今ならではのおもてなし…。
新宿駅の新南口。改札くぐってすぐのところに「利久」がある。
仙台牛たんの専門店。
カウンターに8席足らず。テーブル席が二つだけというこれほど小さな利久は他にないんじゃないかなぁ…。しかも案外のんびりしていて、近所に別の店があるけどゆっくりしたいときにはこちらを選ぶ。朝早くからやっているのもありがたいとこ。
ちなみに構内なので入場券を買うことになる。180円のテーブルチャージのような感じにニッコリ笑う。
小さな厨房ではあるけれど、ほぼ牛たんという超専門店。これで十分ということでしょう。牛たんの中でもとびきりの部分を分厚く切って焼く「極み」定食。3枚6切れを選んでたのむ。5分ちょっとで到着です。
分厚い牛たんがずらりに並んだメインのお皿。
テールスープにたんの佃煮。
麦飯がつきひと揃え。追加でとろろを注文し、お腹を満たす準備が整う。
こういう時代なんだなぁ…、としみじみ思うことがふたつ。
ひとつはお盆は配膳用で必ず器を直接食卓に置くということにこだわっていた。
にもかかわらずお膳のまま料理を置いて帰るようになったこと。素早い提供がよいサービス…、という解釈がなんだか切ない。
もうひとつは一味や醤油が小分けのポーションパックに入っていること。感染リスクを嫌う対応。コストは上がる、品位は下がる。でもしょうがない。
分厚い牛たんを焼いて2切れに切り分ける。
だから断面ロゼ色でツヤツヤなんともみずみずしい。
店によってはあらかじめ切った牛たんを6切れ焼いて出す店がある。
一枚という単位にこだわらなければ仕入れの基準も下がるし管理、調理も簡単になる。
でもこの断面の美しさは手に入れることができなくなっちゃう。ありがたいな…、と思って食べる。
ザクッと歯切れる。
脂が口をひんやり潤す。
そしておびただしい量の肉汁がしみだしてきて、噛めば噛むほどにねっとりとろけてウットリします。
一味をお皿にパラッと振り出す。牛たんの断面が真っ赤になるほどまとわせ食べるも、脂の力で辛味があまみに変わっていくのがおもしろい。
白菜の浅漬けがまるでサラダのようにふるまって、テイルスープにゴロゴロ入ったテイルの肉は歯がいらないほどにやわらかで、はらりと繊維がほぐれてとろける。
とろろに醤油を注いで混ぜる。それをトロンとご飯にかけてザブンと食べる。滋養溢れるおゴチソウ。力みなぎる熱々スープに滋養に満ちた山芋とろろ。この両方だけでも戦う滋養とエネルギが得られるような感じさえする。
麦飯を一口分だけ残したところにスープをかけて、南蛮味噌をちょこんとのっけサラサラ食べる。ご飯の粒がテイルの脂をまとってスルスル、口のすみずみを転がり回る。満たされる。