市民生活は変わってきているのか
●「北朝鮮」のイメージ
いまでもなお「北朝鮮」でイメージされるものって
「核」「独裁」「生活苦」…などなど
ダークなものが多いですよね。
20年前に初めて訪朝したワタシは
早くから現地で実際にいろいろ見ていたので
そういったイメージが多少変わってはいたんですが
それでもやっぱりその時見た
色彩が乏しく作り物のような街だとか
人々は地味であまり活気がなく
生活もなんかいろいろ大変そうで
陰気、というか一種独特に感じた雰囲気とかが
ずっと頭の中に残っていました。
訪れた百貨店もお客は少なく、妙にヨソ行きな服装で
「外国人に見せるため動員されている」という
当時語られていた噂も案外ウソではないのかもと
思ってしまえるような「統制感」を感じたのは事実です。
当時は帰国したあと他の人へ説明するときによく
「校則の厳しい中学校」のイメージに例えていました。
ホントにそんな感じだったんですよね。
●街や人の雰囲気は変わった
それが今回行ってみると
前回の記事にも上げたように、多くの人が
「いいもの」を求めて積極的に集まる勢いに圧倒されたり、
色彩の増えた街の中を市民が思い思いに歩く姿や
公園でゆったりくつろぐようすに
ちょっとした自由やゆとりの空気を感じました。
それに女性のファッションも多様になりましたよ。
センスはまぁいろいろですけどね。
いやもっと素敵な人もいたんですが撮るタイミングが…
もちろん、社会体制がまだまだ閉鎖的であることや
市民生活にいろんな制約が課されていることは事実です。
でも以前のように街全体を覆っていた
息苦しさや違和感がずいぶんと減ったのも事実。
人々の表情や行動が自然になったというか
「素」の姿がふつうに表に現れるようになった気がします。
かつてはこちらが外国人だと見ると
ぎこちない笑顔を貼り付けてやたら手を振られたり、
逆に緊張した固い顔でじっと睨まれたりしたものですが
なんかもう全然意識してないというか、構えない。
人々が活発になって、街の元気も増した感じです。
例えばこの写真をパッと見て、
北朝鮮だとはすぐには分からないんじゃないでしょうか。
いや、よく知ってる人にはすぐバレちゃうでしょうけどww
●モノも増えてきた
今回の旅行中に気が付いたことのひとつに
太陽電池パネルをとても多く目にしたことが挙げられます。
あちこちのアパートの窓や屋根ににずらーりずらり。
北朝鮮の電力事情がよろしくないのが一番の要因で
市民の自衛策としての設置が増えてるんでしょうが
それでもこんなにたくさんの家庭がそれぞれ
「太陽電池を購入できる」ということが
ワタシの古いアタマではびっくり驚きでした。
それだけ太陽電池が市場に出回り、
それを購入できるおカネを持つ人が増えてるわけで。
こんなん「ただし、ピョンヤンに限る」だろ!
とも思いましたが、
開城へ向かう途中の地方都市や
国際列車で通過するイナカのお家でも
けっこうふつうに目にできるんですよ。
これはかなり広く普及している感じ。
形や大きさ、設置数がみんなまちまちで、
どの家にもあるわけではないことからも
党や国からの一律の配給品ではなさそうですし、
逆に不規則にあちこちで見かけるということは
一部の特権階級だけのもの、でもないようです。
一律の配給品なら
たとえば一つのアパートの全世帯の窓に
ずらっと同じものが揃っていたりしますし、
一部の特権階級だけのものだとすれば
農村も含めたこれだけ多くの場所、それも
大きなアパートから小さな古い家屋にまで
ばらばらと見かけることはないはずです。
と、いうことは
一般市民でもそういったものを購入できるという
経済力が地方でも上がってきていると言えるのでは。
あと、「自分で何とかする」たくましさも出てきたかと。
もうちょっと身近なネタにしてみましょうか。
北朝鮮で広く普及していると言えば
スマホの爆発的増加はすでに有名ですね。
あちこちでふつうに使ってます。
このヒト、鍋2つも買ってるよ…頼まれものかな(笑)
歩きスマホも激増。
通話だけでなく、画面見ながら歩く人もいます。
それに、写真には撮れませんでしたが、
多くの学生たちも利用していました。
「電話機があるのは政府機関と特権階級だけ」で
一般市民は情報伝達すらままならなかった以前とは
がらりと様相が変わっています。
