結局は報われてほしいということ

オリンピックが終わった。20年前に女子バレーファンになってからずっと追い続けて、その流れで男子バレーも追い続けてきた。男女ともに自力で切符を獲得してのオリンピックは恐らく2008年の北京以来だったと思う。もう16年も前になるのか。

女子は正直五輪行きの切符を獲得するのが難しいかもしれないと不安だった。東京五輪の2年ほど前から雲行きが怪しいと思っていて、皮肉なことにその東京五輪本番でその予感が的中する形となった。最終戦の幕切れを見せつけられ、失礼も甚だしいが「もしかしたら女子バレーは終わったかもしれない」とすら思った。

でも、翌年からチームは主将の古賀選手のもとで生まれ変わった。東京代々木で行われた2023年のOQTでは、最終2戦の土日に観客が超満員となった。1点が入る度に大歓声が上がり、自分の前に座っていた小さな子供を連れた家族は終始大はしゃぎだった。その光景を目の当たりにして「女子バレーは終わってなんかいなかった」と心底感じた。以前の自分を大いに恥じるとともに、女子バレーを終わらせないために戦った選手達に本当にありがとうという気持ちでいっぱいだった。


男子バレーには2014年あたりから、「ひょっとしたら女子よりも面白くなるかも知れない」と思わせられていた。柳田、山内、髙橋(健太郎)、石川各選手の台頭(所謂NEXT4)と盛り上がりに、それまでとは違った熱量を自分の中に感じたから。2018年には当時まだ背番号32だった西田選手がVNLで大活躍し、東京五輪に向けて、まるで漫画のようにピースが揃っていく様にワクワクした。

そこからずっとワクワクさせてもらった。東京五輪で当時大学生だった大塚選手&髙橋藍選手(所謂たつらん)の選出。アンダーカテゴリでは西田選手よりも先に台頭していた宮浦選手のシニア代表返り咲き。おそらく2人のうち1人しか立つことのできないオリンピックの舞台のために切磋琢磨するリベロズの2人。セットの終盤リリーフサーバーとして強烈なサーブを叩き込む強心臓の大学生甲斐選手。漫画の主人公のような人材がどんどん代表に加わってくる。そしてその布陣を自在に操る関田選手と、自分と同年代で誰よりもチームを鼓舞する深津選手のセッター二人。ついに2023年にVNL銅メダル、そして今年同大会銀メダル。オリンピックでのメダル獲得が現実味を帯びている。このチームを追い続けられる時代に生まれた以上に、幸運なことが他にあるか?とすら思った。


パリ五輪の男子バレー準々決勝イタリア戦、マッチポイントを握っていながら第3セットを落とした瞬間、「この後どんな結果になっても受け入れる」と、ただの一ファンだが肚を括った。それが、少なからず男子バレーを追い続けてきた、追い続けさせてもらった者の義務であるという勘違いも甚だしい謎の使命感のもとだった。


最終セット、日本のコートにボールが静かに落ちて試合が終わった。涙し打ちひしがれる選手達から目を離せないまま、ソファーの上から動けなかった。ああ終わったんだ。凄い試合だった。皆泣いている。石川主将も泣いている。解説の福澤さんも泣いている。この数年間を全部ぶつけたんだ。それがめちゃくちゃ伝わった。自分が見てきた今までの試合やそれまでの過程以上の全てをぶつけたんだ。でも終わってしまった。本当に終わってしまった。あと1点。悔しいな。惜しかったな。苦しいな。何にもしてない自分がこんなんなんだから、彼らのしんどさなんてこの何十倍何百倍なんだ。中垣内監督からブラン監督にバトンが託され、チームが歩んできたこの数年の記憶の数々が脳内をリフレインして、でも現実が目の前に広がっていて、中継が終わってもそのまましばらく動けなかった。


これほどまでに、終わったと同時に言わば虚無感すら感じてしまうまでに、自分がバレーボール日本代表を追い続けるのは何故だろうか。応援している人達に勝って欲しいから?勝つと自分も嬉しいから?バレーボールが面白いから?このチームが好きだから?どれも正解なのにどれも少し違う。何が違うのか。

準々決勝が終わってわかった。自分はただただ彼らに報われて欲しいんだ。こんなに頑張ってきたのに。全てを犠牲にしてきたのに。こんなに彼らは素晴らしいのに。だから彼らに報われてほしい。ファンに夢を見せ続けてくれている彼らに、どうか報われてほしかった。彼ら自身の夢を叶えるという形で報われて欲しかった。だからずっと応援してこられた。だからこれからも追い続けていくんだ。

これから自分はどういう風に彼らを応援できるだろうか。結局は、肯定的な言葉と応援で支えることぐらいしかできない。というか、そうすることで支えているはず、と思うことしかできない。そう改めて気づいた次の瞬間には、準々決勝で日本チームとして最後のサーブを放った小野寺選手にXで応援のDMを送っていた。これまでそんなこと一度もしたことがないのに。こんなことが力になるかは分からないけれども。それほどまでに自分は彼らにのめり込ませてもらっていたんだな。それはとてもありがたいことだなと、改めて思った。


この数年間、バレーボール日本代表を追い続けられてとても幸運で幸福だった。主将の石川選手は「またここから強くなります」と発信し、もう次に進んでいる。ならまたついて行くだけだ。彼らに報われて欲しいから、また応援していくだけだ。どんな形であれ報われる姿がいつか見てみたい。それが今思っている形ではなくても、報われた瞬間確実に自分も幸福であるという、根拠も何もない確信がもう既にあってしまっている。だからこれからも、無力を自覚しながらも勝手に応援していきたい。



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