見出し画像

サンドイッチをたのしく悩む

サンドイッチ。
パンで何かを挟めばできるシンプルな料理で、シンプルだからこそ作り方とか工夫でまるで違った料理になりもする。

はまの屋パーラーってサンドイッチがおいしい喫茶店がある。
丸の内の三菱地所の古いビルの地下一階。
パーラーらしくフルーツサンドイッチがあったりして、サンドゥイッチとメニューに表記しているところが昭和っぽくってオキニイリ。

来始めた頃からずっとハムサンドとたまごサンドがここの定番。
他のサンドイッチに浮気することなんてなかった。
しかもパンはどちらもトースト。
サンドイッチはカサカサとしたパンの歯ざわりと具材の食感のコントラストを味わう料理なんだから…、とずっとかたくなになっていた。
ところが一年ほど前でしたか。
ちょっと魔が差し、焼かないパンでいつものサンドイッチを作ってもらったらどうなるだろうと思って試した。
ハムサンドはかなりとぼけた味でした。ハムのムッチリした食感とかレタスのシャキシャキした騒々しさが生のパンでは際立たない。パンが主張しすぎるのです。
なるほどパンをトーストするとは、パンから余分な水分を吐き出させることでパンではない何モノかに变化させることなんだ。それによって口がパン以外の具材の存在を心おきなく味わえる…、そういう工夫と合点した。
ところがたまごサンドに関しては、焼かないパンのそれはおいしい。ふっかりとしたパンの食感が、ふっかりとした卵焼きと一体となり、口中ふっかりしてくるコトをそのとき発見。
特にこの店の痩せた仕上がりの食パンと、ほどよくみずみずしく仕上げた卵焼きとの相性が格別よいのでもありましょう。
これからパンを焼くか焼かぬかをずっと悩むことになるんだ…、とその発見を呪わしくさえ思った。

…、のに。

なんとパンの焼く、焼かないを一種類づつ選べますよと教えてもらった。
それからずっと、ハムはトースト、卵はそのままと注文するのが常となり、これでこの先、ボクはこの店にきて何事も悩むことなく自分の好きをたのしめると思ったものです。

それもつかの間。
再びちょっと気が迷う。
ハムサンドとかたまごサンドは自分でよく作るサンドイッチ。しかも上手に作る自信があって、けれどいつ作っても思うようにできないサンドイッチがツナサンド。ここのツナサンドはどんな仕上がりなんだろう…、と試しにたのんだ。
お供はパンを焼かないたまごサンド。
ハムサンドを選ばなかったのはツナサンドはパンを焼いてもらいたくって、焼かないパンで作るのがおいしいたまごサンドを選んだという単純な理由から。

そしたらこのツナサンドイッチがおいしかった!
自分で作ると、ツナがベチャッと水っぽくって噛むとポタポタ垂れ落ちる。
ここのはツナが乾いてて、油をキッチリ搾り落として使うのでしょう。
マヨネーズはほんの少量。刻んだ玉ねぎと混ぜ合わせトーストブレッドで挟んでいるから食べた瞬間、乾いて感じる。
最初はもったり。ところが時折、粗微塵の玉ねぎが奥歯で潰れてそこだけしたたかみずみずしくする。シャキシャキとした食感と軽い辛味がよきアクセント。
こんがり焼けたパンの香ばしさが、ツナ独特の匂いをおいしい香りに変えてくれるところもおいしくて、食べてたちまち気に入った。
ふっかりとした焼かないパンのたまごサンドと相性もよく、多分、しばらくこの組み合わせを食べるはず。
もしかしたらばまた気が迷って新たな発見をすることがあるかもしれず、できれば一度何人かできてサンドイッチを片っ端から試してみたい。小さな野望でござります(笑)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?