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人がやってる店、会社でやってる店
水道橋の「Cafe Rijn」から朝をはじめることにする。
近所にオフィスがあって、そこをベースに仕事をしていたときにはよく来てた。
今はオフィスを整理して自宅を中心の仕事の仕方になっちゃったから一年以上のひさしぶり。
周りの環境も随分変わった。向かい側にあった出版社のビルが壊され更地になってたり、ここにしかない生業店がいくつかなくなり跡にチェーン店ができていたりと街の個性が薄れて感じるのがちょっとさみしい。
ここはその点、昔の通り。朝にお値打ちな朝食セットで営業してる。昼はパスタに夜はアコースティックな音とお酒でくつろげる。
のんびりとした空気となによりにこやかなお店の人のサービスが好き。「おひさしぶりです」って言い合って、にっこり笑ってハムサンドイッチの朝食セットにアイスコーヒー。
ずっとここでたのんでるシアワセな朝のオキニイリ。
レタスときゅうりを塩と植物油であえて寝かせた洋風おひたしみたいなサラダ。
みずみずしくてシャキシャキ歯ざわりたのしい一品。
ゆで卵が一個サイドに添えられている。
これをきれいに剥けるかどうか。
ゲン担ぎをするようにいつも剥くのだけれど、今日はスルンと大きくきれいに剥けて白身の表面すべすべ。今日一日がいい日になってくれそうな予感ににっこり。
厚めのイギリスパンを軽くトーストし、ハムときゅうりを挟んだサンドイッチが朝のメインです。サクッと前歯をくすぐるように歯切れるトースト。ちょっと甘めでそれに続いてカリッときゅうり、ムチュンとハムが歯切れてく。焦げた小麦の香りがおいしく、あっという間に目が覚める。
マヨネーズをたっぷりパンに塗り込めている。だから噛むとムニュンとマヨネーズがパンの間から飛び出してきて、それをペロリと舐めながらさっくりムチュンと次のひと口食べていく。
特別な食材を使っているわけじゃない。特別な作り方をしているわけでもなく、なのにおいしい。とびきりおいしいわけでもなくていつも普通においしくて、そのおいしさがこれを作ってくれた人、これをサービスしてくれた人の人柄がおいしくしてくれているんだろうなぁ…、って来るたびしみじみ思って食べる。
アイスコーヒーにミルクを落として今日はガムシロも注いで甘くしてゴクリ。朝の気持ちを甘やかす。
そういえば近所にシェントウジャンのお店があった。
「台湾式朝食健康豆漿」っていう店で大手チェーンの経営で、最近、着々とお店が増えてる。
台湾の朝食をテーマにした店は最近ブームになりはじめていて繁盛店が結構多い。ブームにのっかる形の展開。
ただこの店が繁盛しているかというと決してそうは見えぬ状況。
商品がまずいわけでなく、けれど人気が出ない理由のほとんどはお店のすべてが整然としすぎていてフードコートのワンコーナー。あるいはファストフードチェーンのお店のように見えてしまうことなんじゃないかとボクは思う。
そういうお店でどんなに一生懸命働いても、一生懸命が伝わりづらい。おいしい台湾料理に対する情熱をもってがんばってもその情熱が伝わらない。シェントウジャンで駄目だったらハンバーガーでもチョップドサラダでも業態転換はとっても簡単…、のようにも見えてくるのがなやましい。
豆乳はおいしいし台湾揚げパンの状態もいい。ラー油が含んだ台湾スパイスの香りもエキゾチックで特徴的で悪くないのになぁ…、と思って食べていたら、後ろの方から大きな声が聞こえてくる。
客席ホールの一番奥でパソコン仕事をしている人がいてその人の声。店内に響き渡る大声で、おそらく電話に先には会社の本部スタッフがいるのでしょう。本社サーバに接続する手順を問い合わせてた。
裕福な会社の店だから個室のオフィスがトイレの脇に用意されてる。なのに客席でそういうことをしてしまえる無神経。
「人が命がけでやってる店」は応援できる。
「会社がやってる店」を応援しようと思う気持ちはなかなかわかない。なるほどそういうことなんだなぁ…、って思ったりした。お勉強。