旅立つ前に(4)~旅行中の気になるあれこれ~
前回の記事では
ほぼガイドの話ばかりになってしまいましたが
ここからはもう少し「実生活」編へ。
●北朝鮮でのおカネ
北朝鮮の通貨は「원(ウォン)」です。
偶然か必然か、韓国と一緒の名前ですが
当然ながらデザインもレートも全く違います。
↑ 北朝鮮人民ウォンの現行紙幣(一部)。
やはり社会主義的な香りのデザインが。
ローマ字や漢字が一切ないのもこだわりを感じますww
「L」は「エル」じゃないですよ。朝鮮語で「n」の文字記号です。
かつて100ウォンが最高額紙幣だったころは
あの金日成主席の肖像が入ってたんですが
その後デノミがあって新紙幣となってからはなくなりました。
そして、2018年春ごろのレートはこちら。
それぞれ1単位あたりのウォン交換レートが書かれてます。
公式レートではだいたい1円が1ウォン弱。
ただ、実勢レートとは40倍程度の開きがあるようです。
しかし外国人はこちらのレートを厳格適用。
なんたって正式の「公式」ですから(笑)
ところで、最初から紙幣の画像なんか出しちゃいましたが
実はこれ、我々は使えません。誤解させてすみません。
北朝鮮紙幣はあくまでも国内流通用で
国民のみが使うものとされているんですよ。
まぁレートに大きな差があるからかもしれませんけどね。
ふつう海外旅行に行くときは現地通貨への両替が必要で
レートのお得なお店や時期などが気になるもの。
でも北朝鮮での外国人旅行者は両替せずに
「外貨のまま」使うことになってるのが特徴です。
列車内でのお買い物もふつうに中国元。
ただ、外貨とは言えニッポンとは国交がなく
さらに「経済制裁」が続いている現在、
日本円は現地でほとんど流通しなくなったので
そのまま日本円を持って行っても今はほとんど使えません。
なので、結局ワタシたち日本人は
別の「外貨」への交換が必要なんですけどね。
代表的なものは中国元かユーロです。
なんと敵国なはずの米ドルもふつうに可能w
まぁ北朝鮮へは中国経由で行くことが多いので
中国元で持っておくのがいちばん無難でしょう。
以前は日本円も結構流通していて喜ばれたものですが
いまではさっぱり。
なお、クレジットカードも現在は使用できません。
20年前だとVISAも使えてたんですけどねー。
その時のカード利用控えと利用明細書がこれ。
高麗美術(コリョミスル)というお店でお土産買った時のもの。
日付は「主体暦」で。「주체(チュチェ)87年」は1998年です。
金額はウォンではなくてドル建て。
品名が「상품(=商品)」って、なんやそれ…(笑)
明細書の使用国名は「KOREA」になってます。
南北の区別をしてなかったんですね。
もし現地で手持ちの外貨がなくなってしまっても
ホテルでなら日本円も両替してくれるので大丈夫。
でも北朝鮮へ来ているのに
日本円を中国元やユーロとかに両替するってのは
なんだかヘンな感じです。
ちなみに以前は外国人専用の兌換券(だかんけん)と
交換して使う仕組みだったんですが
いまは廃止されています。
これが当時使われていたもの。
下は「1전(チョン)」から最高額「50ウォン」までの8種類。
「1ウォン」=「100チョン」です。
で、ウラはこんな感じ。
あっさりしてます。
青いバージョンもありましたよ。
これ、けっこうイイお土産になったんですけどね。
これの正式な名称は
「외화와바꾼돈표(ウェファワパックントンピョ)」。
意味は「外貨と交換した金券」で妙に理屈っぽい名前です。
一般には略して「パックントン」と呼ばれます。
語感がなんかかわいいw
●北朝鮮でのお食事
前の記事でも書きましたが、
基本的に旅行中の食事は全部ついてますから
どこで何食べようかと考えることはありません。
経済制裁で食糧難が…というイメージもあったりしますが
ワタシたち旅行者には毎食オナカいっぱい提供されます。
おかずも豊富で日本人になじみやすい味が多いですよ。
カレーなんかも出てきたり。
ひと通り食べた後から出てくるんで困るんだけど(苦笑)
ま、カレーは確かにニッポンの方がうまいですが
決してマズくはありません。ちょっと味薄めかな?
朝は宿泊のホテルレストランでバイキング、が主流。
おカユが緑色なのは「緑豆粥」。案外おいしいですよ。
確かに20年前はお世辞にも豪華とは言えず
お味も量も微妙なメニューが並んでいましたが
(いずれも1998年ごろ撮影)
それを思えば隔世の感です。
有名なピョンヤン冷麺やアヒルの焼肉などは
たいてい最初からツアーに組み込まれてますし、
それ以外でも食べたいものがあれば
別料金でオプションに差し替えることも可能です。
けっこう割高になりますけどね。
例えば、ワタシは今回
北朝鮮にもハンバーガーがあると聞きつけて
これはぜひ食べてみたい!と
途中で夕食を1回差し替えたんですね。
これが北朝鮮のハンバーガー!
