とんかつジーエスの「かつとカレー」
オキニイリのとんかつの店、「とんかつジーエス」にやってくる。
かつて新宿には個性的なとんかつ屋さんがたくさんあった。
パン粉ではなく細かく刻んだ食パン粉をまとわせ揚げた「三太」や、ラードでバリッと揚げる「三金」。どちらも不思議と「三」が名前につく店でも、今はなし。
日本最古のとんかつ店のひとつと言われる「王ろじ」が孤軍奮闘っていう感じ。
2年前にできた新参者ではあるけど、この「ジーエス」はオキニイリ。
新宿三丁目がまもなく2丁目に変わる手前のビルの地下。なのに空気がキレイで油の匂いがしないところもボクは好き。
開店直後にすっかりお店は整っていて、テーブルの上の調味料氷水の入ったピッチャーが整然と並ぶ様子にニッコリします。
「いらっしゃいませ」とメニューを手渡すスタッフの声も明るい。いい予感。
「カツとカレー」というのをいつも選んでたのむ。
カツカレーはカツがトッピングされたカレー。カレーが主役でカツが威張ったカツカレーは身のほど知らずで好きじゃない。
ここのはあくまで「カレーとカツ」。どちらも主役のダブル主演のような料理で、これは好き。
テーブルの上を見ながらたのしく待ちます。
系列店がいくつかあってどこに行っても「太陽ソース」があるのが目印。
陶器の壺が3つありひとつはソース、もうふたつにはキムチとガリが入ってる。
このガリがいい仕事をしてくれるんでづすよね。
油や脂で疲れた舌を酸味や辛みがスッキリさせる。ガリガリとした歯触りもよく、カツをおいしくしてくれる。いい発見。
10分ほどで「カツとカレー」がやってくる。
写真を撮りながらどこか違和感。トレーの上がちょっとさみしい。チョップスイっていう野菜スープがつかなくなった。
ここのカレーはスープのような仕上がりだからスープはなくてもいいのだろうけど、おいしかったからちょっとさみしい。しょうがない。
かつとカレーの「と」はご飯。
お皿の右側には千切りキャベツと上にとんかつ。「とんかつの国」。
左側はカレー王国。
両国の国境にあたるエリアにご飯がおかれてふたつを仕切る。
ご飯の上にはカレー風味の茹でたじゃがいも、きゅうりと玉ねぎのピクルスが彩りそえている。
とんかつの衣は薄色。パン粉が立ち上がるように揚がってる。カツの断面をみてみるとうっすら汗をかくように濡れている。
キレイな肉汁。ソースをつけずまずはそのまま。さっくり歯切れてジュワッと肉汁。塩と胡椒で味はととのい、脂がクチャっと潰れて甘味と香りが口に広がるオゴチソウ。
スリランカカレーと謳うカレーはちょっとザラザラした舌触り。すりつぶされた具材の食感が不思議とおいしく、ほどよく酸っぱく辛くて渋い。体の奥底に滋養が染み込む…、そんな味わい。これも好き。
とんかつソースも用意されているのだけれど、甘みが強くてカレーの味を邪魔するような感じがする。
それに太陽ソースのスッキリとした酸味が好きで、太陽ソースをロースカツの半分にチョコッと注いで風味をつける。残りはそのまま。カツのおいしさを思う存分たのしみ食べる。
キムチをカレーに入れてみた。
これが不思議とよくあって、酸味や辛みが際立ってくる。カレーにヨーグルトがよく合うように、同じ発酵食品のキムチがあっても当然なんだね…、って思ったりした。オモシロイ。
カツを食べてはカレーを食べて、カレーでほてった舌をカツの脂の甘みでなだめる。あっという間にお皿は空っぽ。「カツとカレー」でお腹が満ちる。なんてシアワセ…、オキニイリ。