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この上なき秋のご馳走…、松茸そば

秋の気配を感じると思い出すのが「松茸そば」。
東京でも数軒しか扱う店はなくって、中でもオキニイリは浅草の「尾張屋」のもの。

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中秋の名月の頃にははじまるはずで、それでどうかとやってきてみる。
お店の前のショーケースに、今年も「松茸そば」のサンプルを見てウキウキしながらお店に入る。

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本当に単純な料理です。熱々のかけそばの上に薄切りにして出汁で軽く煮た松茸をのせただけ。
器は分厚い蓋つきで、蓋をとった瞬間にフワッと松茸の香りを鼻をくすぐってもうそれだけでしあわせになる。

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甘めのつゆです。
松茸に自然に味がのってサクサク、繊維が切れる。熱が入ると若干ねっとり表面がして、軽い渋みが出汁の旨味のコクになる。
蕎麦はスルンとなめらかで、そのなめらかが松茸の繊維の歯切れを引き立てる。出汁の酸味が口はすっきりし続けて飽きず松茸の風味を存分、たのしめる。

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修学旅行の生徒さんたちが次々、お店にやってくる。
学校の先生に浅草にいったらお江戸の蕎麦を食べてらっしゃい…、と言われたようで、これも大事な文化の学び。お勉強。
どこから来たのかお国言葉で推察しようとしたのだけれど、訛り少なくわからなかった。東京の街で緊張し標準語を使っているのか…、それともお国言葉をしゃべる若い人が減っているのか。多様なことは素晴らしいこと…、なんだけど。

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あっという間に器の中は汁だけになり、それをゴクリ、ごくりと飲んで余韻をたのしむ。刻んだネギはせっかくの香りを壊してしまいそうで使わず仕舞いで食事を終えた。

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初物を食べると長生きすると、昔の人は言うけれど季節のものには特別な力があるという以上に、季節を意識した生き方自体に長生きさせる何かがあるに違いない…、って思ったりする。
いつごろまで松茸そばはありますか?って聞いたら、これだけはお天道様と市場次第で明言できず、でも今年は例年よりも長く楽しめるかもしれませんね…、ってうれしい返事。機会をみつけて松茸丼を食べに来なくちゃ…、にんまりとする。雨が降る。


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