか。

書いてしまったひどい文章を
全部消して眠りたい。
ずっと怖い、もう何も書けなくなってしまったときの自分のことが。もう何も持ち得ない自分のことが。
傷口を見るときのグロテスクが好きだ。
傷跡を見るときの寂しさが嫌いだ。
詩なんて書けなくてもいいんだよ、って
ただその一言が欲しいから、

詩について考えている。
詩について、ずっと考えている。

私が知っているのはたったひとつのこと。

不毛地帯の先にある
頂上への、登り方。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?