複業と本業のあいだ
先週ようやくハゼ掛けした稲の農業複業化プロジェクトのメンバー+ゲストで脱穀を終え、ライスセンターに籾摺りに持ち込み、今年のお米の「生産」部分は終わりを迎えました。今後は早速来年に向けた土づくりが待っていますが、その前にプロジェクトと自分も佐久で農に触れる生活を始めてからも2年が過ぎようとしている今、モヤモヤしていることを書き綴ってみます。その名も「複業と本業のあいだ」です。
1.稼ぎとウェルビーイング
私が考える農における複業と本業の位置づけを、稼ぎとウェルビーイング度合いで表現すると、こんな感じになるのかなと考えています。本業はやっぱり稼ぐことが主目的であり、稼ぎながらウェルビーイングをどう実現するのかが命題になるのではないでしょうか。一方で複業とは、本業ではないので、稼ぎが主目的ではない。じゃあ何を目指すのかというと、複業活動を通じて、生きるチカラをつけ、あわよくば活動の成果がいくばくかの収入を生み出し、結果としてウェルビーイング度が高まるんじゃないかと。場合によっては収入を生み出せなくても、ウェルビーイングな状態でいられるのかもしれません(今の私はそんな状態です)。
2.生産者と消費者の懸け橋
別の視点で見ると、「農業複業化」は、生産者と消費者の新たな「懸け橋」になるのではないかと考えています。
戦後の高度経済成長期以前、日本全国どこにでもあった村落共同体では、生産者と消費者はほぼ重なっていたのではないかと思いますが、工業化・都市化・情報化により、生産者と消費者は分断されてしまいました。
農業複業化とは、この分断を、ゆるやかに解消するプラットフォームになるのではないかと考えています。
理屈、いわゆる記号・情報消費ではなく、「農」を実際に自分の身体で体感することで、食を知り、生きるチカラをつける。消費者が生産者の力をお借りしタッグを組んで、独りよがりでなく、地域に根差し、責任を持って農作物を育て、結果的に景観も維持できるという営みに加われることが、本業ではない「農業複業化」の意義ではないでしょうか。
3.複業は本業の氷山の一角
一方で、農業における本業と複業の間には大きな隔たりがあることも事実です。下記の図は、昨年の農業複業化プロジェクトにおいて、複業メンバーが担った役割と、水面下で本業(イソップさんをはじめとする地域に根差した方々)が担っていた役割を簡略化したものです。
そこで今年はもう少し複業化プロジェクトとしてもコミットしよう!ということで、水面下の一部の役割も担うことになりました。
それでもまだまだ本業とのギャップはあります。これを来年以降どうしていくかについては、今後メンバーと話し合いたい論点のひとつです。
来年以降の農業複業化プロジェクトを起点とする展望について、私は、複業と本業のあいだを、更にオーバーラップさせられないか?と考えています。それによって、佐久内山・平賀地区の休耕地を中心に、地域内外の人が集う場にできないだろうか?と妄想しています。
イメージとしては、日本の農村地域に従来から存在していた「結」をリデザインし、新しい「YUI」をつくれないか?と考えています。
現在我々は「農業複業化プロジェクト」を通じて「生産」に特化した活動のみを行っていますが、このプロジェクトをもう少し広い視野でとらえると、様々な可能性が見えてきます。
生産したものを加工したり、農産物・加工品を必要としている人・場に届けたり、食事を作って提供したり、みんなで食べる(味わう)場を設けたり・・・
「それってよくある農業の六次化じゃないの?」って言われればそれまでですが、「本業として六次化して高く売る」じゃなくて、「複業化」でより多様な営み、コミュニティ(コモンズ)をつくれないか?というのが私の妄想です。