かつては駅前などに設置されていた公衆電話も
もうすっかり消滅してしまったそう。
ただ北朝鮮での通信は国民向けと外国人向けとで
完全にチャンネルが分けられていて、
一般市民の回線では国外への通話や
インターネットへの接続は一切できません。
国内のみのいわゆるイントラネットしか使えませんが
それでもゲームやショッピング、動画など
かなりのコンテンツがあるようです。
そういえば
旅行中に案内員氏が日本ネタを振ってくることがよくあって
それがなかなか細かいところまでやたらと詳しいんですよ。
どうしても「アベが」とか「自民が」と政治系が多いんですが
「若者の保守化が…」とか「森友問題が…」とかまで
北朝鮮のどこでそんなハナシ聞いてくるねんと不思議でした。
すると、スマホで「労働新聞」の記事サイトを見せてくれました。
「労働新聞」は言わずと知れた北朝鮮の代表的新聞ですが
ここの記事はみんな無料で読めるんだそうです。
そこには
ニッポンの国会の混乱ぶりを詳細に伝える記事が。
森友問題や加計学園についてもしっかりフォロー。
安倍首相の妻がどうのとか決裁文書の隠蔽だとか
考察も加えてワイドショー並みに詳しく説明されていました。
どうりでよく知ってるわけだ。
こんなに詳しく北朝鮮で報道されてるとは知りませんでした。
ちゃんと記者署名もあったってことは、日本に特派員がいるのか??
いずれにせよモノだけでなくさまざまな情報も
一般市民レベルで広く交換共有できるようになったことで
いままでのような「統制」のシステムも変容し
ただ忠実に従うことだけが最良とされたこれまでとは違い
自分で考え、判断するような力が高まったことが
街のさまざまな雰囲気の変化につながったのかもしれません。
●人とモノが集まるショッピングセンター
モノが増えた、というのは日用品もそうです。
いまや人気の「観光スポット」になった
光復(クァンボク)地区ショッピングセンター。
以前の記事でも紹介しましたね。
ここはほんと、買い物客でにぎわってるんですよ。
「近所のおばちゃん」が子供連れてきてる日常感。
それに、商品もかなり充実しててワゴンセールまで。
以前訪れた第一百貨店の「お行儀良さ」とは全然違う。
内部は撮影が厳禁とのことでしたが、何枚か撮れちゃった(←)
おもいっきりブレてますが、それでも少しは雰囲気伝わるかな。
棚には日本のシャンプーやニ〇アも。
食料品詰め込んでカートを押すのは日本も同じ。
ティ〇ァールもありますよ。
レジはバーコードでピッてするやつ。
レジには常にたくさんの人が並んでます。
「ついで買い」を狙って
レジ前にガムの陳列台があるのも日本と同じですねww
ちなみにこうした店内写真って、
欧米からの観光客とか通信社は撮影自由なようで
実はネット上にきれいな写真はあふれてますよ。
よりよくご覧になりたい向きはぜひそちらを(笑)
相変わらずまだ日本人はいろいろ警戒されてるんだな。
●やはり大きく変わってきている
こうして見てみると、少なくともピョンヤンではいま
市民の生活レベルが一定程度向上していると思えます。
最近の相次ぐ都市部再開発でショーアップされた
きらびやかな街並みといった外見の変化もありますが、
そうした目に見える部分の変化だけではなく
実際の生活実感の水準やある種の自信なども含め
そこに暮らす人々のココロの内面や考え方も
確実に変化してきていると認めざるを得ません。
たしかにピョンヤンを数日見ただけで
北朝鮮全体の変化を語るのは早計です。
居住地が指定され原則的に移動の自由がない中で
ピョンヤンに住めるのは「選ばれし者」だけですし
他都市の大部分はまだ外国人の目に触れません。
おそらく富や物資の大部分が
ピョンヤンに偏在しているのは事実なのでしょう。
でも、北朝鮮2500万の人口のうち約1割を占める
首都ピョンヤンで暮らしている多くの人が
このように変化してきているということは
ある程度の地域格差を割り引いたとしても
地方への波及も徐々に進んでいるはずです。
少なくともワタシの目に映る範囲においては
「やはり大きく変わってきている」と感じました。
ここまでご覧になって
皆さんのイメージではどうでしょうか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?