新宿伊勢丹の上等な洋食、上等な弁当
上等でおいしい洋食を食べたくて伊勢丹の食堂街の「西櫻亭」。
ちょっと遠出ができるのならば、上野あたりに出かけていって「さくらい」だとか「遠山」だとかを堪能したい。
でもまだまだ気持ちが億劫で、銀座から先になかなか足が向かない。
ならば伊勢丹、櫻花亭。
もともと上等な下町洋食の老舗「香味屋」があった場所です。
その当時のレシピやメニューを引き継いで時代を超えた、クラシックにして華やかな洋食文化の粋を堪能できる店。
食堂街の中でもウェイティングがあまりできないのんびりとした店でもあって、のどかな空気が気持ちいい。通路に面したひときわ明るいテーブルがオキニイリにて今日もそこ。
桜色のテーブルクロスにお冷のグラス。分厚いおしぼり、ウスターソースに練り芥子。食事の準備が整っていく。
まずはビシソワーズがやってくる。
じゃがいもの冷たいスープ。ボクが生まれてはじめてビシソワーズを食べたのは赤坂にあったトップスでのこと。
ビックリしました。当時はスープが冷たいということ自体がまだ珍しく、しかも原料がじゃがいも。確かにどこか土臭く、けれどそれが嫌かというと滋養や素朴さを感じさせなのになめらか。時折ザラッと繊維を感じることがあり、それがクリーミーなスープを一層なめらかにした。
ここのはコンソメのジュレをそえて一緒に味わう。スプーンにジュレがのせられて自分でそれをビシソワーズに沈めて味わうって趣向もおしゃれ。上等です。
お店の自慢の料理をほとんど全部、味わうことができるお弁当がオキニイリ。
ただ、3週間ほど前に来たときにはお休みだった。
今日はどうかとメニューをみたら、めでたく復活してました。
それでそれ。
二段重ねの弁当箱に料理がぎっしり詰まって到着。
まず一段目にはご飯に揚げ物、野菜サラダ。
上の段にはタンシチューにローストビーフ。それからグラタン。
ひとつひとつの量は多くはないけれど、どれもが丁寧に作られた丁寧な仕上がりなのが目にみてとれる。
特にタンシチューのデミグラスソースの味わい豊かで濃厚なこと。軽い酸味と焦げた脂のカラメルみたいな香りと渋み。牛タン独特の強い繊維がザクッと歯切れ、クチャっと潰れてタン独特の旨味がジュワリと染み出していく。練り芥子をちょこんとのっけて食べると芥子の香りと辛味がソースの酸味を甘くしてくれる。
グラタンの中には小さなエビとイカ。マイクロサイズのマカロニにベシャメルソースぽってりと、上にたっぷりほどこしたパルミジャーノが焦げてカリッと香ばしい。
細かなパン粉をさっくりまとった揚げ物はエビにカニクリームコロッケ、それからメンチ。エビはムッチリ、歯ごたえがよくて甘い。カニクリームコロッケはパン粉がサクサク散らかって中のクリームのとろけるなめらかさを引き立てる。
小さなラグビーボール状に整えられたメンチカツは肉汁たっぷり蓄えて噛むとジュワッと口が潤う。断面にできたいくつかの穴は肉汁がほとばしり出た証拠の空洞。タンシチューのソースと一緒に食べるとまさに香味屋な味わい。多彩な野菜を使ったサラダも状態見事でウットリしました。おゴチソウ。