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いばらぬ値段のほどよきゴチソウ

曙橋の「とんかつ山さき」。

上野御徒町の「山家」という人気のとんかつ専門店の姉妹店で、安くて旨いというので人気。
白い暖簾に「とんかつ」の文字。引き戸の入り口。テイクアウトコーナーの窓も木枠で、老舗の風格を感じるよき店。

開業してそろそろ10年。町の景色にすっかりなじんだ。
目立たぬ路地にあるけれどにぎわっている。
特にテイクアウトのお客さまがひっきりなしにやってきて買って帰る様子がにぎやか。

タナカくんがバイクでヒョヒョッとひとっ走りでお弁当を買いに来てくれてた。揚げたてでなくてもおいしいカツを重宝してた。
揚げたてでおいしいとんかつは当たり前。
とびきりおいしいとんかつ屋さんがうちの近所にもあるけれど、予約せずともふらっとこれて、手軽な値段でほどよくおいしいこういう店はありがたい。


10人ほどが座れるL字のカウンター。テーブル席が12席。こじんまりした規模も雰囲気も昔からあるとんかつの店って感じにホッと安心できる。
カウンターの中が厨房。パン粉付けからキャベツの千切り、揚げに盛り付けとすべての調理工程が丸見えだから、働く人は気が抜けず、食べ手にとってはワクワクしながら料理を待てる。
調理スタッフが2名、サービススタッフがひとりでテーブル席とテイクアウトの売り場を切り盛り。仕事の様子はキビキビしていて、けれど決して騒々しくない。
メニューはキリッと引き締まってて定食7種、一品料理をあわせても20商品。無駄がない分、値段を安くできるのでしょう。

必ずたのむ一品料理が「わさび昆布」。

わさび風味の昆布の佃煮。
これでビールを飲むもよし、ご飯のお供にもぴったりで盛りたっぷりのご飯もたのしく味わえる。
テーブルの上に置かれた調味料はソースだけ。
サラダ用のドレッシングや「塩でカツを…」なんて提案もなし。
潔い。

オキニイリのミックス定食。

アジフライにエビフライ、串カツがつきひと揃え。
ご飯に漬物、しじみ汁。山のような千切りキャベツにお皿の縁には芥子がべっとり。

おいしい景色にウットリします。
豚のヒレの端材に玉ねぎ。串刺しにしてこんがり揚がった串カツを串から外してソースをかけて、まず玉ねぎからパクっとひと口。

スベスベキュッキュと甘い玉ねぎが壊れて衣と混ざり合う。ヒレはやわらか、ジューシーで噛むとハラリと繊維がほどけるおゴチソウ。
エビフライはむっちり。尻尾がキレイで色鮮やかで新鮮だったのでしょう…、香りも味も甘くておいしい。

なによりビックリするのがアジフライ。分厚く味が濃くてふっくら。ソースじゃなくて醤油をかけると魚の匂いがさっぱりするのが好きで醤油をおねだりしました。

汁の中にはしじみがたっぷり。白菜の漬物は塩味きっぱり。どれもがご飯のお供にピッタリ。
最近ちょっと値上げしたけど、わさび昆布をつけてもたったの1000円ちょっと。
威張らぬ店に威張らぬ人たち。威張らぬ料理に威張らぬ値段。悪くないな…、としみじみ思う。オキニイリ。


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