あん肝に河豚。尻毛で食べる冬の美味
岐阜の「千杓(せんじゃく)」。
昔、「よしべい」と言う名前のときに来たことがある。
調べてみたら今から5年も前のこと。
尻毛と書いて「シッケ」と読む地名が記憶の片隅にあり、車を降りてお店を見たら昔の建物のままでなんだかなつかしい。
お店の外観はモダンな造り。けれど中は和風の設え。
座敷に座ってメニューをみるとおしゃれなソフトドリンクがたくさんあって、ミントソーダをたのんで乾杯。フレッシュミントをマドラーで潰しながら飲むのがなんともたのしい。
まずは前菜。
あん肝、春菊の胡麻よごし、クワイと銀杏の素揚げ。奥の小鉢にはフグの煮こごり。冬の美味。
フグの刺し身が続いてきます。
熟成のきいたフグはむっちり。お皿の柄がすけるほど薄くて、なのに歯ごたえ、味わいたくましく、ネギをくるんでポン酢でパクリ。口に広がるフグの旨味にウットリとなる。
ここの名物。炭焼き料理。
鰻の蒲焼き、鶏もも肉の焼き物、つくね。
この蒲焼きが本当においしい。
前回来たときも感心したのを思い出す。
地焼きでバリバリ。自分の脂で揚がったように焼き上がり、噛むとジュワッと脂がにじむ。
肉はねっとり。焦げたタレが香ばしくって体に力がみなぎる感じ。
そして揚げ物。フグの唐揚げ。
これまたウットリ。数ある唐揚げの中でも最高峰がフグの唐揚げに違いなく、骨の周りのゼラチン質。しっとりとした肉の味わい、そして油の香りとどれもが上等で指でつまんで前歯でしごき、指までなめてキレイに食べる。
そろそろ料理も終わりに向かう。
揚げた里芋にきのこのあんかけ。ひらたけ、しめじ、エノキタケとどれもフレッシュ、歯ざわりがよく特にひらたけの香りと旨味、とろみが味が整っている。
品数は決して多くはないけれど、ひとつひとつの料理が力強くてしかもしっかり整っている。味は上品、素材の持ち味をひきたてる控えめにしてキレイな味付け。
〆はそば。
手打ちで手切り。太いところや細いところが混じった仕上がり。鰹節の旨味と酸味に昆布の甘み、かえしの風味がどっしりとしたタレにくぐらせズルンを食べる。
わらび餅を食べて夜のお腹に蓋する。量もたっぷり、満ちました。