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稲の苗は1日にして成らず~②育苗土の準備

去年はプロ農家のイソップさんが丹精込めて育ててくれた苗を植えるところから始まったSAKU農業複業化プロジェクト。今年は、どうせならもっと前工程からやってみよう!ということで、前回「塩水選」という作業を行い、今年田んぼに植える苗になる種を昨年収穫した種籾から選別。今回は「育苗土」をつくるという作業を行いました。

◆今回の学び

  1. いい眠りはいいベッドから

  2. 農機具はじめて物語

  3. 楽勝と思ったその時から翌日の筋肉痛は約束される

  4. 農作業はダイバーシティの宝庫

  5. 続けることの重要性~今年の教訓を来年に繋げるためには?

1.いい眠りはいいベッドから

「土づくり」・・・少しでも農作業を齧ったことのある人なら聞いたことがあるキーワードではないでしょうか。近年ではプロの米農家さんも苗を買うことが多いそうですが、SAKU農業複業化プロジェクトでは、前年に収穫したお米を種籾として残しておき、種籾から稲の苗を育てる「育苗」、そして今回のテーマである育苗のための「育苗土づくり」から手掛けました。
ちなみに作業当日の我らが田んぼの現状はというと・・・

写真奥の一面真っ白なところがSAKU農複PJTの田んぼ・・・

まだ、土づくりどころではなかったです(苦笑)。

そもそもなぜ育苗土が必要なのか?

育苗土が必要な理由は、「必要な理化学性(pH値や肥料養分など)が均一で、透水性・通気性などが適切に調整されていること、また病原菌の持ち込みがなく、安定して均一な苗をつくる」(全農グリーンレポートより引用)ためだそうです。
なんだか難しい・・・要は田植えの時点でいい苗ができていないとダメで、そのためには苗がなるべく均一に成長するための苗床を整えることが重要ということ。人間でいうと、いいベッドがいい眠りをつくるってことですかね。
育苗土は市販もされていますが、それなりに値段もするので、なるべくローコスト+地域の資源を有効活用しようということで、今回我々は、①覆土専用培土(肥料なし)、②海藻エキス配合アミノ酸有機液肥の素、③竹パウダーを使ったオリジナル育苗土をつくりました。

①覆土用培土
②海藻エキス配合アミノ酸有機液肥の素


③竹パウダー

2.農機具はじめて物語

さて、材料は揃ったので、早速作業に掛かるわけですが、全て手作業!ではなく、先人の知恵と文明の利器を拝借。前回の塩水選でも初お目見えの農機具がいくつかありましたが、今回使用した農機具と関連用具は以下の通り。

攪拌器(ミキサー)

攪拌器に培土・肥料・竹パウダーを混ぜて攪拌中

これ、初めて見ました。イソップさんも自分では持ってなくて、知り合いの農家さんからお借りしました。培土、肥料、竹パウダーを投入して攪拌する為のもの。一応電動です。イソップさんも年に1回しか使わない、それ以外のメンバーは見るのも使うのも初めて。まあそんなに複雑そうな機械じゃないし、なんとかなるだろうってことで行き当たりばったりに使ってみたら、案の定、失敗の連続・・・

教訓その①攪拌器の戸締まりは忘れずに

攪拌器には底部に排出口が付いていて、攪拌した育苗土を排出できます。当然、攪拌中は排出口を閉じておく必要がありますが、閉じるためのレバーが錆び付いていて硬く、私が攪拌担当でやった時、ちゃんと閉めておかなかったら、無情にも攪拌するそばから不十分な攪拌状態のシロモノがダダ漏れ・・・やり直し!

排出口がちゃんと閉じられた状態


教訓その②ブルーシートのポジショニングは正確に

攪拌された育苗土を育苗箱に入れる前に、地面に敷いたブルーシートに一旦排出します。最初は何も考えずに攪拌器の下に何気なく敷いていたら、排出された育苗土はあっという間にブルーシートの外にはみ出てしまい・・・あ、そっか!攪拌器の排出口とブルーシートの位置決めと、ブルーシートからはみださないように、ブルーシートをなるべく排出口に近づけないとダメだね・・・

ブルーシートのポジショニング修正後、なんだけど、ちょっと怪しい・・・


ならし板

これがならし板です

育苗箱に育苗土を入れて一定の高さに均(なら)すために使います。なんの変哲もないプラスチックの細長い板に見えますが、板の長辺部分に「10」と「7」の数字が書いてあります。これは、育苗箱に覆土する時に表土と箱の上面との間隔を10mmにするのか、7mmにするのかということだそうです。今回は7mmが妥当とのイソップさんの指示により「7」と記載された長辺部分を下にして育苗箱に入れた育苗土を均していきます。

実は今回の作業では、このならし板の数と使い方がボトルネックとなり、意外に時間を要する原因となりました。なぜかって?この工程だけが完全に人力だからです。育苗土の攪拌は攪拌器がガーッとやってくれるのであっという間に終わるのですが、攪拌器からブルーシートに大量に排出された育苗土の山に分け入り、育苗箱に育苗土を入れ、ならし板で一定の高さに均す。

作業当初はイソップさんの伝家の宝刀1枚のみで作業していましたが、見る見るうちにブルーシートの上に攪拌された育苗土が積み上がり、あっという間に攪拌工程を一時停止しなければ追いつかなくなるハメに。こりゃダメだってことで、慌ててイソップさんが近所の別の農家さんからもう1枚ならし板をお借りし、ならし工程の生産性が2倍になりました!

