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土鍋で煮込んだフカヒレのおいしいことには涙がでちゃう…。

三回忌を偲ぶゴチソウをなににしようかとあれやこれやと考えた。

タナカくんが一番好きだったものと言えば上海蟹にとどめをさすに違いない。
一番好きだったお店はゴキゲンなご夫妻がやってらっしゃる六本木のイタリアンレストラン。
どちらもあまりにタナカくんの思い出と密接に結びついててまだ食べたり行ったりできない状態。次の冬には上海蟹を、次の命日にはイタリア料理をと誓って今日はフカヒレ食べる。
維新號のフカヒレの土鍋煮込みが大の好物。
なにか目出度いことがあると行ってた。贔屓は新宿の店だったけどそこは閉店。代わりに銀座の店にくる。

時間のかかる料理です。のんびり待とうと、まずは前菜。20種類ほどの料理の中から好きなものを三種選べるというので、蒸し鶏、クラゲに酢漬けの白菜を選んでたのむ。ここで前菜をたのむときには大抵この組み合わせ。特に蒸し鶏に添えられているネギの油和えが大好物で、何がなくてもこれさえあれば飲めるんだよね…、って紹興酒のオンザロックをぐびぐび飲んでた。

お昼に飲むことも多かった。
さすがにちょっと気がひけて「大人の麦茶」だと思い込むことにしていたんですネ。
「あれ、この麦茶ってお酒の味がなんだかするよ…、不思議だネ」ってとぼけて言って笑ったりした。
なつかしい。

そしてメインのフカヒレが来る。
下皿を従えた蓋付きの土鍋。蓋を開けると大きなフカヒレの姿が一枚。粘り気をもったソースがプクンプクンと沸騰している様が、湯気の向こうに見てとれる。

飴色の太い繊維がくっつきあって三日月の形をなした分厚く大きなフカヒレも、膨らむ泡にあわせてぷくぷく揺れる。ヒレの繊維はすべすべで、噛むとざっくり歯切れてぷるんと歯茎や奥歯を撫でる。

うま味たっぷりのソースに混じったゼラチン質がねっとりと唇や口のすみずみ潤し気持ちをとろかしていく。
ご飯をもらってヒレとソースをのっけて食べるのがオキニイリ。ヒレだけ食べるより口の中がニギヤカになり、ソースをまとったご飯の粒がコロコロ転がるように口のすみずみ撫でていくのがオモシロクっておいしくて。

黒酢を垂らすとソースのうま味にくっきりとした輪郭がつき、酸味が甘みをひきたてる。

ヒレを食べ終えソースもほとんど食べたところでご飯を入れてリゾットみたいにして食べる。フカヒレの土鍋煮込みはこれを食べるためにあるのかもね…、って贅沢この上ないこと嘯き器を舐めたようにキレイにしてた。今日は倣ってキレイに食べた。

おいしいなぁ…、おいしいねぇ…、って言い合って互いの笑顔を見ながら食べるフカヒレはシアワセに満ちたゴチソウだった。サービスのタピオカミルクもなつかしい。


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