左がプルコギバーガー(いわゆるハンバーガー)で
右がフィッシュバーガー、手前はポテトです。
お味はまあまあ。可もなく不可もなく、ふつうでした。
セットなんかはないのでジュースも含めてすべて単品合算。
これで合計850円くらいです。安くはないな。
いつものごちそう夕食を1回外した形ですが
当然その分の減額などはなく、単純に別料金で現地払い。
まぁいわばドタキャンですからそれは仕方ないとしても
なんと、同行のガイドもドライバーも
当初予定を変更してここで食べることになるので
皆さんの分までしっかりと「おごり」になるという。
この時は2,500円くらい払ったと思います…
旅行申し込みの時にリクエストしておけば
また違ったかもしれませんが。
ちなみに、韓国料理のイメージからの
辛いものばかりでは?と言う心配も大丈夫。
だいたいやさしい味のものが多いです。
むしろ辛い料理を期待すると物足りないほど。
日本人旅行者だから意識しているのか
もともとそうなのかはわかりませんが
けっこう日本人の口によく合いますから
食事がダメで痩せた~なんてことはないと思います。
好き嫌いがあれば先にガイドに伝えておくのも手。
旅程に板門店や開城(ケソン)が入っていれば
「飯床器(パンサンギ)」という名物ゴハンも食べられます。
昔の宮廷料理が元になっているそうです。
これも見た目は赤いですがほとんど辛くありませんよ。
●北朝鮮でのスマホ
いま北朝鮮国民にも急速に普及しているスマホ。
じゃぁワタシたちは使えるんでしょうか。
かつては入国審査で携帯が「一時預かり」となり
北朝鮮国内では時計代わりですら使えなかったんですが
いまは日本のスマホも持ち込み可能。
ただ、ヘンなアプリや画像は消しておく方がいいですね。
美少女ゲームなんかは問題なしです(笑)
そして、北朝鮮国内でも
外国人専用のSIMカードが販売されており、
それを挿入することで通信できるようになります。
ネットもメールも日本への通話も可能で
むしろ中国より便利。
ただし、通信料がかなり高いです。
あと、国内用の回線とは完全に分離されてるので
国内に向けての通話通信はできません。
「国際専用機」としての使用になります。
キャリアは「koryolink(コリョリンク)」。
SIMカードは空港や一部ホテルで購入できますが
申請書の書き方がややこしかったり
販売していないホテルもあるので
ガイドに伝えて連れて行ってもらうのがラクでしょう。
普通江(ポトンガン)ホテル内にある携帯ショップ。
ポスターがなかなかシャレてますw
「3世代移動通信」、3Gなんですね。
ワタシはせっかくここまで行ったのに、
「受付センターの営業終了」ということで
回線の開通処理ができず購入を断念。
行くならお早目の時間がよろしいようです。
ネット上には他にいろいろレポートがあるので
詳しくはそちらをご覧ください。ごめんなさい。
●北朝鮮での呼び名
このほか、ちょっと細かい話をすると
この「北朝鮮」という呼び名。
ここではもうわかりやすく「北朝鮮」と言っちゃってますが
現地ではこんな風に呼ばず
「共和国」、または単に「朝鮮」と言います。
日本語読みで言うと「コンファグク」か「チョソン」。
「共和国」というのは「北朝鮮」の正式名称、
「朝鮮民主主義人民共和国」から。
いや、ま、絶対にダメというわけではないんですが
やっぱりそう呼ぶのがマナーというか。
現地の人たちの考え方の前提として
「朝鮮半島はひとつ」なんですね。北も南もない。
つまり「韓国」と「北朝鮮」という2つの国では、ない。
だから地図を見ても南北に分かれてはいません。
ソウル市もちゃんと載ってますよ。ちょっと粗いですが。
そして「独島」(=竹島)だって。
わざわざカッコ書きで「(朝鮮)」て書いてるよww
つまり「韓国」も含めてひとつの「朝鮮」なんだけど
いま分断されていて「韓国」側へは行けないので
暫定的に「南(側の)朝鮮」と表現する、というスタンス。
だから「韓国」のことは「南朝鮮(ナムチョソン)」と言います。
余談ですが、反対に韓国では
「北朝鮮」のことは「北韓(プッカン)」と呼びます。
「朝鮮半島」も「韓半島」と呼ぶのでその北側、ですね。
北側では「朝鮮」―「南朝鮮」、
南側では「韓国」―「北韓」。
呼び方のややこしさに互いの複雑な気持ちが表れてます。
また、韓国語やその文字のことを
日本ではよく「ハングル」と言いますが
これも北朝鮮では使いません。
言葉は「조선말(チョソンマル)」=朝鮮語
文字は「조선글(チョソングル)」=朝鮮文字。
「ハングル」の「ハン」って、「韓」と同音なんですよ。
だから「韓国文字」という意味にもなっちゃう。
ちょっとしたことなんですが、この辺も頭の隅に。
この他にはやっぱり、あからさまな体制批判や
指導者を直接侮辱するような言動は慎むべき。
いきなり逮捕されたりということはありませんが、
少なくとも相手の心情を大きく害し、得にはなりません。
その善悪はともかく、現地では大切に考えられていること。
議論を吹っ掛けられたなら応じるのもアリですが
そうでなければわざわざケンカを売る必要はないでしょう。
他人の家にお邪魔して、そこの悪口なんて言いませんよね。
せっかくの旅行ですから、楽しく過ごしたいものです。