黒と赤の2枚のならし板を駆使!

生産性は2倍になったのですが、この作業、簡単そうに見えて結構難しかったです。何気なくやっていたら、イソップさんから「短辺側の均しが甘いですよ」と注意されました。何も考えずにやると、均した先の短辺側に育苗土が寄ってしまい、どうしても7mmの深さより浅くなってしまうんですね。「最後のところはピッピッと育苗土を掻き出す感じで」とのイソップさんの指導により、「ザーッと均してピッピッ」、「ザーッと均してピッピッ」と心の中で念じながら作業を進めました。

3.楽勝と思ったその時から翌日の筋肉痛は約束される

数少ない均し板を奪い合いながら、無事育苗土を育苗箱に投入。均し板で均して、さあ完璧!これどこに持ってくんだっけ?あ、そっちね。えーと、この作業、今日全部で育苗箱何枚やるんだっけ?150枚?ふーん、楽勝?かと思いきや・・・

たまちゃんの姿勢①


たまちゃんの姿勢②

この作業をひたすら繰り返し、やり切った感満点で翌日を迎えたワタシは、いつもと違う下半身の違和感を感じ、愕然としました。普段割と鍛えてるつもりだったのですが、農作業は別モノでしたね。そりゃそうだよね。短時間に重り持ってスクワット何回やったんだっていう・・・甘く見ていたわ〜。来年はこの立ったり座ったりを繰り返す工程をもっとカラダに優しい方法に改善しよう!と思ったものの、きっと来年になったら忘れて同じことを繰り返すんだろうな〜(苦笑)

4.農作業はダイバーシティの宝庫

今回の作業はイソップさん、たまちゃん、たまちゃんの今年小学校に上がる娘のこはるちゃん、そして私の4人で担当。最初こはるちゃんは戦力にはカウントしていませんでした。大人たちの作業を最初見ていたこはるちゃん、見たことのない機械と人間が繰り出す、めくるめくハーモニーへの多大な興味から「私もやるー!」と言い出しました。ホント、子どもって好奇心旺盛ですね。
作業の工程自体はシンプルだし、割と短時間で終わるんじゃないかって思ってたので、こはるちゃんにも作業してもらうことに。

ところが・・・上述のような諸々の事情により、やって見たら意外や意外、時間が掛かることが判明。イソップさんも「これでは今日中にある程度まで終わらせないと、マズい!」と危機感を募らせ、次第に本気モードに。
すると、それまで単純に興味本位で作業の生産性や品質には無頓着(なように見えた)こはるちゃんの目の色が変わってきました。作業の手順もちゃんと理解しており、次に何をすればいいか、自分は今何をしているのかってことも把握していました。どうやら大人たちだけに任せていると、この作業は終わらなそうだっていう危機感を感じとったようなのです(苦笑)。
結果として、4人4様の貢献を果たし、作業は無事想定の時間内で終了!

作業の成果

今回作業を通じて私が感じたこと。それは、確かに作業工程を把握している大人がやった方が早いし、経験者がやったらもっと早く正確に終わった作業だったのかもしれませんが、「大人/子ども、経験者/未経験者という区別なく、みんなで一つの目標に向かって一緒に手分けしてやること」の意義と価値が、意外に大きいんだなということ。これは農作業だけに留まらず、日々の暮らしや仕事においても言えるのかも、と思い至りました。

5.続けることの重要性~今年の教訓を来年に繋げるためには?

今回初めての作業を見よう見まねでやっていて気づいたのですが、この作業って今回限りで、次回は来年の同じ頃。ということは、きっと来年になったら忘れてるだろーなーと(苦笑)。今回と同じメンバーで来年もやればすぐ思い出すかもしれないですけど、来年はまた別のメンバーが集まることになるかもしれないし。そうなると、また一から農家さんに教わって、見よう見まねでやって、あー大変だったねーってことになるわけで。
ちなみに前回・今回のような田植え前の各工程のノウハウってどこかにまとまってたりするのかなーと思い、ネットで検索してみたら、当然ながらありました!
体系化されてよくまとまってるなーと思ったのは農機具メーカー大手のクボタのこのサイト。

ちなみにこのサイトを読んでみると、育苗箱への床土(今回でいう育苗土)入れの作業は、「家族総出」と書かれていました(笑)。そうだよな〜・・・結構人手掛かったもんな〜。

核家族化・高齢化が止まらない今、田んぼ仕事はやっぱり「仲間」で「複業」で営むことが、一つの答えだよな〜と再認識した一日でした!

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