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嘘をつかないあやまり方

たっぷり歩いて西新宿のポールバセットで朝食をとる。

とても特別なお店です。
高品質なコーヒーとケーキとジェラート、そして軽食。今となってはちょっとしたおしゃれな街には必ずあるようなお店だけれど、その先駆けであったというのがまずは特別。
渋谷にもお店がある。かつては銀座にもあったけれどそのどちらにもないのびのびとした豊かな空間が特別で、その空間をイタリア料理のサルバトーレと共有しているとこも特別。
朝早くから営業していて、さすがに満席とはいかないけれどランチの仕込みをするサルバトーレのにぎわいが伝わってきてさみしくないのがとても特別。いいお店。
今日のお店は比較的にぎやかで5組ほどのお客さま。スモークサーモンのオープンサンドイッチをたのんだら、「少々、お時間をちょうだい致しますが…」と告げられる。のんびり待ちますよ…、って伝えてフラットホワイトをお供にもらう。

細かくひいたコーヒー豆をポッドにグイグイ押し込みながら何度も何度もカウンターにタンタン叩きつけ、ギッシリ詰め込みカチャッとエスプレッソマシンに装着。グーンッとモーターが唸る音と一緒にエスプレッソが抽出される。
プシュープシューと蒸気であたため泡立てられたミルクを注いでできあがる。ミルクをお客さまの目の前で注いでいくのがここのスタイル。エスプレッソに白いミルクが模様を描くさまを見ながら、喉がゴクリと鳴ってニッコリ。レモンの香りのお水と一緒にオキニイリのテーブルにつく。天窓から差し込む光が気持ちをほんわかあったかにする。

ぼんやり待ちます。他のお客さまが待ってた料理が次々届き、そろそろボクの番かなぁ…、と思うもなかなか出来上がらない。どうしたのかしらってちょっと心配になりはじめたところでお店の人がやってきて「申し訳ありません。作り忘れておりました。もうしばらくお待ちいただけますか」という。

嘘をつかない謝り方です。
しかも神妙な面持ちで、待ちますよ…、って答えを聞いてニッコリとする笑顔もきれい。
見事な謝り方がいいなと思って待って、料理が到着。

葉っぱ野菜にスモークサーモン。トマトにディルが彩り、香りを添えるサラダのように見え、葉っぱをどかすと下には焼いたクロワッサン。
ヤギのチーズの塊とパルミジャーノの粉の香りが食欲誘う。
サラダを半分ほども食べたところで、開かれていたクロワッサンで残りを挟んでサンドイッチのようにする。

そして手づかみ。
手に直接伝わる温度や量感。ナイフフォークで食べる料理と違ったワクワク感があるのがサンドイッチのたのしいところ。クロワッサンがパラパラ散らかり具材と一緒になってとろける感じに没頭してたら、お店の人がやってきます。

「お待たせしちゃったのでお詫びにケーキをお持ちしました」って。
小さなお皿に乗せられたチーズケーキに熱いコーヒー。お皿の小ささが「サービス用」ってメッセージでしょう。ケーキだけじゃなくコーヒーもサービスするのがなんとも粋でありがたい。

不快な思いをさせてしまったお客さまを、それをきっかけにファンにしちゃおうってこういうサービス。放っておくとマイナスになってしまう失敗を帳消しにしてゼロにすることはむつかしい。どんなに頭を下げて言葉を尽くしてもマイナス感情は残ってしまう。
ゼロにするのじゃなくプラスにできればいいのですネ。嫌だった思い出をはるかに上まわるたのしい思い出を提供する。それが誠意のひとつの形。人間関係の基本でもある。勉強しました…、そしてますますファンになります、オキニイリ


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