ロマンス通りでオムライス
ひさしぶりの池袋。頻繁ではないけれど気分転換に二人でたまに来ていた街。
水族館が好きなタナカくんは、中でもサンシャイン水族館が大好きで空飛ぶペンギンやアシカのショーをうれしそうに眺めてた。
外界に降りて街をブラブラするのも好きで、新宿や渋谷、銀座と違った垢抜けしてない泥臭さが地方の街のような感じで落ち着くんだ…、なんて言ってた。
オキニイリの飲食店も何軒かあって、中でも好きだったのが「キッチンチェック」という洋食店。
「ロマンス通り」に面してある。
今となってはどこにもロマンスの要素を感じることができない猥雑な通りなのだけど、かつて映画館を中心として喫茶店やレストランが立ち並ぶデートするのにぴったりな場所だった。このロマンス通りにロマンスを引き寄せる引力の役割を果たしていたのが「ロサ会館」。今でも池袋を代表するレジャービルで、その一階。
レンガの壁にコックさんの絵が描かれた大きな看板。料理サンプルが並んだガラスのショーケース。
いかにも洋食屋さんという風情を写真におさめていたらお店の人が出てきてコックさんの看板をパカッと開く。そしたら中に冷蔵庫!都心ならではの苦肉の工夫。オモシロイ。
たいていいつもオムライス。今日はコーンポタージュも前菜代わりに注文し、味わいながら厨房の中をのんびり眺める。
フライパンにご飯や具材。ケチャップぽてり、あんなものやこんなものを目分量でパパっとほどこしフライパンをあおるとケチャップライスが宙を舞う。すべてのことが目と手と腰で決まっていくのがたのしくてワクワクしながらお腹を空かす。
ケチャップが焼ける匂いは甘くておいしい。
それに続いて卵がやけていく音がして、ボクのオムライスが出来上がる。
薄焼き卵でケチャップライスを包み込んで仕上げるオムライス。
卵はところどころが焦げて仕上がっている。
卵をあわだてふっくらさせたのでなく…。
半熟のオムレツみたいなトロトロでもないパリッと焼けた卵焼き、…というのが今では珍しい。
そういえば、タナカくんが作るオムライスがこんな感じだったよなぁ…、あぁ、なつかしい。
野菜サラダに大きなパセリ。ポテトサラダが同じお皿に肩寄せあって盛り付けられててサービス精神旺盛なさま。洋食屋さんの料理はこうでなくちゃ…、ってニッコリします。
ケチャップライスはふっくら空気を含んでパラっとちらかる。ピーマンの香りが特徴的。
マッシュルームが入ってて、きのこが苦手なタナカくんは器用にお皿の端に並べて食べ残していたっけな。もしボクがお金持ちになったらマッシュルームを使わない洋食屋さんを経営してやる…、って笑ってた。
オムライスには味噌汁がつく。出汁のしっかりきいたおいしい味噌汁でスープは前菜、味噌汁はご飯のお供といつもたいていスープもたのんで食べていた。
それにしてもここのポテトサラダはポッテリゆるめでみずみずしくてきゅうりがシャキシャキ、食感もいい。ポテトサラダが手作りでおいしい店って手間を惜しまぬ正直な店。堪能しました、オキニイリ。